ラン(蘭)というと、お祝いの時に贈る胡蝶蘭(コチョウラン)が有名ですが、胡蝶蘭を含め、洋ランは様々な種類があり、花の形も色も多種多様です。もともと熱帯・高温多湿地帯を原産地としていて、お送り種類は木に着生する植物です。交配などの品種改良が多くおこなわれ、たくさんの種類がありますが、中でも有名なのは、胡蝶蘭(英名で Phalaenopsis(ファレノプシス))、カトレア、シンビジウム、デンドロビウム、パフィオペディルムで、蘭の主要五属と呼ばれています。
美しく咲く洋ラン、出来れば長く咲かせて枯れさせたくはないものです。洋ランを長持ちさせ、美しく保つには、どんなことに注意すれば良いのでしょうか?肥料を中心に、洋ランの管理方法について説明していきます。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
洋ランに使用する肥料は、植物を栽培するという点で、野菜や果樹などの栽培に使うものと基本的には同じで問題ありません。花だから特別な肥料を使うということはありません。プランターや植木鉢などの鉢植え栽培で使用できるものであれば問題なく使用することができます。
色々あって複雑ですが、最初は葉や茎活力を与えたいときは窒素(チッソ)多めの肥料を、花を咲かしたい、実の成長を促したいというときはリン酸多めの肥料を施すというイメージでやってみましょう。
花用の肥料は、綺麗な花を咲かせるためにリン酸が多いことが多いです。
花に使える肥料は、どんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
大きな植木鉢で用土を使う場合は、植え付け時や植え替え時に緩効性の化学肥料や臭いの少ない有機肥料を元肥として十分に施し、その後生育を見ながら液体もしくは固形の化成肥料を追肥として施していくと良いでしょう。
植物の種類によっては、肥料をそこまで必要としないものもありますので注意しましょう。
洋ランに対する肥料のやる時期と頻度
肥料を与える時期
洋ランでよくある失敗(特に胡蝶蘭)が、肥料のやり過ぎです。ついつい、元気に生長して欲しいと思い肥料をあげてしまうのですが、肥料のやり過ぎは肥料焼けを起こして、しおれて枯れる原因になってしまいます。
肥料を与える時期は、特に下記の2点に注意してください。
水はどれくらいの頻度で与えればいいの?
洋ランの設置場所・温度・湿度などによって大きく異なる為、一概にどれくらいとは言えませんが、目安としては、植え込み部分の表面が完全に乾いて水気が感じられなくなったら、たっぷり水をやって、必ず受け皿の水を捨てる、これを繰り返すことになります。
受け皿や鉢の中がずっとぬれている状態にすることは、根腐れの原因になるので、絶対に禁物です。洋ランはもともと台湾やフィリピン、インドネシアなど東南アジア等、熱帯・高温多湿地帯を原産地とした植物で、乾燥を嫌います。霧吹きなどをして湿度を保つこともポイントです。
胡蝶蘭の肥料について、記載した記事もありますので、胡蝶蘭の場合はこちらを是非読んでみてください。
洋ラン(蘭)の植え替えは必要?
水苔やバークに植えている場合、数年置いておくと、水苔が古く黒ずんだり、カビが生えたりして苗等にダメージを与える場合があります。元気な状態を維持していれば問題ないのですが、根と鉢の中の水苔やバークといった資材を見て、そのような現象が起きていて、元気がない場合は、植え替えを検討してみてください。目安としては2〜3年に一度、春に行うのが良いです。
植え替えを行う場合は、元気な根を傷つけないように水苔を取りながらほぐし、悪くなっている根の芯の部分を切り落とします。その後、残った根に新しい苔を巻きつけて新しい鉢に植え込む、バークの場合は鉢底にバークを敷いて鉢の中心に苗を入れ、周りにバークを入れてください。
洋ランの肥料 元肥に使いやすい肥料は?
上記の通り、鉢植え前などの元肥には緩効性肥料、遅効性肥料がおすすめです。この中でも初心者の方にも扱いやすい肥料をご紹介します。
マイガーデン植物全般用
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができます。
栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しており、植物が肥料を吸収しやすくする働きや、土壌の保水性、通気性を高めるなど、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしています。
また、肥料成分は樹脂コーディングし、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶けだす量が調節され、効き目が持続するリリースコントロールテクノロジーを採用しており、樹脂コーディングのため、肥料が直接根に触れても肥料やけしないのが特長です。元肥、追肥両方に使用可能です。こちらは粒状の製品ですが、液体タイプ(液肥)のマイガーデンもあります。
マイガーデンの肥料は他にも種類がありますよ!
ハイポネックス マグァンプK
ハイポネックスジャパンが販売する元肥用の定番の粒状肥料です。「チッソ・リンサン・カリ」植物の生育に必要な三要素は勿論、マグネシウムやアンモニウムなどの二次要素・微量要素もしっかりと配合されていて、元肥に申し分ありません。土にしっかり混ぜて、大粒で約2年、中粒で約1年、生長効果が持続します。マグァンプK 小粒は追肥に有効です。
肥料焼けも起こしにくく、元肥としてとても扱いやすい肥料です。また、春の緩効性の追肥としても土面に撒いて使用できます。観葉植物の元肥して使用する場合は、中粒がおすすめです。
また、追肥としては肥効が約2ヶ月続く、マグァンプK 小粒がおすすめです。
洋ランの肥料 追肥に使いやすい肥料は?
