除草剤を霧吹きやジョウロで散布したり撒いたりできる広さには限界があります。噴霧器を使うと、広範囲に楽に散布することができるのはもちろん、均一に散布できるというメリットもあります。
ここでは、用途やタイプ毎に、おすすめの噴霧器をご紹介します。
噴霧器とは?
噴霧器とは「水や薬液を霧のように高圧噴射するための器具」で、スプレイヤーとも呼ばれます。
大まかなタイプとしては、ガソリンや電気を使わず、手動で行う「手動式噴霧器」、電池や充電式バッテリー、コンセントからの電気で動く「電動式噴霧器」、そしてガソリンで動く「ガソリン式噴霧器」があります。
そして農業界では、手動ではない「電動式噴霧器」「ガソリン式噴霧器」を「動力噴霧器(通称:動噴(どうふん))」と呼んでいます。特に「ガソリン式噴霧器」を動噴と呼んでいるケースが多いです。
噴霧器のタイプ
手動式噴霧器
手動式噴霧器は、ハンドルやレバーを上下に動かすことで加圧しながら噴霧することができる機械で、主に背負式のものと、肩掛けのものがあります。
メリットは、電池やガソリンを使用しないため気軽で経済的であること、安価なこと、デメリットは噴霧するために都度加圧しなければならないことです。除草範囲が広いと、ポンプに蓄圧するのが大変になります。
使いやすいおすすめの手動式噴霧器をご紹介します。
背負式手動噴霧器 グランドマスター RW-15DX(RW-15DX-AAA-0)
エンジンポンプ部門で世界1位を誇る、京都に本社を置く非常に優れたメーカー工進(koshin)の、手動式噴霧器です。
片手で加圧と噴霧が簡単に行える仕様になっていて、背当てパッドなどの工夫で長時間背負いやすくなっています。
機種 | RW-15DX |
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タンク容量 | 15L |
ポンプ形式 | ダイヤフラムポンプ |
最高圧力 | 締め切り時:0.4MPa(4kgf/cm2) |
噴口 | 縦型二頭口噴口 |
噴霧量 | 縦型二頭口噴口:0.7リットル/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 366×247×537mm |
本体重量 | 3.7kg |
市場価格目安 | 約12,000円 |
また家庭菜園や、ベランダ、庭のガーデニング用で、10Lの容量もいらない方には、(株)フルプラ(FURUPLA)の「ダイヤスプレープレッシャー式単頭式」は、4Lと小型なものもあるので、おすすめです。小型の方がポータブルで器用に取り回せます。
また同じ小型のもので、トラスコ中山(TRUSCO)の、「TRUSCO 蓄圧式噴霧器 4L」もあります。こちらは過剰な圧力を外部に自動的に放出する安全弁装置付、レバーをロックすれば連続噴射が可能な肩掛け式の噴霧器です。
このジャンルは、その他、丸山製作所、アイリスオーヤマ、共立の商品があります。
電動式噴霧器
電動式噴霧器は、その名の通り、電気の力でモーターを駆動させ、ノズルから噴霧する機械です。手動式と比べハンドル等を動かして蓄圧する必要がないため、楽に散布することができます。
また、電動式はガソリン式に比べて駆動音が静かです。さらに排ガスを出さないのでエコで、ハウス内で散布するときに安心して使用できます。
電動式の噴霧器には、電池で動くタイプ、リチウムイオンバッテリーで動くタイプ、そしてコンセントから電気を供給して動くタイプの3タイプがあります。ここでは、それぞれのタイプごとにおすすめの噴霧機をご紹介します。
(電池タイプ)工進 乾電池式噴霧器 除草名人 JS-10
工進(koshin)の、単一乾電池4本で駆動する電動式噴霧器です。単一乾電池4本で約6時間動き、タンク50杯散布することができます。また、散布量と散布幅をノズル(噴口)や噴板で楽に調節することができるのが特長です。
機種 | JS-10 |
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タンク容量 | 10L(リットル) |
ポンプ形式 | インペラーポンプ |
最高圧力 | 締め切り時:0.015MPa(0.15kgf/cm2) |
噴口 | ー |
噴霧量 | 0.7〜2.0L(リットル)/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 290×140×500mm |
本体重量 | 3.6kg(電池含む) |
市場価格目安 | 約13,000円 |
(バッテリータイプ)マキタ 14.4V 充電式噴霧器 MUS153DZ
マキタ(makita)は世界有数の電動式工具メーカです。充電式バッテリーを軸にたくさんの電動工具を展開しています。そのラインナップの一つがこちらの商品です。
この噴霧器はバッテリーが軽量なため、タンク1.5Lの割に比較的軽量です。またなんといっても、充電することで繰り返し利用することができる点が特長です。
機種 | MUS153DZ |
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タンク容量 | 15L(リットル) |
ポンプ形式 | セラミックギヤ式 |
最高圧力 | 0.3MPa |
噴口 | ー |
噴霧量 | 0.8〜1.3L(リットル)/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 345×235×525mm |
本体重量 | 4.0kg(バッテリ含む) |
市場価格目安 | 約30,000円 |
このジャンルはハイガー産業はじめ、高儀 EARTH MANなど様々なメーカーの商品があります。
(コンセントタイプ)工進 GT-10V
