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肥料の成分

葉色を良くするマグネシウム肥料の特徴と上手な使い方

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この記事では、カルシウムと並んで重要な多量要素であるマグネシウム肥料(苦土肥料)について、その特徴と上手な使い方、おすすめの商品について紹介します。

マグネシウム肥料とは

マグネシウムとは何か、マグネシウム肥料はどういうものかについて説明します。

そもそもマグネシウムとは?

マグネシウム(Mg)とは、動物や植物の生命活動を支えるミネラル(必須元素)のひとつであり、とりわけ植物の光合成に必要な葉緑素(クロロフィル)で効性元素の中心として不可欠なものです。

栽培作物などの植物においてマグネシウムが不足すると、葉緑素(クロロフィル)の減少をもたらし、一般に葉脈間の緑色が薄くなり白くなったり、黄色くなったりします(その状態を白化やクロロシスなどと呼びます)。イチゴやバラでは、葉脈間に不規則な黒い斑点ができます。

このとき、光合成の能力が低下し、炭水化物(タンパク質など)の生産も低下するとともに、油脂の合成など植物の健全な生育に必要な作用が阻害されるため、生育不良となります。マグネシウム欠乏が発生すると、果実の品質面で下記の事象が現れやすいです。

  • トマト:果実の赤みが薄くなったり、赤くなりづらくなる。
  • ブドウ:着色不良になるとともに、糖度が低下する。
  • ダイスなどの豆類:実の油脂が減少する。
  • ホウレンソウなどの葉菜類:一つあたりの重量、収量が減少する。日持ちが悪くなる。

マグネシウム肥料とは

マグネシウム肥料は、マグネシウム成分を含んだ肥料の総称です。先述したとおり、マグネシウムが不足すると欠乏症が発生します。予防、補充するために「く溶性苦土」「水溶性苦土」「可用性苦土」を含んだマグネシウム肥料を散布します。

マグネシウム肥料の特徴とその効果

マグネシウムの肥料は、海水由来や好物由来の原料を加工して、農作物の肥料として使用できるようにした資材のことを指します。一般にマグネシウム肥料は以下の二種類があります

  1. マグネシウムを主成分とした肥料
  2. 窒素(チッソ)、リン酸カリウム(加里、カリ)、カルシウム(石灰)など他の成分を主成分とした肥料

土壌診断によって、土壌の塩基バランスなどを分析しマグネシウムのみが不足しているときはマグネシウムを主成分にした肥料を、土壌酸度(pH)の調整が必要であれば苦土石灰など用途に合わせて、肥料を選ぶことが重要です。

土壌中のマグネシウムを不足させないように施肥することで、先述したマグネシウム欠乏症を防ぐことができ、結果的に収量の増加や品質の向上に繋がります。また、マグネシウムはリン酸の吸収を助ける働きもあるとされています。

マグネシウム欠乏症と過剰症

マグネシウム欠乏が起きやすい時期と条件

マグネシウムは、葉と果実に多く含まれることから、作物の生育中期から耕起にかけて欠乏症が発生しやすく、特に果実など実が肥大する時期に欠乏症が発生しやすいです。また、流亡しやすい砂質土壌や土壌酸度(pH)が低くカリウムやアンモニウムの含量が高い土壌で欠乏症が発生しやすいです。

また、マグネシウム欠乏は単純に土壌中のマグネシウムが不足するときに起こるだけではなく、下記の原因によって引き起こされる場合があります。

  • アンモニア態窒素が多量に残存している。特に土壌消毒前にアンモニア態窒素が残存している場合は、土壌消毒によって硝酸化成作用が進まないためアンモニア態窒素が多量に残存する原因となる。
  • カルシウム(石灰)、カリウム(カリ・加里)などの多量集積によって塩基バランスが崩れている。
  • 果菜類の台木にユウガオを使用している。
  • 強い整枝(わき芽かき、摘芯、誘引)を行っている。

マグネシウム欠乏の症状

マグネシウムは植物体内に吸収されたあと、体内での移動がしやすい要素です。そのため、一般に下位葉(古い葉)から欠乏症状が現れますが、果実では着果している付近の葉から欠乏症が現れます。

