スギナは、シダ植物の仲間で、ツクシを生み出し、非常に有名な雑草です。スギ(杉)を連想させる外観、そしてツクシが食べれることから、「杉の菜」→スギナという名前になったと言われています。
しかし、スギナは多年草の中でも、非常に広く深く地下茎を張り、一部の地下茎からでもどんどん生長する高い繁殖力、また草刈りなどで衝撃を与えると、辺り一面に胞子を撒き散らして繁殖を促すという面でも、最も厄介な雑草と言えるかもしれません。その地下茎の張り巡らし方を指して「地獄草」とも呼ばれるほど、退治しにくい、しつこい難防除雑草の代表格としての側面も持っています。
ここでは、最も厄介な雑草スギナを、どうやって駆除し、防除していくのか、おすすめの除草剤を中心に説明していきます。
スギナの特性

スギナは多年草で、一部の地下茎からでも繁殖し、少し経っただけでスギナだらけになるくらいの高い繁殖力を持っています。地下茎を伸ばして地中に根びこってしまうため、引っこ抜いても、地下茎の一部は地中に残存し、またそこから繁殖するため、本質的な駆除にはならないケースが多いです。
また、草刈などで衝撃を与えると胞子を撒き散らして、より多くのスギナの繁殖を産んでしまうという、誠に厄介な雑草です。
スギナの駆除方法

草刈り、草取りでの駆除
上記の通り、スギナは一部の地下茎からでも繁殖するため、地上部を草刈り、草むしりしても、地下茎からすぐに生えてきます。また、草刈り、草むしりなど物理的な衝撃を与えると、胞子を撒き散らして、さらに繁殖してしまい、駆除どころか繁殖の手助けになってしまいます。
しっかりと駆除したい場合は、草刈り、草取りは一時的に減らすことはできても、長い目で見ると駆除できるとは言えないのです。
では、どうすれば駆除できるのでしょうか?
除草剤(葉茎処理剤)での駆除
スギナをしっかり駆除しようとすると、やはり除草剤の使用が欠かせません。除草剤は簡単には、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
ここでは、既に生えているスギナの駆除なので、「茎葉処理剤」がベストです。
「茎葉処理剤」でも様々な種類があり、バスタなどの地上部の葉を中心に速効性があり枯らすもの(グルホシネート系など)から、地下部の根や地下茎まで全てを枯らし、根絶やしにするもの(グリホサート系)があります。
スギナは地下茎が厄介で、地下部をしっかりと枯らすことが重要なので、地下部の根や地下茎まで効果が効いて全てを枯らす、グリホサート系の葉茎処理剤の液体をしっかりかけましょう。ここではグリホサート系除草剤を中心に、代表的な除草剤をいくつか紹介します。
ラウンドアップマックスロード(日産化学(株))
最もメジャーなグリホサート系の除草剤(液剤)です。成分は、グリホサートカリウム塩で、グリホサートイソプロピルアミン塩のラウンドアップ やサンフーロンなどよりも、散布後の雨に強く、雨が降っても効果が持続しやすい特性があります。
ラウンドアップ は、原液を希釈して薄めて使うタイプから、そのまま使えるシャワータイプのALシリーズなど、様々なシリーズがあり、用途に合わせて経済的に使用できます。
サンフーロン(大成農材(株))
サンフーロンは、ラウンドアップのジェネリック品で、成分は、グリホサートイソプロピルアミン塩です。ジェネリック製品なので安価に手に入れることができ、効果は、グリホサートイソプロピルアミン塩の他の製品と変わりません。このため、経済的です。
その他グリホサート系では、ネコソギロングシャワーやネコソギクイックプロといったネコソギ シリーズやアースカマライズ、カダンのザッソージエースなどもスギナ除草剤としておすすめです。グリホサート系は農薬登録されているものも多く、農耕地で使用可能なものも多いです。
グリホサート系除草剤については、下記で詳しく説明、紹介していますので、是非参考にしてください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV8 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
また、芝生の上で、芝生を枯らさず、スギナを枯らしたい場合は、下記が選択性除草剤がおすすめです。
グリーンアージラン液剤 (石原バイオサイエンス(株))
成分 アシュラム
アージランは日本芝(高麗芝(コウライシバ)、野芝など)で使える葉茎処理剤で、芝の生育にとって有害なメヒシバやスズメノカタビラ(生育中)を防除することができ、生育中の広葉雑草にも高い効果:特にキク科雑草(ヒメジョオン、アレチノギクなど)に有効です。
2,4-D「石原」アミン塩(24d)
2,4-D「石原」アミン塩は、石原バイオサイエンス(株)が販売している、茶褐色液体色)の選択制除草剤です。成分は2,4PAジメチルアミン塩49.5%で、人畜毒性、環境影響が少なく、ホルモン・吸収移行型の茎葉処理剤です。オーキシン様の作用をもち,雑草の茎葉や根から吸収され,体内の植物ホルモンバランスを攪乱させることで生理的な障害を与え,茎葉を捻転(よじれ)させるなどののちに枯死させます。
広葉雑草によく効き、イネ科雑草には効果が弱いこと、日本芝だけでなく、センチピードグラスに対しても安全性が高く、養生中の雑草管理にも使えるのが特徴です。
他、MCPP液剤も有効です。芝生や田んぼの近くでスギナを駆除したい場合は、下記記事を参考ください。
除草剤の効果を高める方法
展着剤の活用
展着剤は薬液の濡れ性、付着性、拡展性、懸垂性などを強化し、薬液を均一に付着させる効果を持っています。除草剤用の展着剤では、サーファクタントWK、サーファクタント30、クサリノー、バスファテンが有名です。
商品名 | サーファクタントWK、30 | クサリノー |
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概要 | ||
タイプ | アジュバント (除草剤) | アジュバント (除草剤) |
