夏の初めから淡い青や白い涼し気な花を咲かせるアガパンサスは、丈夫で植えっぱなしでも毎年花を咲かせる手間のかからない花として、公園などの花壇でもよく見かけます。
アガパンサスの花を美しく咲かせるためには、肥料を与えて育てることが大切です。ここでは、アガパンサスを上手に咲かせるおすすめの肥料や肥料のやり方について、わかりやすく説明します。
アガパンサスの基礎知識
肥料の話をするまえに、アガパンサスについて知っておきましょう。植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると、枯れずに元気に育つのかわかってきます。
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2024/06/agapanthusーvase.jpg)
学名 | Agapanthus |
---|---|
属名 | ヒガンバナ科ムラサキクンシラン属(アガパンサス属) |
原産地 | 南アフリカ |
樹高・草丈 | 30cm~150cm |
耐寒性等 | 耐寒性:強い~普通(品種による) 耐暑性:強い |
開花期 | 5月下旬~8月上旬 |
花言葉 | 「恋の訪れ」「ラブレター」「知的な装い」 |
アガパンサスは、南アフリカ原産の多年草の草花で、耐寒性の強い冬に落葉する品種と常緑の品種があり草丈も、グランドカバーになるような小型種から1m以上にもなる大型種まで種類が豊富です。
耐暑性もつよく落葉種であれば耐寒性にも優れており、丈夫で手間がかからないので初心者の人でも育てやすい草花です。やせ地でも育つので肥料はそれほど与えなくても花は咲きますが、肥料を適期に与えて育てると花つきがよくなります。
アガパンサスに肥料を与える時期とやり方
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2024/06/agapanthus-white.jpg)
地植え
アガパンサスは地植えにすると、5年~10年ほど植えたままにできるため、できれば日当たりがよく水はけのよい場所を選びましょう。
元肥
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
植え付けは3月~4月、9月~10月が適期です。庭植えでは肥料は土づくりと一緒に行います。
- 苗を植え付ける場所を決め、掘り起こします。
- 掘り起こした庭土7腐葉土3の割合で、腐葉土をいれよく混ぜます。
- さらに緩効性肥料を施肥し、苗を植えつけます。
- 苗が根付くまでは、水やりをしっかり行いましょう。
追肥
追肥は元肥がきれたころに施す肥料で、植物が生育するタイミングに肥料を与えることで、新芽や根の成長を助ける肥料です。
アガパンサスは元肥がしっかりしていれば花が咲きますが、花つきをよくするためには9月と3月にゆっくりと効果のでる緩効性肥料を追肥しましょう。
鉢植え
鉢植えの場合はポット苗の場合は、できれば早めに一回り大きな鉢に植え替えしましょう。植え替え時には元肥入りの草花用の培養土が便利です。肥料が入っていない場合には元肥として緩効性肥料を施しましょう。
鉢植えの場合は、庭植えに比べて水やりなどで肥料が流れやすいため、4月~6月、9月~10月に追肥を行います。月に1度鉢植え用の肥料を置き肥するか、液体肥料を使う場合は2週間に1度程度、水やり代わりに与えます。
アガバンサスにおすすめの肥料
月下美人は、葉や茎ばかり茂ってしまうと花芽がつかなくなることがあります。そのため葉を大きくする、窒素を控えめにする必要があります。できれば窒素(N)を控え、花をつけるのに必要なリン酸(P)とカリウムを高めた肥料がおすすめです。
緩効性肥料
有機肥料(有機質肥料)
庭植えの元肥や3月に施す肥料には、ゆっくり効果がでて土壌改良効果もある有機肥料がおすすめです。有機肥料には油かすや米ぬか、鶏糞などがありますが、家庭などでは発酵油かす肥料が使いやすいでしょう。
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。庭植えの元肥によく使われます。
油かすだけでは、リン酸やカリウムが足りないので骨粉などと合わせて使うとよいでしょう。未発酵の油粕は根に当たると肥料焼けしてしまう危険があるため、使い慣れていない人は発酵済の油粕をつかいましょう。骨粉や魚粉などと組み合わせてリンやカリウムを高めている肥料もあります。
ハイポネックス マグァンプK