マグネシウム過剰の症状

土壌中のマグネシウムが過剰の場合は、それ自体が害を及ぼすことは少ないです。しかし、養分の拮抗作用(養分のバランス)によって、カリウム、カルシウムの吸収が抑制されて、カリウム欠乏、カルシウム欠乏が引き起こされる可能性があります。

マグネシウム肥料の種類と上手な使い方

マグネシウム肥料には、含まれている成分や配合によってさまざまな種類があります。マグネシウム肥料の代表的な種類を紹介します。

マグネシウムは基本的に土作りの段階で施肥をします。土作りをする前に土壌診断を行い、元肥として苦土石灰や硫酸マグネシウムなどを施すと良いでしょう。

どの種類を施すかは、土壌にマグネシウムがどれだけ不足しているのか、土壌の酸度(pH)やカルシウムなどの他のアルカリ分はどれだけ含まれているかを確認した上で選ぶと良いでしょう。そこまでは難しいかもしれませんので、土壌酸度(pH)を一つの基準として選ぶ方法を示します。

  • 土壌酸度(pH)が中性またはアルカリ性の場合
    硫酸マグネシウム(硫酸苦土)など
  • 土壌酸度(pH)が酸性の場合
    水酸化マグネシウム(水酸化苦土)や苦土石灰など

もし土作りのときにマグネシウムを施せなくて追肥する場合には、硫酸マグネシウム肥料がおすすめです。また、作物の生育途中にマグネシウム欠乏症が現れたときには硫酸マグネシウム肥料を葉面散布することをおすすめします(但し、葉面散布に適さない肥料もあるので注意してください)。

葉面散布を効果的に行うには
  1. 葉面散布に最も良い時間帯は早朝です。湿度が高く、葉の細胞が水で満たされた完全な膨圧状態にあるときが最適です。涼しくなった夕方でも良いでしょう。
  2. 日中の暑い時間帯は散布を避けましょう。温度が高い時の吸収率は非常に低く、ストレスにさらされ薬害の原因となります。
  3. よく晴れた日の日中帯も避けましょう。散布した溶液が高濃度となり、葉焼けなどの原因となります。
  4. 土壌水分が十分であるときに葉面散布をすることが効果的です。可能であれば、散布する前日に水を撒くこともおすすめです。
  5. 雨や水撒きの直前、風が強い日に葉面散布をするのは避けましょう。
  6. 養分吸収は、葉の表面よりも裏面のほうが盛んに行われますので、裏面を重点的に散布してください。
  7. 二重散布や農薬との混合などは基本的にやめましょう。農薬との混合は専門的な知識が必要です。

硫酸マグネシウム(硫酸苦土)

硫酸マグネシウム肥料は、水溶性のマグネシウムを含んでおり、すぐに植物に吸収されるため速効性があります。硫酸マグネシウムにはアルカリ分(石灰分)が含まれていませんので、土壌の酸度(pH)を高めることなくマグネシウム分を施すことができます。ただし、逆に土壌の酸度(pH)が低下させるので土壌の酸度や施用量には注意が必要です。また、水溶性のため、養液土耕栽培や養液栽培にも使用することができる肥料です。

元肥・追肥として施肥することができます。葉面散布ができるものもあります。

同じく多量元素である硫黄も含まれています。

硝酸マグネシウム(硝酸苦土)

硝酸マグネシウム肥料は、水溶性のマグネシウムを含んでおり、すぐに植物に吸収されるため速効性があります。硝酸マグネシウムには、硫酸マグネシウムとは異なり硫酸イオンが含まれていないため、他の原料と合わせて使用しても沈殿しないことから、養液栽培においてもよく使われるようになってきました。また、硝酸態窒素を含んでいるため、窒素分の施肥、及び生育の促進を図ることができます。

元肥・追肥として施肥することができます。葉面散布ができるものもあります。

水酸化マグネシウム(水酸化苦土)

水酸化マグネシウム肥料は、く溶性のマグネシウムを含んでおり、植物の根酸(根から出る有機酸)によって徐々に溶けて吸収されるため緩効性があります。また、マグネシウムの他にホウ素、ケイ素、石灰などを含んでいるものもあります。アルカリ分が含まれているため土壌酸度(pH)の矯正にも使用できます。

一般的に元肥として施肥することができます。

ケイ酸マグネシウム(ケイ酸苦土)