こちらはコンセントに挿して使用するタイプの噴霧器です。作業場所にコンセントがある場合は、バッテリーの充電などの手間がかからない、コンセント式の噴霧器もおすすめです。
機種 | GT-10V |
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タンク容量 | 10L(リットル) |
ポンプ形式 | ギヤポンプ |
最高圧力 | 0.26MPa |
噴口 | 二頭口噴口(一頭口噴口) |
噴霧量 | 0.45〜0.74L(リットル)/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 405×220×400mm |
本体重量 | 2.2kg |
市場価格目安 | 約13,000円 |
ガソリン式噴霧器
ガソリン式噴霧器の特徴は何といってもパワフルなことです。大きな圃場など、広範囲に除草剤を散布するときに使用します。ガソリン式噴霧器は農業用に使用され、動噴(動力噴霧器)とよく呼ばれ、セット台にエンジンやモーターなどの動力とポンプを搭載した噴霧器を「セット動噴」と呼んでいます。
除草に噴霧器(散布機)を使用する場合は、この「セット動噴」がマッチするかと思います。広範囲に除草剤を散布しないといけないけど、背負い式はきつい、といった方にうってつけです。
ここではおすすめの「セット動噴」をご紹介します。
機種 | MS-ERH50 |
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タンク容量 | ー |
ポンプ形式 | ピストンポンプ |
最高圧力 | 3.0MPa |
噴口 | ー |
噴霧量 | 1.0〜2.9L(リットル)/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 650×350×400mm |
本体重量 | 18.0kg |
市場価格目安 | 約90,000円 |
噴霧器 ノズル(噴口)について
動噴(動力噴霧器)にはノズル(噴口)が付いていないので、用途に合わせたノズルを部品購入する必要があります。ここでは、簡単に、除草剤の散布に使用するノズル(噴口)の種類と用途について説明します。
ノズル(噴口)は本当に多くの種類がありますが、除草剤の散布使用に適しているのは、一般的な「単頭ノズル」、または広範囲での散布には「2頭などの複数口のノズル」になります。水圧が強い「鉄砲型」と呼ばれるノズルは除草剤の散布には適さないケースが多いです。
除草剤の散布におすすめのノズルは、単頭ノズルだと、下記のような「セフティー3 SJN-1 噴霧器用除草剤ノズル」のようなシンプルなものから、「セフティ3 動噴用噴口 キリナシ1頭口」のような除草剤専用ノズルで薬液を泡状にして散布するノズルや扇状に散水するもの、伸縮の仕組みが異なる様々なものがあります。
また、ラウンドアップを販売している日産化学株式会社から、従来よりも少量の除草剤で効果を維持して散布できる「ラウンドノズルULV5」というノズルや同様の形状の「セフティ3 除草用 ラウンドノズル25」もありますので参考にしてみてください。
こちらの商品は使用したい噴霧器に合うものを選ぶ必要があります。詳しくは下記を参考にしてください。
ラウンドノズルULV5 動力用 噴霧機メーカー別 推奨機種一覧表
ラウンドノズルULV5 バッテリー・人力用 噴霧機メーカー別 推奨機種一覧表
用途別 おすすめ噴霧器
家庭菜園で使用
家庭菜園で使用する場合は、広さが5a(アール)以上でもない限り、大型の噴霧器は必要ありません。下記のような小型のスプレイヤーがおすすめです。
5a(アール)を越える場合は、下記のような手動式噴霧器か、手動が面倒な場合は、電池式の電動噴霧器を使用するのが良いでしょう。
圃場で使用
圃場で使用する場合は、散布したい圃場の広さによって、おすすめの噴霧器が違ってきます。ケースバイケースですが、50a(アール)未満であれば、背負い型の手動式や電動式で大丈夫ですが、50a(アール)を超える範囲に散布したい場合、また背負い式での長時間の作業が大変な場合は、下記のような動噴(動力噴霧器)を導入するのがおすすめです。
まとめ
除草剤の散布におすすめの噴霧器(散布機)について、タイプとおすすめの噴霧器を紹介しました。今回は除草に特化しておすすめ商品をご紹介しましたが、噴霧器は、農作業においては、害虫の殺虫のための農薬の散布や消毒、散水など、ノズルを変えることで、さまざまな用途に使うことができます。
初めての噴霧器選びの参考になれば幸いです。
(補足)除草剤あれこれ
農耕地で使用できるものとできないものがあります
ラウンドアップやサンフーロン、バスタは、畑作や果樹園などの田畑、農耕地で使用することができますが、グリホエースなど、グリホサート系除草剤でも農耕地で使用できないものもあるので、使用の際は必ず確認するようにしましょう。

具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。また、展着剤を使って効果を上げる方法もあります。
除草剤の希釈方法について
液体の原液の除草剤や液肥、薬剤は、水で希釈して薄めて使用する必要があります。下記では、展着剤、乳剤、水和剤などの希釈方法や、面倒な希釈倍率、水量、液量の計算を楽にする方法を説明しています。
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。




また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。




除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。




雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。