鉢植えの元肥には臭いの心配のない、化成肥料のハイポネックスの定番肥料の粒状肥料のマグァンプKがおすすめ。ゆっくり効果がつづく緩効性肥料で、リンの配合量が多く様々な草花に使える肥料です。「チッソ・リンサン・カリ」植物の生育に必要な三要素は勿論、マグネシウムやアンモニウムなどの二次要素・微量要素もしっかりと配合されていています。植えつけ時の元肥には大粒がおすすめです。
草花用の緩効性化成肥料
草花用の緩効性化成肥料であれば鉢植え、庭植え両方に使えます。土にばら撒いて使う固形のものや、鉢植えなどでは、鉢の植えに置いておけば水やり時に、肥料分が溶け出して肥料が続く肥料がおすすめです。
置き肥では「プロミックの草花・鉢花用」やばら撒いて使える「プランティア 花と野菜と果実の肥料」などが窒素分が少なくリンとカリの成分が多いのでアガバンサスにおすすめです。
液体肥料
追肥には液体肥料を水やり代わりに与えてもよいでしょう。窒素分がすくないハイポネックス原液や、住友園芸化学の花工場原液などがおすすめです。液体肥料は速効性の肥料なので、開花後などに株を元気にするためにも使われます。
元肥入り培養土
アガバンサスは庭植えの場合は、5年以上ほったからしでも育ちますが、鉢植えの場合は3年~4年に1度植え替えが必要です。植え替え時には元肥入りの草花用の培養土が便利です。土質にあまりこだわらなくともよいですが、水はけのよいものを選びましょう。
肥料の基礎知識
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2023/05/fertilizer-top.jpg)
そもそも肥料ってなに?
肥料の定義は肥料取締法で決まっています。肥料は土壌に科学的変化をもたらし、植物が健全に育つように土地に施されるものを言います。つまり、農作物(植物)の健全な生育に欠かせない栄養を与えるものです。
農作物(植物)が育つためには窒素やリン酸、カリウムの三大要素のほか、微量要素などが必要です。大雑把にはなりますが、窒素(N)は葉肥(はごえ)、リン酸(P)は実肥(みごえ)、カリ(K)は根肥(ねごえ)と呼ばれています。肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示はこれらを指しています。
植物は土に根を張り、それらの養分を吸い上げて成長しています。そのため、土壌中の栄養分は植物が吸い上げることにより、どんどん乏しくなっていきます。それを補うために土壌に肥料を施すことを「施肥」と言います。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
肥料の種類
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2020/06/complex-fertilizer-160x120.jpg)
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2020/06/compost-160x120.jpg)
大きな植木鉢で用土を使う場合は、植え付け時や植え替え時に緩効性の化学肥料や臭いの少ない有機肥料を元肥として十分に施し、その後生育を見ながら液体もしくは固形の化成肥料を追肥として施していくと良いでしょう。
防ぎたい!肥料にまつわるトラブルあれこれ
![](https://www.noukaweb.com/assets/uploads/2024/06/agapanthus-blue.jpg)
花が咲かないのは肥料のせい?
アガバンサスは花が咲かない原因は肥料のせいでしょうか。アガバンサスの葉やつるばかり伸びて、花芽がつかない場合は、肥料過多(窒素分が多い)の可能性があります。その場合は追肥を控えてみましょう。
その他にも、日照不足や株が混みあっている、水やりによっても花芽がつかないことがあります。肥料の量や成分の他、栽培環境も見直してみましょう。
肥料は絶対混ぜないで!
よくある失敗として、いろいろな肥料を混ぜて高い栄養素の肥料を作り与えようとしてしまうことが挙げられます。肥料を混ぜると化学反応を起こし、植物自体に被害が出るだけでなく、有害物質・ガスが発生したりと、大きな事故につながる危険性があります。くれぐれも、肥料同士を原液で混ぜることはしないでください。
まとめ
アガバンサスは種類も豊富で、栽培がしやすいため公園の花壇などにもよく見かけます。涼し気な花は、アレンジメントでも人気があります。品種も豊富なので、育てる地域に合わせてお気に入りの品種を見つけて育ててみてください。