稲作につきものの水田雑草。水田には様々な雑草が生えますが、中には稲(イネ)の成長を阻害する厄介な雑草もいます。
ここでは水田に生える水田雑草の中でも、特に害草になってしまう代表格のコナギについて、特徴と、駆除、防除方法について、徹底解説していきたいと思います。
コナギとは?
科 | ミズアオイ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 本州以南 |
学名 | Monochoria vaginalis (Burm.f.) Presl var. plantaginea (Roxb.) Solms-Laub. |
別名 | ナギ、オトゲナシ |
コナギは原産地東南アジアで、ミズアオイ科に属する一年生の広葉雑草です。万葉集にコナギを詠んだ残っているように、日本では昔から馴染みのある植物です。小さい水葱(菜葱、ナギ)から、コナギ(小菜葱、小水葱)と呼ばれています。
春に発芽する一年草で、花茎は葉より低く、葉が球形、卵形の種子で繁殖します。青紫の花を数個付けます。
コナギの特徴
コナギは稲(イネ)よりも成長が速いため、分げつ期の稲(イネ)の株間に繁殖して生育が競合してしまい、稲の成長を阻害します。そしてコナギが多数発生すると稲の生育が遅れ、コナギはますます生育するという悪循環に陥ってしまいます。
北海道などでよく見られるミズアオイ(M. korsakowii Regel et Maack)とは似ているため、よく間違われます。ミズアオイは,コナギよりも大型(草丈は、コナギは5~15cm、ミズアオイは20~40cm)で,茎が直立、多数の花をつけるので,区別できます。(コナギは小さい花を数個付ける程度です。)
コナギの防除方法
上記のように、コナギは分げつ期の稲に多大な影響を与えてしまうため、その前に駆除することが重要になってきます。
科学的防除(農薬による防除)
まず、稲の生育初期、つまり田植え前後に土壌処理剤、下記のような一発処理剤で抑えていく方法があります。
初期段階は比較的簡単に防除できるのですが、近年、コナギも、スルホニルウレア系化合物(通称SU剤)に抵抗性を持つ、一発処理剤が効かないコナギが全国的に出現しています。
この場合は、下記のような抵抗性生物型に有効な成分(ベンゾビシクロン、フェントラザミド、ピラクロニルなど)を含む除草剤を使用してください。
初期を過ぎてしまった場合は、初期剤や一発処理剤の後に使用する、中・後期の除草剤を使うことになります。ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。
重要なことは、どの雑草も成長してからの除草は困難であるということです。できるだけ生育する前の初期に除草、防除することを心がけましょう。
物理的、生物的、耕種的防除
農薬を使わずにコナギの発生を防いだり、除草したりする方法として、多くの農家さんが色々な方法を試しています。ここでは、その方法を何点か紹介しますので、興味あるものがあれば、実行してみてください。
田植え後に軽く中干し
コナギは水生雑草で、酸素が少ない条件で発芽するので灌水すると、発生が促されます。
6月中に一度水を落とし、田んぼを軽く干すことで、コナギの好きな還元状態(田んぼに水を張り続けて酸素が少なくなった状態)を解消します。こうすると、コナギの発生を少なくすることができると言われています。
深水代かきをする
深水代かきをすることで出芽した株を浮かしてしまう防除方法があります。浮いて死んでしまった草は土壌の微生物に分解され、田んぼの養分になるので、一石二鳥です。
アイガモを利用した除草
アイガモはコナギを含む雑草やウンカといった害虫を食べてくれるので、生物的防除になります。
コナギは種子が小さく軽いため、非常に拡散しやすいのが特徴です。除草剤を撒いて防除していても毎年生えてくるので、毎年しっかり防除することが大事です。
まとめ
水田に生える雑草は、その他クログワイ、イヌホタルイ、イヌビエ、イボクサ、ノビエ、コウキヤガラ、タイヌビエ、ミズガヤツリ、オモダカ、ヒルムシロ、アメリカアゼナ、キカシグサ、ウリカワ、クサネム、シズイ、ハリイ、タマガヤツリ、ミゾハコベ、タケトアゼナ、キシュウスズメノヒエ、タカサブロウ、ミソハギ、ウキヤガラ、アゼトウガラシ、タウコギ、イグサ、ゴマノハグサ、カズノコグサ、ミズハコベ、ミズワラビ、ヒメタイヌビエ、タガラシ、デンジソウ、ホタルイ、トチカガミ、ヘラオモダカなどがあります。まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、土壌処理剤、一発処理剤で防除し、生育したものに対しては後期に使える薬剤を散布する方法などで駆除をしていきましょう。何よりも早め早めに土壌処理剤でしっかり防除することで、カメムシなどの害虫の発生、病害虫による病害の発生も防ぎ、殺虫剤も減らせますし、農作業を楽にすることができます。早期発見、予防を心がけましょう。
水稲よう農薬は、日産化学やシンジェンタジャパン、三井化学、日本農薬から展開されています。
また、田んぼの肥料や、発芽・幼苗期の代かきや田植、灌水、分げつ期、穂ばらみ期など、時期、適期毎の稲の育て方を下記で詳しく説明しています。
一年生、多年生雑草対策に水田で使える除草剤について、液剤も含めて下記で概略を説明しています。