イタリア野菜として日本でも夏野菜として定番となったズッキーニは、見た目はキュウリに似ていますが、ウリ科のカボチャの仲間です。1株で8~10本ほど収穫でき、短期間で収穫できるので畑だけでなくプランターでも収穫できます。
ズッキーニは吸肥力が強く肥料を与えすぎるとつるボケをおこしやすいので、肥料の与え方には注意が必要です。ここではズッキーニ栽培における肥料の与え方の基本と、おすすめの肥料についてわかりやすく説明します。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
色々あって複雑ですが、最初は葉や茎活力を与えたいときは窒素(チッソ)多めの肥料を、花を咲かしたい、実の成長を促したいというときはリン酸多めの肥料を施すというイメージでやってみましょう。
肥料はどんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
有機肥料と化成肥料どちらにもメリット・デメリットがありどちらがいいというわけではありません。育てる環境によって適している肥料は異なります。それぞれの特徴にあった肥料を選ぶことが大切です。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
元肥
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
追肥
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
追肥は必要な肥料分がすぐに作物に届くように、速効性の化成肥料を使うことが一般的です。
ズッキーニに必要な肥料成分
ズッキーニにはどのような肥料成分がどれぐらい必要なのでしょうか。下記は栃木県のズッキーニの施肥基準です。10aあたり窒素とカリウムがそれぞれ20kg、りん酸12kgが目安です。窒素分を与えすぎると茎や葉ばかりが伸びるつるボケがおきるため、追肥で生育を見ながら追肥していくとよいでしょう。
施肥量(kg/10a) | 基肥 | 追肥1 | 追肥2 | 成分合計 |
---|---|---|---|---|
窒素(N) | 12 | 4 | 4 | 20 |
リン酸(P) | 12 | 12 | ||
カリウム(K) | 12 | 4 | 4 | 20 |
ズッキーニに対する肥料の与え方
それではズッキーニの肥料はいつ、どれくらいあげればいいのでしょうか。育て方によって肥料の与え方は変わるため、地植え、プランター(鉢植え)別に説明します。
地植え
元肥
ズッキーニは、株間が広く根が伸びるので、鞍つき畝を立てます。鞍つき畝とは、作物を植えつける場所に穴を掘り、そこに堆肥や肥料をいれて1株ずつに高畝を作る方法です。
- 栽培するスペース(畝)を決め、土壌phの調整が必要な場合は苦土石灰1㎡あたり100gまいて、深く耕しておきます。
- 1から2~3週間ほどたってから、1株あたり幅、長さ100cm、高さ5cmほどの畝を作ります。
- 中央に直径、深さ30cmの穴をほり、堆肥1kgを入れその上に緩効性肥料50g程度をいれ、土を戻し10㎝ほど盛り上げます。
- マルチを張り、種を直まきするか、苗を植えつけます。
土づくり
元肥は、土づくりと一緒に行いましょう。ズッキーニ栽培に適した土壌ph6.0~6.5です。日本の土壌は雨や肥料などにより酸性に傾いていることが多いので、酸性に傾いている土壌は石灰などを使い酸度調整をする必要があります。
土の酸度が高いようなら、苦土石灰で調整します。土壌酸度は、市販の土壌酸度計や土壌酸度測定液をつかって図りましょう。家庭菜園をする人は一つもっているとよいでしょう。
堆肥には、動物の糞をつかった牛糞、馬糞、豚糞、鶏糞、植物性のバーク堆肥、腐葉土などがあります。土壌の改良には牛糞、馬糞、パーク堆肥、腐葉土などがよいでしょう。鶏糞は肥料分が多くふくまれていますが、土壌改良効果は少ないです。鶏糞は肥料としてつかうのがおすすめです。
未発酵のものはガスなどがでて作物に影響を及ぼすことがあるので、完熟堆肥を使うのが安心です。未発酵のものをつかうときは植え付けの1か月前ほどに施しておくとよいでしょう。
追肥
タネを直まきした場合には、3週間後に苗を植えつけた場合は、一番果の収穫の後に追肥をします。株元に20g~30g程度の化成肥料をばらまきて土と軽く混ぜておきましょう。マルチをしている場合は、マルチの外側にばらまきます。その後は、3週間に1度生育をみて同様の追肥を行います。
プランター・鉢植え
プランター栽培の場合肥料は、元肥と追肥を行います。元肥とは植え付け時に施す肥料で、プランターなどでは、元肥入りの野菜の培養土などが便利です。肥料がはいっていない土や、自分で配合した場合は、緩効性肥料を土に混ぜて使います。
追肥は実が付いたら、2週間に1度追肥をします。化成肥料10g程度を株の周りにばらまいておきます。葉色を見て緑色が濃いようなら肥料は控えましょう。
ズッキーニ栽培におすすめの肥料
畑などでは油かすや米ぬか、鶏糞などの肥料をつかうこともできます。扱いは少し難しく、肥料効果が土の状況によって左右されるため使い方を間違えると悪臭や、害虫が発生してしまうこともあります。初心者の人には有機配合肥料や、化成肥料がおすすめです。
有機配合肥料
土壌に緩効性の有機成分と、速効性のある化学肥料を組み合わせている有機配合肥料は、使いやすいため人気があります。元肥にも追肥にも使えるのもが多く、少量のものもあるのでプランター栽培などにもおすすめです。