補足 | クチクラワックスを溶解して表皮細胞中へ農薬を浸透させる。 グリホサート系、グルホシネート系除草剤だけでなく、芝生に使うMCPPなどの選択制除草剤の効果も高める。また、土壌処理型除草剤の葉面吸収も促進させる等、かなりの種類の除草剤で使用可能。 | ジクワット、パラコート、プログリックスLなどのカチオン型茎葉処理剤に適合し、効果を高める (アルソープ30も同様の効果) |
製造、販売元 | 丸和バイオケミカル | 日本農薬 |
除草剤用の展着剤の特長や使い方は、下記に詳しく解説していますので、是非ご参考ください。
尿素の活用
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
効果的なノズルの活用
最近では、ラウンドアップを販売している日産化学株式会社から、従来よりも少量の除草剤で効果を維持して散布できる「ラウンドノズルULV5」というノズルや、同様の形状の「セフティ3 除草用 ラウンドノズル25」が開発されました。
こちらはわずか5Lの水量で10a散布することができるノズルで、圧倒的な小水量で散布を行うことができ、少ない散布量で済むため、作業時間の大幅な短縮になる優れものです。
こちらの商品は使用したい噴霧機に合うものを選ぶ必要があります。詳しくは下記を参考にしてください。
ラウンドノズルULV5 バッテリー・人力用 噴霧機メーカー別 推奨機種一覧表
その他の駆除方法
熱湯をかける
その他植物全般を枯らすのに効果がある方法として、枯らしたい植物に熱いお湯、つまり熱湯をかける方法があります。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼けて、枯れますが、地下茎や根までは浸透しないため、地上部にしか効果が出ません。また、土壌に熱湯をかけることで、土壌内部の細菌などに悪影響が出てしまいますし、熱湯を雑草にかけることは大量に行うことは難しく、費用対効果も合わないかと思います。
このため、スギナを駆除するために熱湯をかけることはお勧めできません。
塩を撒く
最近、塩を撒くことで、除草することを勧めている記事、また除草塩という商品などが見受けられます。確かに塩分濃度が高くなると雑草は枯れるので、除草の効果はありますし、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぎます。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨などで塩が流れ出て、隣の土壌にも多大な被害を及ぼします。
このため、除草に塩を使うことはくれぐれも避けてください。
スギナの防除方法
除草剤(土壌処理剤)での防除
土壌処理剤は、まだ雑草が生えてきていない時期に散布し、地面に膜を張って、新しく生えてくる雑草を抑えるものになります。まさにスギナの防除に最適なもので、駆除した後の春先などにしっかり撒けば、スギナが新しく生えてくることを長期間防ぐことができます。ここでは、代表的なおすすめの土壌処理剤をご紹介します。
クサノンEX粒剤 (住友化学園芸(株))
ターバシル・フルミオキサジン、2種類の有効成分で、スギナ、ドクダミ、ススキ、ヤブガラシ、シロツメクサなど各種雑草の葉や茎だけでなく根までスッキリ枯らすことができる微粒の土壌処理剤です。低温時にも使え、植栽地を除く樹木等の周辺地に撒くことを想定した薬剤です。
カダン除草王(フマキラー(株))
カダン除草王の成分カルブチレートは、非ホルモン型吸収移行性の尿素系の微粒(粒状)除草剤であり、雑草・草の光合成阻害により除草します。
カダン除草王は、細粒の非選択制除草剤で、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ、ブタクサ、ツユクサ、カヤツリグサ、コニシキソウ、ハコベ、エノコログサなど一年生雑草といわれる一般的な雑草から、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、スギナ、カタバミといった多年生広葉雑草、ススキ、チガヤといった多年生イネ科雑草、ササ類など枯れにくい雑草まで、根っこまで枯らすことができます。効果は最大約6ヵ月間と長期間持続することも特徴です。
非選択性で全ての植物、庭木に影響を与えるため、植物、庭木を植えている、植える予定の花壇やまた畑、水田といった農地ではなく、道路や空き地等で撒けることを想定した商品です。
ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) (レインボー薬品(株))
アミカルバゾン、ブロマシルを成分とし、粒のまま地面にパラパラ撒くタイプの粒状の除草剤で、除草効果が約5~9ヶ月間という非常に長期間持続するのが特徴です。1~2週間で枯れ始め、30日前後でほとんど枯らすことができ、成分が土壌に一定期間とどまるので、新しい雑草の発生を予防できます。
防草シートでの防除
スギナをしっかりと駆除した後、その場所に防草シートを貼ることが可能であれば、防草シートを貼ることは、非常にに有効なスギナの防除になります。
防草シート(除草シート)は、光をほぼ遮光することで、植物に光合成を行えないように抑制するもので、スギナ含めあらゆる雑草に大変有効です。
防草シートについては、プランテックス(ザバーン )をはじめとして下記のコンテンツに詳しく説明していますので、防草シート資材を敷くことが可能な方は、是非参考にしてください。
まとめ
スギナは難雑草で、完全に駆除するのは非常に大変な雑草です。生い茂っている場合は、グリホサート系除草剤で地下茎まで枯死させ、その後は土壌処理剤や防草シートを敷くなど、しっかりと予防するようにしましょう。
その他の庭や畑に生える雑草にお困りの方は、難雑草(トクサ、カラスノエンドウ、カタバミ、イタドリ、オオバコ、セイヨウタンポポなど)の駆除、除草についてまとめた下記コンテンツをどうぞご参考にしてみてください。






