コーヒーを淹れた後のコーヒーがらを有効活用しようと、昨今さまざまな用途に利用されています。
コーヒーかすは、米ぬかや堆肥などとともに「特殊肥料」に指定されていますが、除草にも効果があるという話も最近よく聞かれます。
肥料と除草、一見相反するようにも思えますが、コーヒーかすに除草効果は本当にあるのでしょうか?徹底検証するとともに、使い方の解説も行っていきます。
コーヒーかすは特殊肥料
コーヒーかすは、肥料取締法で、「特殊肥料」に指定されています。
特殊肥料とは、魚かすや米ぬかのような、農家の経験と五感により品質の識別できる単純な肥料や、堆肥のような、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料で、農林水産大臣が指定したものを言います。
具体的には、下記の46種類が指定されています。
特殊肥料とは、魚かすや米ぬかのような、農家の経験と五感により品質の識別できる単純な肥料や、堆肥のような、その価値や施用量が必ずしも主成分の含有量のみに依存しない肥料で、農林水産大臣が指定したものを言います。
具体的には、下記の46種類が指定されています。
魚かす、干魚肥料、干蚕蛹、甲殻類質肥料、蒸製骨、蒸製てい角、肉かす、羊毛くず、牛毛くず、粗砕石灰石、米ぬか、はっこう米ぬか、はっこうかす、アミノ酸かす、くず植物油かす及びその粉末、草本性植物種子皮殻及びその粉末、木の実油かす及びその粉末、コーヒーかす、くず大豆及びその粉末、たばこくず肥料及びその粉末、乾燥藻及びその粉末、落棉分離かす肥料、よもぎかす、草木灰、くん炭肥料、骨炭粉末、骨灰、セラックかすにわかかす、魚鱗、家きん加工くず肥料、はっこう乾ぷん肥料、人ぷん尿、動物の排せつ物、動物の排せつ物の燃焼灰、堆肥、グアノ、発泡消火剤製造かす、貝殻肥料、貝化石粉末、製糖副産石灰、石灰処理肥料、含鉄物、微粉炭燃焼灰、カルシウム肥料
コーヒーかすは、土壌の物理性を向上させることなどが知られており、通気性、排水性、透水性、保水性などを向上させることができます。この点から特殊肥料に選ばれています。
「コーヒーかす」で除草できるの?
生えている雑草の除草はできないが、発芽、生長抑制効果はある
コーヒーかす自体に、グリホサートやグルホシネート、お酢やお湯のように、雑草の葉茎に散布して枯らす効果はありません。このため、雑草が繁茂した場所でコーヒーかすを撒いても枯れず、除草効果は得られないでしょう。
しかし、コーヒーかすには、直接土壌に施用すると,他の未分解の有機物と同様に窒素の急速な有機化が起こる性質があり、窒素飢餓をもたらして、植物の成長を阻害します。
土の中では常に窒素の無機化と有機化が起こっていて、無機化が進めば植物が吸収できる無機態窒素が吸えるのに対し、有機化が進めば土の中から無機態窒素が減って、植物が窒素を吸収できなくなります。
窒素は植物の成長にとって欠かせない栄養素なので、吸収できなくなると、成長が阻害、抑制されてしまうのです。
実際に生コーヒーかすを土の上に散布したところ、コマツナ(小松菜)の発芽に影響はなかったが、生育が不良となった結果があります。
また、コーヒー豆には大量のポリフェノール物質(主にクロロゲン酸)とカフェインが含まれており、コーヒーかすにもそれらの物質が微量ながら残っています。ポリフェノール物質とカフェインの成分は植物の生育阻害を起こす可能性があるので、大量に使用すると雑草の生育の抑制に効くと言えるでしょう。
逆にコーヒーかすは土壌に撒いた後、時間を経て堆肥化し、一度有機化された窒素が再無機化して肥料としての効果を発揮するようになります。速く堆肥化したい場合は,野積み堆積のままでは堆肥化はほとんどすすまないので,他の粗大有機物であるバーク、おがくず、もみ殻などの資材と混合堆肥化して用土に施肥し、土中の微生物の活動を促すと良いでしょう。またEMボカシと混ぜ込むと1ヶ月で使えるようになると言って利用されている農家の方もいます。
そのほかのコーヒーかすの効用は?
また、コーヒーかすから作成した堆肥が、キタネグサレセンチュウ被害を抑制する傾向が見出された、とする研究結果もでています。また、ネコブセンチュウが多発しているハウスでコーヒーかすとEMボカシ(この場合は10aあたり「コーヒーかす」1t(1000㎏)、EMボカシ300㎏)を散布した結果、ネコブセンチュウの防除にかなりの成果があったという報告もなされています。
また、コーヒーかすは炭やゼオライトのように無数の小さな穴がある多孔質なので、牛糞や鶏糞といった動物性堆肥の悪臭物質(アンモニア臭)を吸着し、消臭、脱臭する効果もあります。(活性炭よりも消臭効果が高いと言われています)
雑草を抑制しようとしたらどれくらいのコーヒーかすが必要?
UCC上島珈琲株式会社が近畿大学農学部と共同で出した研究によると、明らかな雑草の抑制効果を出すためには、1㎡メートルに対して除草効果を得るのに必要なコーヒーかすの量は約10㎏、とする研究報告がなされています。(使用されたコーヒー抽出残渣は、日干し,レンジ等で乾燥したものか湯、雨で濡れた、湿ったものかは不明)
コーヒー抽出残渣の施用による植物の生育、土壌改良の評価について報告
これだと非常に大量のため、使用が現実的でないと感じる方も多いのではないでしょうか。
しかし、実際にナスを育てている農家の方で、苗のまわり、それからだんだん周囲に広げながらマルチ代わりに撒き、雑草の抑制、またアブラムシやナメクジ、毛虫などの害虫の忌避(虫除け)に効果があるという報告もありますので、このようにマルチの代わりに利用する方法はできると言えるでしょう。
まとめ
このように、コーヒーかすは肥料の効果と雑草抑制の効果と、両方の要素を持ちます。これは発酵の度合いで、窒素の有機化から無機化に変化すること等によるものです。
肥料としての効果を出したいときは、有機物のバークやEMボカシと混合して発酵を促進させる必要があります。また、10aあたり5tのコーヒーかすを肥料と混用して使用した場合は、1ヶ月以上経っても一部生育阻害の影響が見られたので、一度に多量の使用は控えた方が良いでしょう。
コーヒー(coffee)の香りを楽しんで飲むだけではなく、ドリップした(淹れた)後、本来ゴミ箱に捨てるはずの出し殻を肥料や除草の使い道として有効活用することは、持続的社会を作っていく上で非常に大切なことです。少量でも、庭先の掃除ついでに、コーヒーかすを雑草を防ぎたいところに撒くのもいいかと思います。是非、取り入れてみてください。
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また農家webは、スギナ、ドクダミ、苔、竹、笹、ヤブガラシ、オヒシバ、メヒシバ、カタバミ、クローバー、スベリヒユ、セイタカアワダチソウといった主に畑作、芝生に生える雑草、また、クログワイやコナギ、イボクサといった水田雑草それぞれの対策記事もあります。
更に、ハダニやアブラムシ、スリップス、コガネムシ、カイガラムシ、キスジノミハムシ、ヨトウムシ、ナメクジなどの害 虫、病害虫対策記事もあるので是非参考にしてください!
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