この記事では、自然由来で安心安全な肥料として注目されている海藻資材・海藻肥料の基礎知識・成分、効果・メリット、簡単な使い方などをご紹介します。
海藻・海藻肥料の基礎知識
海藻は、「海の藻」と書くとおり、海に生える藻の総称です。コンブ(昆布)、ヒジキ、モズク、ワカメはもちろん、アオノリ、アオサなども海藻です。ちなみに海藻と海草(かいそう・うみくさ)は全く別物で、海草は種子植物でありアマモやウミヒルモなどがあります。
日本や世界の沿岸で古くから肥料として利用されてきました。海岸に打ち上げられたコンブ(昆布)やオゴノリ、ホンダワラなどを畑へと撒き、作物の肥料にするのです。このように、海藻を肥料として用いた場合や、原料とした場合に海藻肥料とよびます。
海藻肥料は、日本よりも世界で盛んに用いられてきた理由として、以下の2つが考えられます。
- 日本には海藻を食べる文化があり肥料以外の用途があったこと
- 世界(特にヨーロッパ)では酸性土壌の改良の用途で使わることも多かったこと
ヨーロッパでは、ローマ時代にはすでに海藻肥料が用いられていた記録が残っているというから驚きです。
現代の日本では、海藻は肥料取締法の定めにより、褐藻やクロレラなどの藻とともに「特殊肥料」として分類されています(特殊肥料とは、魚かす、米ぬか、草木灰、グアノ、堆肥のように肥料含有量のみに依存せずその価値が認められ、農林水産大臣が指定したものです)。
また近年では、作物に対する非生物的なストレスを軽減する「バイオスティミュラント」という資材カテゴリーが再編されてきており、その一翼を担うものとして海藻肥料にも熱視線が注がれています。
海藻肥料の成分と効果・メリット
海藻肥料に含まれる栄養成分と効果・メリットをご紹介します。海藻は、陸上の植物にはない特有の有機物や酵素を持っています。海藻と一口に言っても、その種類はさまざまですので、目安としてとらえるようにしてください。
ミネラル
植物の生育には、チッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリ(カリウム)が欠かせませんが、その他の微量要素も重要です。海藻には多くのミネラルが含まれており、これが微量要素として重要な働きをします。具体的には、カルシウム、マグネシウム、硫黄、マンガン、亜鉛、鉄、銅、ナトリウム、ヨウ素、ホウ素、コバルト、バナジウム、ゲルマニウム、モリブデン、ニッケル、塩素など豊富に含有されています。
アミノ酸
植物は、多量要素や微量要素のほかにも、アミノ酸を直接吸収することができます。直接吸収されるアミノ酸は、そのままの形で代謝に利用されたり、タンパク質に合成されたりすることで、植物体が健全に生育することにつながっていると考えられています。
具体的には、グルタミン酸、アスパラギン酸、バリン、ロイシン、イソロイシン、ブロリン、アルギニン、リジン、メチオニン、セリン、ヒスチジン、スレオニン、フェニルアラニン、アラニン、チロシン、グリシン、トリプトファンなど豊富に含有されています。
多糖類
アルギン酸、フコイダン、ラミナリンなどの多糖類が、植物のエネルギー源として利用されます。また、アルギン酸、フコイダン、ラミナリンは海藻のネバネバ成分でもあるので、土壌の団粒構造の形成が促進される。団粒構造が形成されると、保水および透水性が改善され、土の活力が向上します。
また、土壌の微生物のエサとなることで、土壌の活性や環境を整えることにつながり有機物の分解が進んだり、土中の微生物のバランスが良くなります。
植物ホルモン
植物の成長に欠かせないホルモンであるオーキシン、サイトカイニン、ジベレリンなどが海藻に多く含まれており、これらが作物に与える好影響にも注目が集まっています。根の発達や光合成の促進への効果が認められています。
海藻肥料の使い方
現在、日本で販売されている海藻肥料には2つの形状があります。
