お祝いの時に贈る贈答品として不動の人気を誇る胡蝶蘭(コチョウラン)。もともと台湾やフィリピン、インドネシアなど東南アジアの熱帯・高温多湿地帯を原産地とした木に着生する植物で、英語でPhalaenopsis(ファレノプシス)と呼ばれます。大輪の大きなものから、ミディ胡蝶蘭などの小ぶりなものまで様々な大きさ、品種があります。
美しく咲く胡蝶蘭、出来れば長く咲かせて枯れさせたくはないものです。胡蝶蘭を長持ちさせ、美しく保つには、どんなことに注意すれば良いのでしょうか?肥料を中心に、胡蝶蘭の管理方法について説明していきます。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
花に使用する肥料は、植物を栽培するという点で、野菜や果樹などの栽培に使うものと基本的には同じで問題ありません。花だから特別な肥料を使うということはありません。プランターや植木鉢などの鉢植え栽培で使用できるものであれば問題なく使用することができます。
色々あって複雑ですが、最初は葉や茎活力を与えたいときは窒素(チッソ)多めの肥料を、花を咲かしたい、実の成長を促したいというときはリン酸多めの肥料を施すというイメージでやってみましょう。
花用の肥料は、綺麗な花を咲かせるためにリン酸が多いことが多いです。
肥料は、どんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
大きな植木鉢で用土を使う場合は、植え付け時や植え替え時に緩効性の化学肥料や臭いの少ない有機肥料を元肥として十分に施し、その後生育を見ながら液体もしくは固形の化成肥料を追肥として施していくと良いでしょう。
植物の種類によっては、肥料をそこまで必要としないものもありますので注意しましょう。
胡蝶蘭に肥料は必要?胡蝶蘭への肥料のやり方と時期、注意点
上記の通り、胡蝶蘭に限らず、植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウムの三大要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(多量要素)」、さらに鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ホウ素(B)をはじめとした「微量要素」が必要です。
しかし、胡蝶蘭は大変デリケートです。家庭菜園や花壇の植物、草花と違って、肥料のやる頻度や種類に注意が必要です。
肥料を与える時期
胡蝶蘭でよくある失敗が、肥料のやり過ぎです。ついつい元気に生長して欲しいと思い、肥料をあげてしまいがちですが、胡蝶蘭は特に肥料のやり過ぎに弱く、肥料やけを起こして、しおれて枯れる原因になってしまいます。
胡蝶蘭に肥料を与える時期は、特に下記の2点に注意してください。
贈り物・ギフトとして、またお家で楽しむために買われた胡蝶蘭は、出荷前に肥料が適切に施されていて栄養満点なので、1ヶ月は肥料をやる必要はありません。生育期における肥料の量、頻度は、根っこを確認しつつ、各商品の説明に従うようにしてください。
胡蝶蘭に適した肥料の種類
固形・粒状の緩効性・遅効性肥料と液体肥料を組み合わせることもできますが、基本的には、液体肥料のみ、追肥の使用で十分で、このほうが肥料の量をコントロールしやすく、肥料のやり過ぎを防ぐことができるのでおすすめです。
水はどれくらいの頻度で与えればいいの?
胡蝶蘭の設置場所・温度・湿度などによって大きく異なる為、一概にどれくらいとは言えませんが、目安としては、植え込み部分の表面が完全に乾いて水気が感じられなくなったら、たっぷり水をやって、必ず受け皿の水を捨てる、これを繰り返すことになります。
胡蝶蘭は根腐れを起こしやすいので、受け皿や鉢の中がずっとぬれている状態にすることは絶対に禁物です。
胡蝶蘭はもともと台湾やフィリピン、インドネシアなど東南アジアの熱帯・高温多湿地帯を原産地とした木に着生する植物です。乾燥を嫌うため霧吹きなどをして湿度を保つこともポイントです。また、贈り物としてもらった場合はラッピングやセロハンが付いていて、これをそのままにしておくと水が溜まって根腐れを起こす原因になるので、きちんと取ることをおすすめします。
その他気をつけるポイント
その他、胡蝶蘭を育てるときのポイントを簡単に説明します。
胡蝶蘭は枯れたら、もう一度咲かせることは出来るの?
