肥料の三要素(窒素、リン酸、カリウム)

肥料の三要素(窒素、リン酸、カリウム) 肥料の三要素

植物が育つために必要な三大要素(三要素)は窒素(チッソ)、リン酸リンサン)、カリウム(カリ・加里)です。植物を育てるときにはまず、この三要素と多量要素、微量要素について、確認しておくと良いでしょう。

肥料 三要素の成分の概要

植物の生育には、16種類もの元素が不可欠とされています。その中でも「窒素」、「リン酸」、「カリウム」が最も多く必要とされ、これを「肥料の三要素」といいます。肥料の三要素は、それぞれ下記のように元素記号で表されることも多いです。

成分元素記号
窒素N
リン酸P(P2O2)
カリウムK(K2O)
肥料の三要素の各要素と元素記号
編集さん
編集さん

よく肥料のパッケージ等で「N-P-K:8-8-8」と記載されているラベルを見たことがあると思います。これは、各要素がどのくらいの割合で含有されているかを表したものなのです。

化成肥料の画像です。
化成肥料の画像です。

肥料の三要素は、植物が生長するうえで必要とする要求量が多いとともに、土の中で不足しやすい養分のため、肥料として施す(施肥をする)ことで、土の中の養分を補ってあげる必要があります。

各要素の概要と働きについて、簡単にまとめておきましょう。

窒素(N)

窒素(N)は、肥料の三要素の一つで植物の生育に最も大きく影響する要素です。光合成に必要な葉緑素、植物の体を形作るタンパク質など、植物が生長する上で重要な働きをする物質となります。窒素肥料は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、生育の初期に効果的であり、茎と葉の生長に大きく影響します。

リン酸(P)

リン酸(P)は、肥料の三要素の一つで、開花・結実を促進したり、根の伸長、発芽や花芽のつきをよくする働きがあります。そのため、リン酸肥料は「実肥(みごえ)」と呼ばれます。トマトなどの果菜類やかんきつなどの果樹類、バラなどの観葉植物には補給が必須の要素となります。

カリウム(K)

カリウム(K、加里)は、肥料の三要素の一つで植物体内でカリウムイオンとして存在しています。カリウムイオンは葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促したり、植物を丈夫にして病気などに対する抵抗力を高める働きがあります。そのため、カリウム肥料は「根肥(ねごえ)」と呼ばれます。

肥料の三要素 各要素の働き、効果

各要素の働きを今一度まとめておきましょう。

成分働き具体的な効果
窒素(N)「葉肥」と呼ばれ、茎と葉の生長を促進する働きがあります。窒素は植物を形作るために必要なタンパク質、光合成に必要な葉緑素、その他細胞、酵素、ホルモン、核酸など植物が生きていく上で必要な働きをする物質の構成元素です。栽培においては、作物の収量や品質に直結してくる非常に重要な要素です。
リン酸(P)「実肥」と呼ばれ、開花・結実を促進したり、根の伸長、発芽や花芽のつきをよくする働きがあります。栽培においては、「開花・結実の促進」「根の伸長」「発芽や花芽のつきをよくする」「果実の成熟や品質の向上」などの効果があります。
カリウム(K)「根肥」と呼ばれ、根の発育を促したり、植物を丈夫にして病気などに対する抵抗力を高める働きがあります。栽培においては、「テンサイや果実の糖分を増加させる」「ジャガイモやかぼちゃのデンプン価を向上させる」「イネの茎葉を丈夫にし、倒伏や病害への抵抗性を向上させる」などの効果があります。
肥料の三要素のはたらき、具体的な効果

窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)の欠乏症状、過剰症状のまとめ

肥料の三要素が多すぎたり(過剰)、少なすぎたり(欠乏)するとどうなるのでしょうか。各要素の基本的な欠乏症状と過剰症状をまとめました。

成分欠乏症状過剰症状
窒素(N)作物全体の生育が悪くなり、上位葉の生長が止まります。また、下位葉から均一に黄化し、最終的に葉脈などの緑もすべて黄化します。「曲がり果(キュウリ)」「落果(ナス)」など様々な生理障害のもととなります。葉の色が濃くなり、生育が全体的に盛んになります(繁茂)。また、花芽分化や生長点の細胞分裂に異常が出ます(芯止まりなど)。「落蕾・落果(トマト、ナス)」「花芽分化の遅延(イチゴ)」「乱形果・チャック果(トマト)」「茎の窓あき(トマト)」「つるぼけ(キュウリ、スイカ)」「心腐れ(ハクサイ、セロリ)」「岐根(ダイコン)」など多くの整理障害の原因となり得ます。
リン酸(P)通常、古い葉(旧葉)から症状が現れます。
「葉が黄化し枯れる」「葉が光沢の少ない濃緑色(イチゴ、ピーマン、ナスなど)や赤紫色(トマト、キャベツなど)に変色する」「果実の発育不良」などの症状が現れます。
イネの稚苗については、「古い葉の葉先が褐色する」など外観的な障害が発生します。しかし、野菜などの土耕栽培では外観から症状が特定できるくらいの過剰症状は少ないです。リン酸過剰に伴い、鉄欠乏や亜鉛欠乏の症状が発生します。
カリウム(K)通常、古い葉(旧葉)から症状が現れます。
「葉の縁から黄化して枯れる」「不規則な大型斑点の発生」「葉脈が赤紫色になる」「すじ腐れ果の発生」「日焼け果の発生」などの症状が現れます
カリウムの過剰症状は発生しづらいです。
濃度障害の一種で「葉の縁が丸まる」「葉にデコボコが生じる」「葉脈間にクロロシスが生じる」などの症状が現れます。
肥料の三要素のはたらき、具体的な効果

基本的には、このような症状が出ないよう、適量適期に施肥をすることが重要となってきます。施肥量や時期は、各作物や栽培方法、土壌の状態によっても異なりますので、しっかりと分析した上で施肥計画、栽培計画を立てることが重要です。

編集さん
編集さん

家庭菜園や趣味の園芸の場合は、そこまで気にする必要はありません。窒素、リン酸、カリウムがバランスよく含まれた化成肥料を作物の栽培カレンダーに合わせて適量施肥してください。楽しんでやることが重要です。

また、三要素以外にも必要な要素(後述する中量要素、微量要素)がありますが、市販の化成肥料には含まれているものもあります。そのような商品を選ぶことも重要でしょう。

その他の中量要素(二次要素)、微量要素

窒素、リン酸、カリウムの三要素以外の中量要素として、カルシウム(Ca)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)があります。

要素名主な役割
カルシウム(石灰・Ca)葉や実の組織を作る(細胞膜の生成と強化)、根の生育促進
硫黄(S)酸化・還元・生長の調整などの植物の生理作用や葉緑素(葉にある光合成を担う葉緑体に含まれる)の生成に関与
マグネシウム(苦土・Mg)葉緑素の構成元素、リン酸の吸収と移動
中量要素

また、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)も中量要素ですが、主に水や大気から吸収される要素です。

微量要素には、ホウ素(B)、塩素(Cl)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)があります。三要素や多量要素と比較すると、必要な量は多くありませんが、欠乏すると様々な生理障害が発生します。

要素名主な役割
ホウ素(B)細胞壁の生成、カルシウムの吸収と転流
塩素(Cl)光合成(光合成の明反応)
マンガン(Mn)葉緑素の生成、光合成、ビタミンCの合成
鉄(Fe)葉緑素の生成、鉄酵素酸化還元
亜鉛(Zn)酵素の構成元素、生体内の酸化還元、オーキシンの代謝、タンパク質の合成
銅(Cu)光合成や呼吸に関与する酵素の構成元素
モリブデン(Mo)硝酸還元酵素(硝酸をタンパク質にする過程で利用される)、根粒菌の窒素固定
ニッケル(Ni)尿素をアンモニアに分解する酵素の構成元素、植物体内で尿素を再利用
微量要素

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