水田の除草・防草

水田の除草 除草機、除草剤の種類、効果的な使い方のまとめ 水田の除草・防草

田んぼや畦(畔)の土中、水中の雑草を放置すると、病害虫の温床になり、作物から養分を吸い取り、品質低下、病原菌の付着を招いてしまいます。このため、稲作には、 除草 、防草が非常に重要です。

この記事では水田除草機や、水稲の除草剤の、種類や剤型、抵抗性雑草、効果的な使い方などについてまとめています。

水田の防除・除草について

水田の防除・除草は、除草剤をつかっての除草が一般的です。水稲に使える除草剤は抵抗性雑草などの出現により、混合剤が増え価格も高騰しています。その一方で、消費者のニーズの高まりにより、農薬を減らした特別栽培米への付加価値があがっており、昔から使われている水田除草機にも注目が集まっています。

水稲除草剤の種類

水稲の除草剤は、その散布する時期と効果により「初期剤」「中期剤」「後期剤」「一発処理剤」に区分されます。それぞれの除草剤に使用適期があり、この適期を外すと除草の効果が十分発揮できません。必ずその適期にあった除草剤を使いましょう。1回の除草剤の散布では、栽培期間全体を通した防除効果が不十分な場合は、2回以上の処理を行う体系処理が有効です。

初期除草剤

代かき後から田植前まで、または田植同時からノビエ1.5葉期までに使用する除草剤。 通常、この後に中期剤もしくは一発処理剤を使用する場合が多くあります。商品としては、エリジャンや、かねつぐなどがあります

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中期除草剤

初期剤の使用、移植後、ノビエが3~4葉期になるまでに使用する除草剤。 初期剤施用後に使うため、通常の一発処理剤よりも時期を遅らせて使用する場合が多 く、雑草の発生期間が長い場合には効果的でです。ハイカット1キロ粒剤や、ゲパードジャンボなどがあります。

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後期除草剤

初期剤+中期剤、または一発処理剤の使用後に、残草が問題となる場合に使用する除草剤。通常は中干し時からそれ以降に使用する場合が多いです。トドメバスMF液剤やクリンチャーバスME液剤などの茎葉処理剤があります。

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一発剤

体系是正剤ともいう。以前は「初期剤+中期剤」の体系処理しかなかったが、省力化を図るため一度の処理で「初期剤+中期剤」の効果をもたらすということで 一発処理剤、または体系是正剤と呼ばれる。現在はこちらが主流となる。使用できるノビエの葉齢で「初期一発剤」「初中期一発剤」という区分があります。一発剤は多くの商品があります。日産アクト粒剤やイネキングジャンボなど剤型も豊富です。

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体系処理とは

体系処理とは、当初から計画的に、効果のある除草剤を組み合わせて複数の除草剤を使うこと。除草剤は適期に散布しないと効果が半減します。そこで発生する雑草の適期に合わせた、効果のある除草剤を使うことで、省力化・コスト減にもつながります。

初期剤の効果はおおよそ15日~20日しかないため、その後に発芽した雑草には効果がありません。中期剤をつかって体系的に防除する必要があります。

一発剤は便利で長く効果がでますが、コストも高めで、田植直後には散布できないものもあります。初期剤+中期剤を使った方がうまく防除できる場合もあります。散布の時期と雑草の発芽時期を見極めて、どちらが良いか見極めて使いましょう。

抵抗性雑草について

除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、水稲の除草剤は単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。

SU剤抵抗性雑草について

スルホニルウレア系除草剤(SU剤)は、非常に少ない量で多くの雑草に効果がある除草剤で、一発処理剤の除草剤として、広く農家で繰り返し使われてきました。

その結果、今では20種類以上の多くの雑草(アゼナ、アメリカアゼナ、タケトアゼナ、アゼトウガラシ、キクモ、ホタルイ、ミズアオなど)に、除草剤が効かない抵抗性雑草が発生しています。SU抵抗性雑草が発生している場合には、抵抗性雑草に効果のある除草剤を使う。また体系処理を見直し一発剤を使わず初期剤+中期剤にしてみる、一発剤を使う場合には、その草に効く成分が2つ以上入ったものにするなど雑草に合わせて、適切な除草剤を選びましょう。

スルホニルウレア系除草剤の成分は、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、イマゾスルフロン、シクロスルファムロン、フルセトスルフロンなどがあります。HRACコードでは「HRAC2」(ACL阻害)に該当します。

HRACコードを使ったローテーション散布

抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。

この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。

HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。農薬検索データベースの検索数のランキングの記事もありますのでそちらもさんこうにしてください。

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剤型について

水稲の除草剤には、粒剤・ジャンボ剤・豆つぶ剤・フロアブル剤などの多くの剤型があります。剤型で効果に違いはありませんが、特性に合わせた使い方をしないと本来の効果を発揮できません。自分の田んぼの環境にあった剤型を選ぶために、剤型の特徴を説明します。

粒剤

粒剤は、手間がかかるが、棚田や・場所によって雑草の生え方に違いがある、水持ちの悪い田んぼにおすすめの剤型です。

粒剤は、昔からある剤型で薬剤は地面に定着してから処理層が広がり、水中であまり移動しません。そのため均一に聞かせるためには散粒機で、田んぼ全体に満遍なく散布する手間がかかります。

