ホームセンターの除草剤コーナーに行くと、一番目につく場所に置かれている、ラウンドアップマックスロードやサンフーロンといった、液剤の除草剤。主な成分はグリホサートと呼ばれる除草剤です。
ここでは、アイリスオーヤマ(iris-ohyama)が販売する主なグリホサート系の「速効除草剤」をご紹介するとともに、そもそもグリホサートとは何なのか、どんな効果、特長があるのか、薬害、安全性はどうかについても解説していきたいと思います。
アイリスオーヤマの除草剤とは?
アイリスオーヤマは、「家庭用アミノ酸系除草剤」、「速効除草剤」、「超速効天然除草剤」の3種類を展開しています。このうち、「家庭用アミノ酸系除草剤」、「速効除草剤」がグリホサート系の除草剤になります。
グリホサートとは何か? その効果は?
除草剤の成分として使われる「グリホサート 」とは、主にグリホサートイソプロピルアミン塩、グリホサートカリウム塩のことを指し、アミノ酸である“グリシン”と“リン酸”の誘導体です。
グリホサートは、植物体内での5-エノールピルビルシキミ酸-3-リン酸の合成を阻害し、植物固有のアミノ酸を含むタンパク質や代謝産物の合成をできないようにします。この結果、植物を枯らしてしまいます。
このような、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して、枯らしてしまうタイプの代表的な薬剤は、グリホサート系の他に、スルホニルウレア系(ベンスルフロンメチル、イマゾフルフロン、ピラゾスルフロンメチルなど多数)、非選択性接触型のアミノ酸系(グルホシネート、ビアラホスなど)があります。
グリホサートは、イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木、イシクラゲ、苔などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~ 7日、そして完全な効果に10日~ 2カ月ほどを要します。
グリホサートの大きな特徴としては、(茎葉)吸収移行型のため、葉だけでなく、接触した植物の地下茎(スギナなど)、根も含めて全体を枯らす効果があります。このため、水稲が残る水田や根を残したい田んぼの畦(畔、畦畔)や傾斜地には向きません。非選択性(どんな植物にも効く)のため、作付けや植付け時の場合など、散布の際に、作物にかからないよう注意する必要があります。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV8 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
「家庭用アミノ酸系除草剤」
「家庭用アミノ酸系除草剤」の成分は、グリホサートイソプロピルアミン塩(イソプロピルアンモニウム=N-(ホスホノメチル)グリシナート)で、グリホサート系除草剤になります。
昔のラウンドアップのジェネリック薬品であるサンフーロンと同成分なので安心して使うことができるでしょう。
注意したい点は、農林水産省の登録がないため、農耕地での栽培・管理には法律上使用することができない点です。このため、使用できる場所が、例えば、宅地、庭、通路や空き地、公園といった敷地に限られます。

「農耕地」とは、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔などが当てはまります!
「(補足)除草剤あれこれ」に詳しく記載しているので、チェックしてみて下さい。

具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
また、農薬登録されているものでも、「作物名」が「 樹木 等」になっている除草剤は注意が必要です。なぜなら、「作物名」が「樹木等」に限られている除草剤は、適用場所が「公園、庭園、堤とう、駐車場、道路、運動場、宅地など」に限られ、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔にも使用することはできないのです。このため、「樹木等」に限定されている除草剤も、非農耕地用になります。