キュウリ・ズッキーニ・カボチャ専用肥料
アミノール化学のキュウリ・ズッキーニ・カボチャ専用肥料は、ズッキーニに必要な肥料成分が配合されているので誰でも簡単に使える肥料です。N:P:K:Mg=7:5:6:1で、動物有機と植物有機を加工して作った粒状のアミノ酸入り肥料で元肥にも追肥荷物使えます。
ハイポネックス「いろいろな野菜用粒状肥料」
ハイポネックスから販売されているアミノ酸入りの肥料もおすすめです。有機と化成(肥効機関の異なる4種類)の組合せで、すぐに効き始め安定した効果が約1〜2ヶ月間持続します。アミノ酸も含まれているので、根張りがよくなったり品質が向上します。元肥・追肥どちらでも使用することができるので、家庭菜園やプランター栽培などでも気軽に使用することができる肥料です。
マイガーデンベジフル
住友化学園芸のマイガーデンベジフルは、粒状で様々な野菜やくだものの元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得しています。土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが特徴です。N:P:K:Mg=7:7:10:1.5で効果が3ヵ月続きます。マイガーデンベジフルには液体肥料もあります。
化成肥料(固形)
化成肥料8-8-8
元肥には有機肥料がおすすめですが、プランターなどでベランダで育てる人には臭いや虫が気になる人もいるでしょう。その場合は化成肥料を使いましょう。また実がついた後の追肥にはすぐ効く化成肥料がおすすめです。
化成肥料は、不足している栄養素を補うために行うため、土によって与える肥料は異なりますが、家庭菜園などでは、N-P-K=8-8-8など窒素とリン酸・カリウムが同量含まれている肥料などは、ほとんどの野菜に使えるので便利です。
花ごころ グリーンそだちEX IBのチカラ
花ごころの「IBのチカラ グリーンそだちEX」は、花にも野菜にも使用できる肥料です。N-P-K=10-10-10であり、バランス良く配合されています。花ごころは、バラや花に効く肥料を中心に様々な商品を販売しています。
IBとは、イソブチルアルデヒド縮合尿素(IBDU)を配合した肥料のことで、とてもゆっくり溶け、流れ出るため植物の根に優しく、肥料成分が無駄なく吸収される特性があります。
無臭で、3つの成分をバランスよく配合した緩効性肥料で野菜や花にも幅広く使える肥料です。
液体肥料
水を好むバジルには、水やり代わりに使える液体肥料もおすすめです。
ハイポネックス原液
液体肥料(液肥)国内トップシェアを誇るハイポネックスの定番液体肥料です。ハイポネックス原液は、「三大要素(窒素、リン酸、 カリ)」の他、マグネシウムやカルシウムなどの「二次要素(多量要素)」、さらに鉄をはじめとした「微量要素」を含む15種類の栄養素を最適のバランスで配合された液体肥料(液肥)で、水で薄めて使います。
この他にもハイポネックスには、「野菜の液肥」や「今日から野菜 野菜を育てる液肥」もあります。こちらは有機入りなので野菜の追肥におすすめです。
万田アミノアルファプラス
根強い人気がある商品として万田発酵の「万田アミノアルファプラス」という液体肥料があります。万田酵素は皆さん聞き覚えのある商品名だと思いますが、「万田アミノアルファプラス」はその万田酵素を開発する過程で培ったノウハウを活かして製造されたものになります。果実類、根菜類、穀類、海藻類など数十種類の植物性原材料を発酵させたものと、有機質を主体とした液肥を配合した肥料です。希釈タイプやそのまま散布できるストレートタイプもあります。
防ぎたい!肥料にまつわるトラブルあれこれ
肥料の過不足
ズッキーニでは肥料が不足すると果形が曲がり果になったり、収穫が進むと実がつかないこともあります。しかし肥料が過多になれば根を傷めたり、ツルぼけをおこします。ズッキーニの肥料は元肥は控えて、実がついてからは追肥を続けて行うことがポイントです。
正しい時期に、適量を与えましょう。肥料のパッケージをよく読んで使い方を間違えないことも大切です。
肥料は生育に合わせて与えるのが基本です。育てている土壌によっても必要な肥料量は変わります。葉色が薄くなると肥料ぎれ、葉が濃い緑色になり葉や茎が大きくなりすぎたら肥料過多です。よく観察して、肥料を与えるようにしましょう。
肥料は絶対混ぜないで!
よくある失敗として、いろいろな肥料を混ぜて高い栄養素の肥料を作り与えようとしてしまうことが挙げられます。肥料を混ぜると化学反応を起こし、植物自体に被害が出るだけでなく、有害物質・ガスが発生したりと、大きな事故につながる危険性があります。くれぐれも、肥料同士を原液で混ぜることはしないでください。
まとめ
ズッキーニは、別名「つるなしかぼちゃ」とも呼ばれるようにツルが伸びないので、支柱立ても不要で、プランターでも育てやすい野菜です。かぼちゃのように人工受粉しなくても、実がつきます。日本では歴史の浅いズッキーニですが、イタリア料理やフランス料理などに使われます。黄色い品種や卵型のものなどの変わった品種や、高級食材の雌花の子房ごと切り取った花ズッキーニを食べれるのも家庭菜園ならではです。
苗からなら栽培も簡単です。数株でも十分収穫が楽しめるので、ぜひズッキーニの栽培を始めてみましょう。
この他にも、農家webには野菜の肥料の記事や栽培の記事がたくさんあります。
検索バーからもつくりたい野菜や果樹、花などを検索することもできます。