品種によってまちまちですが、再度花を咲かせることはできます。まずは落ちたり萎れたり、枯れた花は随時取り除いてください。
胡蝶蘭の花茎は5〜6個の節があり、花芽になる可能性のある腋芽が存在しています。花が枯れてしまったら、枯れた場所から出来るだけ高い位置の節を残してハサミで花茎を切ってください。株が元気で20℃前後の温度を保てることができれば、2ヶ月ほど花芽し、順調にいけば数ヶ月で開花します。
また、植物は用土の栄養素を吸収しているため、土をそのまま使い続けると、害虫、病害虫が発生しやすく、病気になりやすくなります。もう一度咲かせたい場合は、できれば、新しいポットや素焼きの鉢に、新しい用土にしっかりと元肥を行い、元の鉢から胡蝶蘭の株を抜きとり、腐った根や水苔をきれいに取り除いて、新しい鉢に植え替えをしたほうが確実です。
胡蝶蘭におすすめの肥料
胡蝶蘭は、洋ラン専用の肥料を使うのが間違いありません。おすすめの液体肥料(液肥)で洋ラン用の肥料をご紹介します。
洋ラン専用の液体肥料
ハイポネックスとメネデールから、洋ラン専用の液体肥料が販売されています。美しく大きな花を咲かせ、洋ランの開花に不可欠な株の充実に優れた効果があります。ハイポネックスシリーズには希釈せずにそのまま肥料を施すことができるキュートというシリーズもありますので、希釈などが面倒な人は是非試してみてください。
万能の液体肥料 ハイポネックス原液
ハイポネックスとは、園芸用肥料・園芸用品の輸入・販売などを行っている株式会社ハイポネックスジャパンが販売している肥料の総称です。ハイポネックスシリーズの肥料は様々な用途、植物に対応していて、それぞれに合った肥料を選んで使用することで、より強く立派な植物を育てることができます。口頭などで「ハイポネックス」と言われる場合には「ハイポネックス原液」という肥料を指していることが多いです。
胡蝶蘭のほかに野菜や花などの植物を育てているのであれば、万能肥料であるハイポネックス原液もおすすめです。
液体肥料の基本と使い方については、下の記事を参考にしてください。
合わせて使いたい活力剤(栄養剤)
植物の栄養剤として肥料の他に「活力剤」と呼ばれる製品があります。活力剤は、植物の活性を高める目的で使われ「窒素(チッソ)・リン酸(リンサン)・カリウム(加里)」の三要素以外の養分やアミノ酸、フルボ酸などの有機酸が含まれています。
活力剤は、単体で施用するのではなく、あくまで肥料にプラスして施用するものです。肥料はしっかりと適期に施しつつ、植物が弱ってきたり、より綺麗に花を咲かせたい、葉緑素(光合成に影響があります)を増やして葉を青くイキイキさせたいときに有効です。
種類としては液体やアンプルのものがあります。
リキダス
リキダスは、3種類の有効成分コリン、フルボ酸、アミノ酸を配合し、3つの相乗効果で植物本来が持っている力を引き出し、元気な植物を育てる活力液です。また、カルシウムをはじめ、不足しがちな各種ミネラル(鉄・銅・亜鉛・モリブデンなど)が、植物に活力を与え、美しい花を咲かせると共に、葉面散布液としても使用できるおすすめの活力液です。
土壌に挿してそのまま使えるアンプルタイプのものもあります。
植物活力素 メネデール
植物の生長に欠かせない鉄を、根から吸収されやすいイオンの形で含む植物活力素で、発根を促し、元気な植物に育てます。肥料でも農薬でもないので気軽に使用できます。
防ぎたい!肥料にまつわるトラブルあれこれ
肥料のやりすぎ
花などの観葉植物は、野菜などとは異なり冬には休眠中になったりと、比較的植物の中でも肥料を必要としないものも多いです。このため、家庭菜園のようなペースで肥料をやると、やりすぎになってしまい肥料焼けを起こします。肥料やけを起こすと、植物が弱々しくなり、最悪枯れてしまいます。観葉植物は、特に肥料のやり過ぎには注意してください。
肥料は絶対混ぜないで!
よくある失敗として、いろいろな肥料を混ぜて高い栄養素の肥料を作り与えようとしてしまうことが挙げられます。肥料を混ぜると化学反応を起こし、植物自体に被害が出るだけでなく、有害物質・ガスが発生したりと、大きな事故につながる危険性があります。くれぐれも、肥料同士を原液で混ぜることはしないでください。
植物別のおすすめ肥料
農家webには、植物別におすすめの肥料をまとめている記事がたくさんあります。
ガーデニング植物におすすめの肥料
観葉植物におすすめの肥料
多肉植物におすすめの肥料
サボテンにおすすめの肥料
バラにおすすめの肥料
バラ向けの肥料は数多くあります。しっかり根や茎を丈夫にしたい、花を美しく咲かせたい、等用途によって上手く使い分けたいですね。バラの肥料については、下記をご参考ください。
紫陽花(アジサイ)におすすめの肥料
紫陽花(アジサイ)は、樹高1~2mの落葉低木です。基本的には上記でおすすめした肥料であれば間違いはありません。しっかりと元肥を土中に施肥し、花が咲く開花期の6~7月に肥料を切らさないように、追肥を行ってください。
洋ランにおすすめの肥料
胡蝶蘭におすすめの肥料
胡蝶蘭は、特に肥料の与える時期は要注意で、「生育期」といわれる春から秋ごろ(気温でいうと15°C以上が目安)に与えるようにしてください。
沈丁花(ジンチョウゲ)におすすめの肥料
沈丁花(ジンチョウゲ)は3月前後に花を咲かす、日本古来から愛されている花で庭によく植えられます。特に肥料を与えなくても毎年花は咲かせることはできますが、花を咲かした後、また株が生長する9月、また冬の時期に、元肥に使う緩効性肥料を少量与えることで、花を毎年しっかりと咲かせることができます。
睡蓮(スイレン)におすすめの肥料
その他
その他にも植物ごとにおすすめの肥料を掲載した記事がありますので、検索欄に植物名を入れて検索してみてください。
検索欄は、「右のサイドバー」もしくは「サイドバーメニュー」にありますよ!
まとめ
開業・開店祝いや就任の祝いの贈答品として不動の人気を誇る胡蝶蘭。胡蝶蘭には、色によって様々な花言葉があることも魅力の一つになっています。通気の良い場所に置き、水やり、そして生育期に肥料を適切に与えることで、長く美しい胡蝶蘭を是非、楽しんでみてください。