上記のように、追肥は元肥と異なり、速効性がある肥料がおすすめです。特に、花をきれいに咲かせるためには、リン酸の栄養素が重要です。下記で紹介する肥料は、リン酸がしっかりと配合されていて、とても扱いやすい洋ラン専用の肥料です。
洋ラン専用の液体肥料
ハイポネックスとメネデールから、洋ラン専用の液体肥料が販売されています。美しく大きな花を咲かせ、洋ランの開花に不可欠な株の充実に優れた効果があります。ハイポネックスシリーズには希釈せずにそのまま肥料を施すことができるキュートというシリーズもありますので、希釈などが面倒な人は是非試してみてください。
万能の液体肥料 ハイポネックス原液
ハイポネックスとは、園芸用肥料・園芸用品の輸入・販売などを行っている株式会社ハイポネックスジャパンが販売している肥料の総称です。ハイポネックスシリーズの肥料は様々な用途、植物に対応していて、それぞれに合った肥料を選んで使用することで、より強く立派な植物を育てることができます。口頭などで「ハイポネックス」と言われる場合には「ハイポネックス原液」という肥料を指していることが多いです。
胡蝶蘭のほかに野菜や花などの植物を育てているのであれば、万能肥料であるハイポネックス原液もおすすめです。
液体肥料の基本と使い方については、下の記事を参考にしてください。
合わせて使いたい活力剤(栄養剤)
植物の栄養剤として肥料の他に「活力剤」と呼ばれる製品があります。活力剤は、植物の活性を高める目的で使われ「窒素(チッソ)・リン酸(リンサン)・カリウム(加里)」の三要素以外の養分やアミノ酸、フルボ酸などの有機酸が含まれています。
活力剤は、単体で施用するのではなく、あくまで肥料にプラスして施用するものです。肥料はしっかりと適期に施しつつ、植物が弱ってきたり、より綺麗に花を咲かせたい、葉緑素(光合成に影響があります)を増やして葉を青くイキイキさせたいときに有効です。
種類としては液体やアンプルのものがあります。
リキダス
リキダスは、3種類の有効成分コリン、フルボ酸、アミノ酸を配合し、3つの相乗効果で植物本来が持っている力を引き出し、元気な植物を育てる活力液です。また、カルシウムをはじめ、不足しがちな各種ミネラル(鉄・銅・亜鉛・モリブデンなど)が、植物に活力を与え、美しい花を咲かせると共に、葉面散布液としても使用できるおすすめの活力液です。
土壌に挿してそのまま使えるアンプルタイプのものもあります。
植物活力素 メネデール
植物の生長に欠かせない鉄を、根から吸収されやすいイオンの形で含む植物活力素で、発根を促し、元気な植物に育てます。肥料でも農薬でもないので気軽に使用できます。
ハイポネックス 洋ランの活力アンプル
洋ランの生育に必要な活力成分をバランスよく配合したアンプル剤で、鉢土に挿すだけという扱いやすさも魅力の商品です。
植物別のおすすめ肥料
農家webには、植物別におすすめの肥料をまとめている記事がたくさんあります。
ガーデニング植物におすすめの肥料
観葉植物におすすめの肥料
多肉植物におすすめの肥料
サボテンにおすすめの肥料
バラにおすすめの肥料
バラ向けの肥料は数多くあります。しっかり根や茎を丈夫にしたい、花を美しく咲かせたい、等用途によって上手く使い分けたいですね。バラの肥料については、下記をご参考ください。
紫陽花(アジサイ)におすすめの肥料
紫陽花(アジサイ)は、樹高1~2mの落葉低木です。基本的には上記でおすすめした肥料であれば間違いはありません。しっかりと元肥を土中に施肥し、花が咲く開花期の6~7月に肥料を切らさないように、追肥を行ってください。
洋ランにおすすめの肥料
胡蝶蘭におすすめの肥料
胡蝶蘭は、特に肥料の与える時期は要注意で、「生育期」といわれる春から秋ごろ(気温でいうと15°C以上が目安)に与えるようにしてください。
沈丁花(ジンチョウゲ)におすすめの肥料
沈丁花(ジンチョウゲ)は3月前後に花を咲かす、日本古来から愛されている花で庭によく植えられます。特に肥料を与えなくても毎年花は咲かせることはできますが、花を咲かした後、また株が生長する9月、また冬の時期に、元肥に使う緩効性肥料を少量与えることで、花を毎年しっかりと咲かせることができます。
睡蓮(スイレン)におすすめの肥料
その他
その他にも植物ごとにおすすめの肥料を掲載した記事がありますので、検索欄に植物名を入れて検索してみてください。
検索欄は、「右のサイドバー」もしくは「サイドバーメニュー」にありますよ!