ケイ酸マグネシウム肥料は、蛇紋岩などを原料としたケイ酸とマグネシウムが含まれたミネラル肥料です。主成分はケイ酸とマグネシウムで、水稲をはじめとする農作物の茎や葉を丈夫にして健全な生育を促し、光合成の増進、養分吸収の促進によって、美味しさと品質向上、収量増加に役立つ肥料です。

ケイ酸マグネシウム肥料に含まれるマグネシウムは、その銘柄によって水溶性、く溶性が異なります。「マインマグ」シリーズが有名です。

塩化マグネシウム(塩化苦土)

塩化マグネシウム肥料は、海水などを原料としたものが多く、マグネシウムの他にも天然のミネラルなどが含まれています。いわゆる「ニガリ」が塩化マグネシウムです。塩化マグネシウム肥料は、水溶性のマグネシウムを含みますが、カルシウム(石灰)を含まないので硫酸マグネシウムと同じような使い方ができます。

苦土石灰

苦土石灰はドロマイトと呼ばれる原料を粉砕後、粒度調整した肥料です。粉状または粒状の形態で販売されています。カルシウム分とマグネシウム分を含んでおり、主に肥料や土壌改良材等に利用されております。

苦土石灰の一番の使用目的として、土壌酸度(pH)の矯正があります。苦土石灰に含まれるカルシウムは、水に溶けにくく、カルシウムの効きは遅いです。しかし、植物の根を痛める心配は少ないため、プロ農家だけではなく家庭菜園や園芸でもよく使われる資材です。

マグネシウムも含まれているため、土壌にマグネシウムを補給する事ができます。ただし先述したとおりカルシウムが含まれているため土壌酸度の矯正が必要ない場合には、カルシウム分が含まれていない塩化マグネシウムや硫酸マグネシウムを使用したほうが良いでしょう。

マグネシウム入りの化成肥料

一般的に元肥や追肥として使用される化成肥料(窒素、リン酸、カリウムの中で2成分以上が配合された肥料)には、カルシウムやマグネシウム、微量要素が含まれていることがあります。特に家庭菜園や園芸用の化成肥料には含まれているものが多いので、購入、使用される場合には肥料のラベルを確認してマグネシウムが含まれているかどうかを確認すると良いでしょう。

マグネシウムの有機肥料

先述したとおり、マグネシウム肥料には天然由来の原料(海水など)を使用しているものが多くあります。そのため、有機JAS認定の資材も多く、有機栽培や特別栽培にも使用することが可能です。有機野菜として販売するには、有機JAS認定の資材を使用しなければいけませんのでそのようなときには有機JAS認定を受けたマグネシウム肥料を使用しましょう。

肥料のおすすめ、人気の商品を紹介します。園芸・家庭菜園だけはなくプロ農家にもおすすめできる肥料です。マグネシウム系の肥料は含有されているマグネシウムの性質や配合によって様々なので、その肥料の性質などを調べて、ご自身で選んでみるのも楽しいと思います。

ハイポネックス「マグァンプK」

ハイポネックスジャパンが販売する元肥用の定番の粒状肥料です。「チッソ・リンサン・カリ」植物の生育に必要な三要素は勿論、マグネシウムやアンモニウムなどの二次要素・微量要素もしっかりと配合されていて、元肥に申し分ありません。土にしっかり混ぜて、大粒で約2年、中粒で約1年、生長効果が持続します。マグァンプK 小粒は追肥に有効です。

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ノザワ「マインマグ

ノザワのマインマグシリーズは、蛇紋岩を原料として、東京農業大学と共同開発を行ったミネラル肥料です。主成分はケイ酸とマグネシウムで、水稲をはじめとする農作物の茎や葉を丈夫にして健全な生育を促し、光合成の増進、養分吸収の促進によって、美味しさと品質向上、収量アップに役立つ肥料です。栽培期間の長短や作物の栄養特性に対応、有機栽培向けや融雪機能を付加した品種など、用途別に5種類のシリーズがあります。

家庭菜園向けの「マインマグmini」もあるので、プロ農家でなくても気軽に試すことができます。

宇部マテリアルズ「マグゴールド」

マグゴールドは最高水準の粒状水酸化苦土(水酸化マグネシウム)肥料です。すべて天然の原料で製造されているため、安心して使用できます。また、原料にはマグネシウム以外に多くの微量要素も含まれているため、作物の育成を促進させます。

宇部マテリアルズ「宇部マグ」

宇部マグは生石灰や海水中にあるマグネシウム、各種ミネラルを濃縮、精製し作られた水酸化マグネシウム肥料です。水酸化マグネシウム肥料のため、く溶性であり緩やかに肥効が続きます。マグネシウムの他に、ホウ素、ケイ酸、石灰(カルシウム)などを含み、これらを補給することができます。また、土壌酸度(pH)の矯正にも使用できます。

マグネシウム系の肥料はこの他にもたくさんある!

