ホームセンターの除草剤コーナーに行くと、目につく場所に置かれている、ラウンドアップマックスロードやバスタ といった液体除草剤(液剤)。ラウンドアップ はグリホサート、バスタはグルホシネートを含有しています。
グルホシネートとは何なのか、グリホサートとどんな違いがあるのかを解説するとともに、代表的なグルホシネート系の除草剤を紹介します。
グルホシネート とは何か?
除草剤の成分として使われる「グルホシネート 」とは、アミノ酸系の除草剤で、植物のグルタミンの生成とアンモニアの解毒に必要な酵素であるグルタミンシンテターゼを阻害します。この結果、植物を枯らしてしまいます。
このような、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して、枯らしてしまうタイプの代表的な薬剤は、グルホシネートの他に、グリホサート系、スルホニルウレア系(ベンスルフロンメチル、イマゾフルフロン、ピラゾスルフロンメチルなど多数)、非選択性接触型のアミノ酸系(ビアラホスなど)があります。
グリホシネートは、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木など、スギナやドクダミ、竹など頑固な雑草含め、ほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は速効性で効果の発現に2 ~ 5日、そして完全な効果に5日~ 20日ほどを要します。
非選択性除草剤のため、水稲が残る水田や、定植後、枯らしたくない作物が残る農地、農耕場所、菜園には向かず、農業に使用する場合は散布の際に、作物にかからないよう注意する必要があります。
グリホサートとの違い
速効性(グルホシネート)と遅行性(グリホサート )
グルホシネートとグリホサートは非選択性の除草剤(液剤)でほぼ全ての草種に有効な点は共通していますが、効果が発現する期間には差があります。
グリホサートは効果の発現に3 ~ 7日、そして完全な効果に10日~ 2カ月ほどを要しますが、グルホシネートは効果の発現に2 ~ 5日、そして完全な効果に5日~ 20日ほどで足り、グリホサートよりも速効性があります。早い効果を求める場合は、グルホシネートがより有効です。
私たちの圃場で実験してみましたが、下記のように、グルホシネートの方がより顕著に褐色化し、枯れているのがわかります。


根まで枯れるかどうか
グリホサートの大きな特徴として、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎(スギナなど)、根も含めて全体を枯らす効果があります。
これに対し、グルホシネートは速効性はあるものの、根や地下茎までは枯らし切ることはできず、また生え易いというデメリットがあります。
このため、多年生雑草など、根が地下に多い、また地下茎が発達し易い雑草が多い場所で、地下茎、根をしっかり枯らしたい場合は、グリホサート系の除草剤の方がおすすめです。
グリホサート系除草剤については、下記ページで詳しく解説していますので、ご参考ください。
グルホシネート系の代表的な除草剤
バスタ液剤 (BASFジャパン(株))
最もメジャーなグルホシネート系の除草剤(液剤)です。効果の進展はグリホサートよりも早 く、1 ~ 3日で効果が発現し、5 ~ 20日で完全な効果がでますが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死せず、雑草・草はグリホサートに比べ、再生しやすい特徴があります。
バスタは多くの作物に登録があるため、かなりの野菜、水稲、果樹で使用可能で、例えば水田の畦(畔・畦畔)やかんしょなどの畑作での作物の株間、畔間や畦道などで使用するケースが多く見られます。
このような場合、非選択性除草剤のため、農業に使用する場合は散布の際に、飛散して農作物にかからないよう注意が必要になります。本製品は、原液を希釈して薄めて、ジョウロ、ノズルや噴霧器で散布して使用します。希釈倍率は商品説明を確認するようにしてください。
ザクサ液剤 (明治製菓ファルマ(株))
ザクサ液剤は、明治製菓が除草剤開発研究において長年にわたり工業化を目指してきた、光学異性体の活性本体であるグルホシネートPナトリウム塩を有効成分としている、バスタと同様のグルホシネート系の除草剤(液剤)です。効果はバスタとほぼ同等で、農耕地での使用が可能です。こちらも原液を希釈して薄めて使用するタイプなので、希釈倍率は商品説明を確認するようにしてください。
グルホシネートの安全性について
グルホシネートは、微生物によって分解され、約半日~1日で半減するなど、グルホシネートの土壌中での分解は非常に速く、土壌、環境に優しい除草剤と言われています。
しかしながら、グルホネシートの残留物は冷凍食品に最長2年間残ることがあり、化学物質は熱湯で食品を調理しても簡単に破壊されないとの報告もなされています。(Pesticide Action Network,2008)
また、日本ではグルホシネート、グルホシネートPナトリウム塩は農薬登録されており、使用方法の規制がある中で、グリホサートの一日摂取許容量を、1mg/kg 体重/dayに対し、グルホシネートは0.0091 mg/kg 体重/day としていることから、グルホネシートのほうが人畜に対して毒性が強いと判断していると解釈できます。
また、ヨーロッパでは、除草剤としての登録が2018年に期限切れになっていることや、フランスで、2017年に食品安全、環境および労働のための国家機関によって生殖毒性化学物質(R1b)として分類されたため、現在では、グルホネシート系除草剤は市場から撤退しています。
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。グリホシネート系は、「茎葉処理剤」の液剤に該当します。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
グリホシネート系は、全ての植物に効果を発揮するので、「非選択性除草剤」に該当します。
まとめ
グルホネシート系除草剤については、安全性について多くの議論がなされていて、グリホサート以上に、安全性についての判断は国によって異なっています。議論されている部分もあれば、使用により雑草を抑えることで病害虫の出現を減らし、殺虫剤などの農薬の使用を減らすといった防除の機能もあると言えます。
グルホシネートの特性を十分に考えた上で、畑や水田、その他場所での適切な使用を心がけるようにしたいですね。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 | ゴーオン |
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概要 | |||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) | ハート(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 | グルホシネート |
農耕地使用 | ○ | ○ | ✖️ |