そもそも肥料とは、どのようなものを指すのでしょうか。ガーデニングや園芸などを楽しんでいる方は、「肥料」という言葉は聞いたことがあると思いますが、なぜ肥料が必要で、どのような肥料が適しているのかなど、詳しいところまではわからないという方もいると思います。
農家webでは、肥料の基礎知識(種類や性質など)や使いやすい肥料の商品・シリーズの紹介、作物別・栽培方法別の肥料のやり方の解説まで幅広く記事があります。下記にそれぞれの目的別に記事をまとめていますので、必要な情報を手に入れてください。
肥料は植物・作物を育てる上で欠かせない!
そもそも、「肥料」は何を指しているのでしょうか。
肥料の定義は肥料取締法で決まっています。肥料は土壌に科学的変化をもたらし、植物が健全に育つように土地に施されるものを言います。つまり、農作物(植物)の健全な生育に欠かせない栄養を与えるものです。
農作物(植物)が育つためには窒素やリン酸、カリウムの三大要素のほか、微量要素などが必要です。大雑把にはなりますが、窒素(N)は葉肥(はごえ)、リン酸(P)は実肥(みごえ)、カリ(K)は根肥(ねごえ)と呼ばれています。肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示はこれらを指しています。
植物は土に根を張り、それらの養分を吸い上げて成長しています。そのため、土壌中の栄養分は植物が吸い上げることにより、どんどん乏しくなっていきます。それを補うために土壌に肥料を施すことを「施肥」と言います。
つまり、人間が意図的に作物を栽培したり、植物を育てたりしている環境下では、肥料を散布して土壌中の栄養分を補給しなければ、やがて作物・植物は生長できなくなり、枯れることになります。そのため、肥料は植物を栽培、生長させる上で必要不可欠のものなのです。
植物が育つために必要な三大栄養素(三要素)は窒素(チッソ)、リン酸(リンサン)、カリウム(カリ・加里)です。まずはこの三要素と中量要素、微量要素について、おさらいしましょう。
窒素(チッソ)とは
窒素(N)は、肥料の三要素の一つで植物の生育に最も大きく影響する要素です。光合成に必要な葉緑素、植物の体を形作るタンパク質など、植物が生長する上で重要な働きをする物質となります。窒素肥料は「葉肥(はごえ)」とも呼ばれ、生育の初期に効果的であり、茎と葉の生長に大きく影響します。
リン酸(リンサン)とは
リン酸(P)は、肥料の三要素の一つで植物の遺伝情報の伝達やタンパク質の合成などを担う核酸の重要な構成成分となります。施肥を考える上では、「実肥」と呼ばれ、開花・結実を促すためにリン酸が必要となります。また、植物全体の生育や分げつ、枝分かれ、根の伸長など様々な要素に関わっています。
カリウム(加里・カリ)とは
カリウム(K、加里)は、肥料の三要素の一つで植物体内でカリウムイオンとして存在しています。カリウムイオンは葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促したり、植物を丈夫にして病気などに対する抵抗力を高める働きがあります。そのため、カリウム肥料は「根肥(ねごえ)」と呼ばれます。
その他の中量要素
窒素、リン酸、カリウムの三要素以外の中量要素として、カルシウム(Ca)、硫黄(S)、マグネシウム(Mg)があります。
要素名 | 主な役割 |
---|---|
カルシウム(石灰・Ca) | 葉や実の組織を作る(細胞膜の生成と強化)、根の生育促進 |
硫黄(S) | 酸化・還元・生長の調整などの植物の生理作用や葉緑素(葉にある光合成を担う葉緑体に含まれる)の生成に関与 |
マグネシウム(苦土・Mg) | 葉緑素の構成元素、リン酸の吸収と移動 |
また、炭素(C)、水素(H)、酸素(O)も中量要素ですが、主に水や大気から吸収される要素です。
微量要素とは
微量要素には、ホウ素(B)、塩素(Cl)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)があります。三要素や多量要素と比較すると、必要な量は多くありませんが、欠乏すると様々な生理障害が発生します。