マグネシウム系の肥料は、上記で紹介したほかにもたくさんの種類、商品があります。ご自身が育てている植物や栽培作物、土壌に合ったものを探してみましょう。

植物が吸収しやすいマグネシウム成分

マグネシウムは欠乏しないように施肥することが重要と説明してきました。しかし、ただ単にマグネシウムが含まれている資材を施せばよいというわけではありません。マグネシウム肥料は、どのように溶解するかによって3種類に分けることができ、それぞれ特性を理解した上で使用することが重要です。

  1. 水溶性マグネシウム
  2. く溶性マグネシウム
  3. 可溶性マグネシウム

水溶性マグネシウム

水溶性マグネシウムは、その名の通り水に溶けやすいマグネシウムのことを指します。土壌溶液によく溶けるため、そのままでも植物に吸収されやすいマグネシウムです。

水溶性マグネシウムを含む肥料としては、硫酸マグネシウム(硫酸苦土)や硝酸マグネシウムがあります。

水溶性マグネシウムの主な特徴は、以下のとおりです。

  1. 水によく溶けて、早く効く。
  2. 水によく溶けるため、溶脱しやすい。

く溶性マグネシウム

く溶性マグネシウムは、水には溶けませんが2%のクエン酸液に溶けるマグネシウムのことを指します。土壌中のく溶性マグネシウムは、植物の根から分泌される有機酸によって溶解されます。有機酸によって徐々に溶解、溶出されるため、全量が吸収されるまで長期間かかります。肥効がゆっくり長く続くことが特徴です。

く溶性マグネシウムを含む肥料としては、水酸化マグネシウム(水酸化苦土)や苦土入りカキ殻肥料があります。

く溶性マグネシウムの主な特徴は、以下のとおりです。

  1. 有機酸に溶けてから効果を発揮するため、水溶性マグネシウムのような速効性がなく、緩効性の肥効を示す。
  2. 肥料持ちが良く、長く効かせることができる。
  3. 比較的に肥料成分が高い。

可溶性マグネシウム

可溶性マグネシウムとは、水には溶けませんが0.5mol/Lの塩酸に溶けるマグネシウムのことを指します。土壌中の可溶性マグネシウムは、植物の根から分泌される有機酸によって溶解されます。一般に可溶性成分を溶解するためには強い酸性が必要ですが、一部の有機酸が強い酸性性質を持っているため、それらによってゆっくり溶かされます。肥効がゆっくり長く続くことが特徴です。

可溶性マグネシウムを含む肥料としては、炭酸苦土石灰(苦土石灰)があります。

肥料の分類や単肥について、気になる方は下の記事ものぞいてみてください。

マグネシウム入りの肥料のみ与えれば作物がうまく育つということではありません。畑作物には硝酸態窒素やリン酸、カリウム、カルシウムなどの栄養素も必要です。定植する前には、堆肥などの資材で土壌環境をよくすることも重要です。

マグネシウム系肥料の購入方法、価格

マグネシウム系肥料はさまざまなメーカーが独自で開発・販売しています。店頭に並ぶものもあればインターネットでしか購入ができない商品もあります。ホームセンターなどでも取り扱いされている場合がありますが、店舗に陳列されておらず取り寄せ、もしくは別店舗に探しに行かなければならない場合もあります。

インターネット通販で購入されることもおすすめです。「少し高いかな?」と思われるかもしれませんが、インターネットで購入した場合も、そこまで大きな価格の差はありません。インターネット通販を使用することで店舗に出向く時間が削減されたり、肥料を運ぶ時間も減るので私は積極的に利用しています。また、いろいろな商品をみることができ、ゆっくりと比較できるなど、店舗での購入にはない楽しみも増えます。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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