ただしその特性のため、散布後の雨で有効成分が流亡することもすくなく、棚田などでは薬剤が上から下に流されることもないため、効果にむらがでることもありません。また薬剤も自分で調整できるので雑草の多い場所に多めになどの調整も可能です。

ジャンボ剤

ジャンボ剤は、畔から田んぼ投げるだけで、水溶性フィルムが溶けて成分が拡散。ゴミも少なく散布量の計算が楽な状型です。

ジャンボ剤は、粒剤や豆つぶ剤を水溶性フィルムで包んだパック上になっています。1パック25g~50gで、10a当たり10~20個投げ込むだけで水面に広がります。大きさの違う田んぼがいくつかあっても計算もしやすく、水で溶けるフィルムなのでゴミも出ないのが魅力です。

水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。

豆つぶ剤

豆つぶ剤は、粒剤でアゼからひしゃくや手などで、直接散布するだけで、水面に浮かんで拡散。大きな田んぼでも簡単に遠くまでで飛ばせます

豆つぶ剤と、ジャンボ剤と同様に、あぜ際から、ひしゃくなどを使って、水面にまくだけで水面を移動して拡散する便利な剤型です。計量する手間はかかりますが、大きな田んぼなどではジャンボ剤を田んぼの真ん中まで、投げ込めないため田んぼに入る必要があります。その点、豆つぶはひしゃくでまけば10m程度まで飛ぶため、1haほどの田んぼならアゼ際からの散布で中央まで薬液が届くでしょう。

水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。

フロアブル剤

フロアブル剤は、粘着のある液体で希釈せずにアゼ際から散布する、水口からの流し込みも可能な剤型です。

フロアブル剤は、散布後一度沈殿した後に水に溶けだして、広がり数日間かけて沈殿します。幅30mほどの畑であれば、アゼから散布するだけで全体に広がります。また水口から流し込みも可能なので、用水が豊富であれば簡単に散布が完了します。

水面に広がる性質上、藻やごみなどの障害物があると拡散が悪くなります。また剤が一度溶けてから3日~4日かけて沈殿するので、水持ちが悪い田んぼではうまく拡散しないこともあります。

乳剤・EW剤

水に溶けにくい有効成分を有機溶媒に溶かし乳化剤を加えた油状液体の製剤で、可燃性の危険物であることが多い剤型です。水に希釈し乳濁した状態で使用します。EW剤は、登録上乳剤に分類されていますが、乳剤を改良して、成分を水溶性のポリマーなどで被覆した剤型です。危険物には該当しません。

効果的な使い方

除草剤の効果を最大限まで広げるには、散布の方法にもいくつか気をつけたいポイントがあります。これらのポイントを抑えることで、より効果的に雑草を防除することができます。

初期・中期除草剤・一発剤

  • 丁寧な耕起・代かきを行って、凸凹をなくし平坦な田んぼにすること
  • 漏水防止のため、もぐらなどの小動物の穴や、あぜからの漏水を防ぐためあぜ塗りや、畦畔シートなどを活用してしっかり漏水防止する
  • 水稲をしっかり植え付ける。代かき不足による浮き苗や浅植えは、稲に薬害が生じる可能性があります
  • 水管理が重要です。土壌表面に処理層をつくることで除草効果を発揮します。水口・水尻をしっかり止め、散布後7日間は落水、掛け流しを行わないこと。ジャンボ剤や豆つぶ剤は水深が浅いと薬害がおきたり、うまく移動できなかったりします。5~6㎝ほどの水深があるとよいでしょう。
  • 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布するしてください

後期除草剤などの茎葉処理剤

使用方法に「落水散布又はごく浅く湛水して散布」かかれている場合は、下記のことに気をつけましょう。茎葉処理剤は、薬剤が付着するところが多いほどよく枯れます。

  • できるだけ落水して、散布しましょう。
  • 雑草の茎葉に直接かかるよう丁寧に全体に散布します。
  • 散布後雨が降ると効果が劣るため、2日間は雨の降らない日を選んで散布してください。
  • 散布後少なくとも3日間(浅水処理は5日間)はそのままの状態を保ち、入水、落水、かけ流しは行わないようにします。また散布後7日間は降雨の有無にかかわらず落水、かけ流しはしないでください。
  • 散布時期を適切な時期に。除草剤はその雑草にあった時期に散布しないと効果がでません。パッケージや雑草の様子をよくみて、適期に散布してください。

しつこい難防除多年性雑草の除草

 ホタルイ、クログワイオモダカ、シズイなどの多年生雑草が残っていたら、稲刈り後にも除草剤をまきましょう。多年生の雑草には、茎葉から薬液を吸収して、根まで枯らすグリホサート系の除草剤が効果があります。

水田除草機

水田(田んぼ)での除草は主に、草を取り除く除草作業と除草剤との合わせ技で対策していくことになりますが、有機栽培、自然栽培などで、出来るだけ除草剤を使いたくない農業者の方もいらっしゃるでしょう。そのような場合は、できるだけ除草剤を使わずに草取り、草刈りをしていくことになります。

水田(田んぼ)で使える除草機、水田中耕除草機については、詳しい記事がありますのでそちらを参考にしてください。

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