要素名 | 主な役割 |
---|---|
ホウ素(B) | 細胞壁の生成、カルシウムの吸収と転流 |
塩素(Cl) | 光合成(光合成の明反応) |
マンガン(Mn) | 葉緑素の生成、光合成、ビタミンCの合成 |
鉄(Fe) | 葉緑素の生成、鉄酵素酸化還元 |
亜鉛(Zn) | 酵素の構成元素、生体内の酸化還元、オーキシンの代謝、タンパク質の合成 |
銅(Cu) | 光合成や呼吸に関与する酵素の構成元素 |
モリブデン(Mo) | 硝酸還元酵素(硝酸をタンパク質にする過程で利用される)、根粒菌の窒素固定 |
ニッケル(Ni) | 尿素をアンモニアに分解する酵素の構成元素、植物体内で尿素を再利用 |
肥料の基礎、肥料にはどのような種類があるのか
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
元肥、追肥って何?肥料を施すタイミング
植物の苗や苗木を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
異なる呼び方として「基肥(きひ)」「原肥(げんぴ)」などと呼ばれる場合もあります。
よく「土作り」と呼ばれる作業を作物の植え付け前に行いますが、そのときに元肥となる資材を混ぜ混んだり、内部に埋め込んだりすることが一般的です。例えば、堆肥やぼかし肥料、有機質肥料(有機肥料)などが元肥としてよく使われる資材です。
元肥として施す堆肥、ぼかし肥料、有機質肥料(有機肥料)は、土壌に養分を与える役目だけではなく、土壌の物理性(団粒構造を促進し、土をふかふかにする)や微生物の増殖を助ける役目もあります。土作りに使われる資材は、単に栄養分として施されるだけではなく、その土壌の肥沃さや微生物の多様性など土壌環境を整えるために使われるのです。
土作りのときに堆肥のみ施しても作物を生長させることはできますが、堆肥は遅効性のため肥料の効きがゆっくりです。それを理解して使用しましょう。また、有機肥料も同様で遅効性の資材が多いので注意しましょう。堆肥や有機肥料と合わせて、緩効性で粒上の固形化成肥料を使ったり、有機配合肥料を使ったりすると良いでしょう。土壌の酸度(pH)にも注意して、必要であればアルカリ資材(消石灰や苦土石灰などの石灰肥料など)で酸度を矯正する必要があります。
ガーデニング・庭植えや鉢植え向けには、その作物に適した配合となっている用土もおすすめです。用土を使うことによって、肥料を混ぜ込んだりする手間も省けますし、安心して栽培を楽しむことができます(栄養分が入っていない用土もありますので、注意してください)。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
追肥として施す資材としては、速効性もしく緩効性の肥料が有効です。速効性・緩効性の固形化成肥料や速効性の液体化成肥料を一定時期に施すことで、土壌、植物の養分欠乏を防ぎます。
肥料について、もっと知りたい
肥料について、もっと知りたい方は下記のメニューから自分の知りたい内容を選んで、記事を探してみてください。農家webは肥料を知るための記事として、以下の内容のものを用意しています。
- トマト、イチゴなどの畑作物の肥料だけではなく、果樹向けの肥料、バラ、庭木、花木などのガーデニング・花壇向けの肥料、多肉植物などの観葉植物向けの肥料まで多数の作物別の肥料の記事
- 肥料とは何なのか?初心者向けの解説から化学的な話まで幅広く解説した基礎知識の記事
- 石灰窒素など農薬としても使われる肥料や硫安、尿素などマニアックな肥料の解説記事
- 水耕栽培など栽培方法別に適した肥料を解説した記事
- 化学肥料(化成肥料)、有機肥料などに属する肥料の詳細な解説記事 など
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