稲作につきものの水田雑草。水田には様々な雑草が生えますが、中には稲(イネ)の成長を阻害する厄介な雑草もいます。
ここでは水田に生える水田雑草の中でも、多年草で、特に害草になってしまう代表格のクログワイについて、特徴と、駆除、防除方法について、徹底解説していきたいと思います。
クログワイとは?
科 | カヤツリグサ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 北海道以外 |
学名 | Eleocharis kuroguwai Ohwi |
別名 | クワイヅル,イゴ,ゴヤ |
クログワイはクワイに形が似た黒褐色の塊茎ができるので,クログワイと言われます。日本、韓国の池、沼、水田といった湿地帯に発生する、カヤツリグサ科の多年生雑草です。
花茎は高さ40-80cmの緑色で断面は円形、先端までほとんど太さは変わりません。花茎の内部は中空になっていて、所々、竹のように、しきりのような壁(隔壁)が入っています。
初夏から初秋の間は,根茎を伸長させ、新株を形成しながら成長,増殖します。夏の終わりには,親株や各子株から太い根茎が伸び始め,9月中下旬から先端が肥大して新しい塊茎を形成していきます。翌年,この根塊から新芽を出して新しい株が作られ、茎葉を伸ばしていきます。
根も深く塊茎で繁殖、茎葉を伸長させるため、難防除雑草として有名です。
クログワイの特徴
クログワイは生育期が長く、断続的に根塊から繁殖していき、稲(イネ)の成長を阻害します。このため、通年にわたって厄介な雑草です。
また、他の水田雑草と比べて除草剤が効きにくい多年草のため生き残りやすく、完全に枯死、枯殺して除去するのが難しい雑草です。このため、稲作農家にとっては、難防除雑草の代名詞となっています。
クログワイとホタルイの違い
クログワイとホタルイは見た目が似ていますが、防除方法が、表層のタネから生えるホタルイは初期除草が効きやすく、クログワイは冬に耕起して塊茎を地表に出す、と異なってきます。このため、該当雑草がどっちなのか判別する必要があります。
根塊があるのがクログワイですが、引き抜く際に根塊がちぎれるケースも多く、根塊があるかどうかで判断は難しいのが実情です。
一番やりやすい方法は、茎の断面を見る方法です。
写真のように、クログワイは中に節がありますが、ホタルイはありません。クログワイの茎をつまんでなぞると、節が弾けて『プチプチッ』という音がするので、そのように確認する農家の方が多いです。
クログワイの防除方法
科学的防除(農薬による防除)
まず、稲の生育初期、つまり田植え(移植)前後に、アクト粒剤のようなクログワイに効く土壌処理剤や一発処理剤で抑えていく方法があります。
中期系はこちらおすすめです。
初期を過ぎてしまった場合は、初期剤や一発処理剤の後に使用する、中期・後期の除草剤を使うことになり、体型的に防除していく必要があります。成分ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。
クログワイは多年草なので、不十分な場合は2~3年続けて集中的に枯らす必要があります。
そして重要なことは、どの雑草も成長、繁茂してからの除草は困難であるということです。地下茎を伸ばしたり、草丈が伸長する前、できるだけ初期に除草、防除することを心がけましょう。
物理的、生物的、耕種的防除
農薬を使わずにクログワイの発生を防いだり、除草したりする方法として、多くの農家さんが色々な方法を試しています。特にクログワイは農薬に効きが良くないので、様々な防除方法を複合的に行い、統合的に防除することが大事です。
ここでは、その方法を何点か紹介しますので、興味あるものがあれば、実行してみてください。
秋期のプラウ耕によって塊茎を表層に露出させ,冬期の乾燥によって枯死させる
クログワイは塊茎の水分が30%以下になると発芽能力を失います。そして、塊茎の位置が土中深い(地下約10~20cmに60%)ため,稲刈り(収穫)後、田んぼを耕起するによって塊茎を表層部分に出して,冬期に乾燥させることで枯死させる防除は非常に有効です。1回だと取りこぼすので、複数回行うと、なお効果的です。
田植え後に軽く中干し
6月中に一度水を落とし、田んぼを軽く干すことで、還元状態(田んぼに水を張り続けて酸素が少なくなった状態)を解消すると、その後のクログワイの発生を少なくすることができると言われています。
アイガモを利用した除草
アイガモはクログワイ、コナギを含む雑草や、ウンカといった害虫を食べてくれるので、生物的防除になります。
まとめ
水田に生える雑草は、その他コナギ、イヌホタルイ、イヌビエ、イボクサ、ノビエ、コウキヤガラ、タイヌビエ、ミズガヤツリ、オモダカ、ヒルムシロ、アメリカアゼナ、キカシグサ、ウリカワ、クサネム、シズイ、ハリイ、タマガヤツリ、ミゾハコベ、タケトアゼナ、キシュウスズメノヒエ、タカサブロウ、ミソハギ、ウキヤガラ、アゼトウガラシ、タウコギ、イグサ、ゴマノハグサ、カズノコグサ、ミズハコベ、ミズワラビ、ヒメタイヌビエ、タガラシ、デンジソウ、ホタルイ、トチカガミ、ヘラオモダカなどがあります。まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、土壌処理剤、一発処理剤で防除し、生育したものに対しては後期に使える薬剤を散布する方法などで駆除をしていきましょう。何よりも早め早めに土壌処理剤でしっかり防除することで、カメムシなどの害虫の発生、病害虫による病害の発生も防ぎ、殺虫剤も減らせますし、農作業を楽にすることができます。早期発見、予防を心がけましょう。
水稲用の農薬は、日産化学やシンジェンタジャパン、三井化学、日本農薬から展開されています。
また、田んぼの肥料や、発芽・幼苗期の代かきや田植、灌水、分げつ期、穂ばらみ期など、時期、適期毎の稲の育て方を下記で詳しく説明しています。
一年生、多年生雑草対策に水田で使える除草剤について、液剤も含めて下記で概略を説明しています。
乳剤や水和剤の希釈方法や農薬の効果を高める展着剤については下記を参考ください。
また、畦畔、畑の除草などには、しっかりからせるグリホサート系(ラウンドアップ、サンフーロンなど)、グルホシネート系(バスタ、ザクサ)や刈払機がおすすめです。広範囲に散布するための噴霧機の記事も合わせてご参照ください。