「速効除草剤」
「速効除草剤」の最大の特徴は、スギナ等の広葉雑草に効果の高い、速効性のある「MCP イソプロピルアミン塩」がグリホサートイソプロピルアミン塩に加えて配合していることです。
このため、効果は、グリホサートのみに比べ、効き目が速く、2~3日で効果が現われ、1週間でねん曲(しおれた状態)、枯死します。
こちらの商品も農林水産省の登録がないため、農耕地での栽培・管理には法律上使用することができない点に注意しましょう。
「超速効天然除草剤」
「超速効天然除草剤」の成分は、塩化カルシウム、界面活性剤、防腐剤です。界面活性剤が葉の表面もワックスを溶かし、成分を植物内に浸透させることで非常に早く雑草を枯らせることができます。
こちらの商品も農林水産省の登録がないため、農耕地での栽培・管理には法律上使用することができない点に注意しましょう。
アイリスオーヤマの除草剤の使い方
主な使い方
原液の場合は、希釈して薄めて噴霧器やジョウロで、雑草の生育期に茎葉に散布します。使用薬量と希釈水量は、ラベルの裏に細かい使用薬量と希釈水量が書かれていますので、ぜひご参考にしてください。
希釈については、下記を参考にしてみてください。
多年草(翌年も生える雑草)のスギナなど、特に強雑草と呼ばれるがんこな雑草、ササ類、雑かん木には、20~50倍液に希釈して散布することをおすすめします。どの雑草に対して使用するかで、うすめる濃度を変えていきましょう。
また、竹や木などは、ドリルで穴を開けて、原液を注入するのが効果的です。この場合、目安としては、竹一本に対して原液10mlです。また、雑草によって、早春、盛夏、晩秋の時期に散布すればいいのか、根元がいいのか葉がいいのかは変わってきます。
ストレートのものは希釈せず、ボトルそのままお使いいただけます。
除草剤の効果を高める方法
展着剤の活用
展着剤は薬液の濡れ性、付着性、拡展性、懸垂性などを強化し、薬液を均一に付着させる効果を持っています。除草剤用の展着剤では、サーファクタントWK、サーファクタント30、クサリノー、バスファテンが有名です。
商品名 | サーファクタントWK、30 | クサリノー |
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概要 | ||
タイプ | アジュバント (除草剤) | アジュバント (除草剤) |
補足 | クチクラワックスを溶解して表皮細胞中へ農薬を浸透させる。 グリホサート系、グルホシネート系除草剤だけでなく、芝生に使うMCPPなどの選択制除草剤の効果も高める。また、土壌処理型除草剤の葉面吸収も促進させる等、かなりの種類の除草剤で使用可能。 | ジクワット、パラコート、プログリックスLなどのカチオン型茎葉処理剤に適合し、効果を高める (アルソープ30も同様の効果) |
製造、販売元 | 丸和バイオケミカル | 日本農薬 |
除草剤用の展着剤の特長や使い方は、下記に詳しく解説していますので、是非ご参考ください。
尿素の活用
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。
効果的なノズルの活用
最近では、ラウンドアップを販売している日産化学株式会社から、従来よりも少量の除草剤で効果を維持して散布できる「ラウンドノズルULV5」というノズルや、同様の形状の「セフティ3 除草用 ラウンドノズル25」が開発されました。
こちらはわずか5Lの水量で10a散布することができるノズルで、圧倒的な小水量で散布を行うことができ、少ない散布量で済むため、作業時間の大幅な短縮になる優れものです。
こちらの商品は使用したい噴霧機に合うものを選ぶ必要があります。詳しくは下記を参考にしてください。
ラウンドノズルULV5 バッテリー・人力用 噴霧機メーカー別 推奨機種一覧表
グリホサート系除草剤は、雨が降っても大丈夫?