固形の海藻肥料は、主に堆肥などと同じく、畑の土作りの元肥として使われます。先述したとおり、土中の微生物を増やすしたり、ミネラル分を補ってくれるだけではなく土壌の物理性が良くなります。追肥として使うこともできる粉末肥料もあるので、その肥料の使用方法や使用目安量を確認してください。
液体の海藻肥料は、主に植物の樹勢を強めたり土壌の環境を整えたいときに使われます。液体の海藻肥料は、希釈して土壌や葉面に散布します。葉面散布するときには、葉面散布ができるものか確認した上で使用しましょう。下の記事に液体肥料の使用方法や希釈の考え方、葉面散布の注意点が書いてあるので確認してみてください。
海藻肥料の作り方
海藻を肥料として使用する場合、海で採取した海藻をそのまま畑に投入したり、海藻を乾燥させた後に畑に投入したり、といったイメージをもたれるかもしれません。確かにそういった取り組みもありますが、全体からすると少数で、海藻の種類や量などノウハウも体系化されていないというのが実情です。なかには、堆肥などと混ぜ発酵させることで、ぼかし肥料として利用している人もいるようです。
海藻肥料の愛用者のほとんどは、製品として販売されているものを利用しています。液体(エキスなど)、固形(粉末、ペレットなど)の状態になっていて、使用方法も明確なので、ぜひ利用してみましょう。
おすすめの海藻肥料 5選
海藻肥料には、海藻そのものであったり、抽出した栄養分入りのもの等さまざまなタイプがあります。当然のことながら製品によって原料や生産地が異なります。ここでは、安心安全に使えるおすすめの製品をご紹介します。
バイオ・グリーン ミネラルこんぶ
有機栽培に最適なぼかし海藻(完全熟成)です。基礎地力づくりに不可欠な肥料です。
海藻のエキス
アンデス貿易が輸入販売するノルウェー産の海藻粉末です。原料にはノルウェーで採取された「アスコフィルム・ノドサム」という海藻を使用しており、豊富な栄養分を蓄積しているという特徴があります。
水に溶かして、溶液として葉面散布もしくは潅水に利用します。カンキツ類、ブドウなどをはじめとする果樹類での使用が定番ですが、イチゴ、メロン、トマト、ホウレンソウなどの野菜や稲に対しても有効です。
リコー農研 海藻粉末肥料
様々な有機資材を扱っているリコー農研の粉末の海藻肥料です。使い方なども丁寧に説明されており、不明な点があれば問い合わせをすることも可能となっています。初めての方には少ない内容量のものから使ってみると良いかもしれません。
ケルパック66
ロイヤルインダストリーズが輸入販売する有機JAS適合の海藻エキスです。南アフリカ産の巨大海藻「エクロニア・マキシマ」から抽出した100%濃縮エキスを3,000~5,000倍に希釈して、葉面散布します。「エクロニア・マキシマ」が海中で繁茂する様子は生命力にあふれており、養分が豊富に貯蔵されているというのもうなずけます。
カンキツ類、ブドウなどをはじめとする果樹類での使用が定番ですが、イチゴ、メロン、トマト、ホウレンソウなどの野菜や稲に対しても有効です。日本国内でも40年販売されている実績があります。
モーニングエース
アグロカネショウが製造販売する海藻エキスを含んだ液肥です。ビタミンやアミノ酸がバランスよく配合されており、作物の糖度や食味など品質、樹勢の向上が期待できます。液肥なので、500~600倍に希釈して散布します。カンキツ類、ブドウなどをはじめとする果樹類での使用が想定されています。
海藻肥料を購入したいときには?
ホームセンターなど店舗で購入する
上記で紹介した海藻肥料は、コメリなどのホームセンターでも販売されている場合があります。しかし、特殊肥料は店舗よっては販売されていないことも多くあります。
通販で購入する
店舗で実物をみて購入することも良いことですが、「その店舗での取り扱いがない」ことや「そもそもその商品がホームセンターなどの小売店で販売されていない」ことも多いです。時間とお金を節約するため、積極的に通販(インターネットショッピング)を利用しましょう。今ではAmazonや楽天市場など様々なECサイトで農業・園芸用品が取り扱われています。店舗よりも安く購入できる場合も多いですので、一度のぞいてみましょう。