グリホサートのような「茎葉処理剤」は、散布された薬剤に接触した部分の植物組織だけを枯らします。このため、散布後すぐに雨が降ると、雑草に付着した薬液を流すため、効果がなくなることがあります。散布後すぐに雨が降りそうな天気予報のときは、散布を避けましょう。
目安としては、「散布後、6時間過ぎた後」 であれば雨の影響を受けなくなり、効果は持続します。
また、朝露が多い、雨上がりなど、葉についた薬液がこぼれ落ちるような場合も効果が薄れることがあります。早朝や雨上がりも避けた方がいいでしょう。
しかしながら、最近のグリホサート系除草剤は、雨に強くなった商品も多く出ています。グリホサートカリウム塩は、従前のグリホサートイソプロピルアミン塩よりも雨に強く、また、界面活性剤の改良や活性成分の吸収力、移行、即効力が大幅に改善して、「散布後、1時間経てば雨が降っても大丈夫」と進化している除草剤もあります。
グリホサートカリウム塩で、散布後1時間経てば雨が降っても大丈夫な除草剤の商品名は
- ラウンドアップマックスロード (AL,ALii,ALiii)
- タッチダウンiQ
- カダン 除草王 ザッソージエース
があります。
グリホサートの安全性について
グリホサートが危険であるという具体的な主張の内容
近年、グリホサートの安全性、薬害について、様々なシーンで議論がなされています。主には、グリホサートが恐らく発がん性物質であり、ヒトの健康を害するものであるという主張、また内分泌かく乱物質であるという主張、またヒトの母乳や尿中に蓄積して、腎臓などに障害を及ぼすと言う主張、更にはグリホサートを主成分とする除草剤に含まれる界面活性剤に予期しない毒性があるという主張です。
グリホサートが発がん性物質という主張について
2015 年、IARC (国際がん研究機関)はグリホサートを検証する委員会を開催し、既発表の論文を部分的に検証したIARC(国際がん研究機関)は、グリホサートを「クラス 2A」すなわち「ヒトに対して恐らく発がん性がある」に分類しました。(IARC, 2015)
これに加え、学校の校庭整備の業務で使用したラウンドアップが要因で、悪性リンパ腫を発症した、と主張した末期がん患者との裁判で、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ市の陪審は2018年8月10日、ラウンドアップ 販売会社のモンサントに、損害賠償金2億8,900万ドル(約320億円)の支払いを命じました。
しかしながら、本件は、モンサントを買収したバイエルが、ラウンドアップ の責任、不正行為は認めることはないまま、和解を成立させています。
現在では、アメリカ合衆国、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、欧州連合(EU)では、それぞれ「ヒトの発がんリスクの可能性は低い」「ヒトにおけるグリホサートばく露及び発がんとの関連に確証的なエビデンスはない」「グリホサートはヒトに発がんリスクをもたらさない」と結論づけていますし、米環境保護庁(EPA)は、除草剤に用いられているグリホサートに「発がんのおそれがある」と表示することを禁止するガイダンスを発布しています。
また、日本でラウンドアップ を販売している日産化学工業も、グリホサートに発がん性は無いと判断している声明を発表し、内閣府食品安全委員会も、発がん性・遺伝毒性は認められなかったと結論を出しています。
他のリスクの主張について
他のリスクの主張についても、米環境保護庁(EPA)は、グリホサートは内分泌かく乱物質ではない、また、検知可能な量のグリホサートが残留していても健康上の懸念とならないこと、母乳には蓄積しないこと、ヒトの腎臓などに障害を及ぼさないことを述べています。
また、グリホサート 系除草剤に含まれている界面活性剤については、グリホサートを含む除草剤及びこれに含まれる界面活性剤について、生態毒性のリスク評価を実施し、水生生息地以外の野生生物に重大なリスクとならないとの結論を出しています。(モンサント 2016年7月)
さらに、メーカーのHPで、土に落ちたラウンドアップの成分は、処理後1時間以内のごく短時間で、土中の土の粒子に吸着し、その後微生物により自然物に分解され、約3~21日で半減、やがて消失すると記載されています。
まとめ
アイリス オーヤマ(irisohyama)の除草剤は、お近くのホームセンター(コーナン、コメリ、ホームプラザナフコ、arclandなど)のガーデニング・園芸コーナーや、ECサイトでお気軽に購入できます。リーズナブルな商品で様々な容量のもの、またスプレーもあります。非選択制なのでスギナやセイタカアワダチソウ、スベリヒユやヒメジョオン、ドクダミ、メヒシバ、オヒシバなど様々な雑草に効果を発揮します。お庭や空き地でぜひ使って、日頃の草取り、草刈りから解放されてください。
(補足)除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
グリホサート系は、「茎葉処理剤」の液剤に該当します。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
グリホサート系は、全ての植物に効果を発揮するので、「非選択性除草剤」に該当します。
グリホサート以外の液剤として、代表的なのは、グルホシネート系(バスタ、ザクサ、ゴーオンなど)があります。こちらについては下記をご参考ください。
除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。





また、農家webでは、除草剤以外の農薬、殺虫剤や殺菌剤のコンテンツもたくさんあるので、興味ある方は是非参考にしてみてください!