萎縮病は、葉に黄緑色の条斑ができて,モザイク状になったり、黄変して萎縮し、やがて枯れてしまう恐ろしい病気です。
ここでは、萎縮病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。
萎縮病とはどんな病気?
萎縮病とは?
萎縮病は、アブラムシ(モモアカアブラムシやキビクビレアブラムシなど)によって媒介されるシャロット黄色条斑ウイルスが原因で発症する病気です。種子伝染や土壌伝染はしません。このため、アブラムシの発生が多くなると被害が拡大します。
被害株を通じてウイルスを保毒した有翅アブラムシが,育苗床や植付け後の畑に飛来し、健全な作物を加害します。その後、15~20日間の潜伏期間を経てから発病します。
このため、萎縮病の主な発生時期は有翅アブラムシが多く飛来する4~6月、また9~11月になります。萎縮病は発生してからの有効な対策は、今の所あまりなく、いかにアブラムシを防除できるかが大事になってきます。

萎縮病の症状
萎縮病に感染すると、モザイク型の症状では、葉に淡黄緑色、モザイクのような斑紋ができ、進行すると葉は波状になり、新葉の生育は悪くなり、下葉は葉先から枯れてきます。黄化型の症状では、株全体が黄変し、萎縮してきます。


萎縮病に効果がある農薬
萎縮病は発生してからは効果的な薬剤防除は困難です。このため、発生の原因になるアブラムシを防除するための農薬が重要です。ここでは、アブラムシを防除する農薬を解説します。
アブラムシに効く農薬一覧
| IRACコード | グループ名 | 主な農薬 |
|---|---|---|
| 1A | カーバメート系 | ランネート |
| 1B | 有機リン系 | オルトラン スミチオン マラソン ダーズバン ダイアジノン サイアノックス |
| 3A | ピレスロイド系 | アディオン トレボン ゲットアウト ロディー アーデント テルスター |
| 4A | ネオニコチノイド系 | モスピラン アドマイヤー ダントツ スタークル アルバリン ベストガード アベイル |
| 4C | スルホキシイミン系 | トランスフォーム |
| 6 | アベルメクチン系 ミルベマイシン系 | コロマイト |
| 9B | ピリジン アゾメチン誘 導体 | コルト チェス |
| 14 | ネライストキシン類縁体 | リーフガード パダンSG |
| 21A | METI剤 | ハチハチ |
| 23 | テトロン酸およびテトラミ ン酸誘導体 | モベント |
| 28 | ジアミド系 | ベネビア ヨーバル |
| 29 | フロニカミド | ウララDF |
| サンクリスタル ムシラップ |
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
またスミチオン、マラソン、ダイアジノンなどはネギハモグリバエやネギアザミウマに対しても有効なので、初期防除にうまく役立ててください。
より詳しく網羅的に使える農薬を検索したい方は、是非、この農薬検索をご利用ください。
RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。
例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。
同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。
殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。
殺虫剤はアブラムシだけでなく、カイガラムシ類やハダニ類、アザミウマ類、ヨトウムシ、コナジラミ、コガネムシ、ハスモンヨトウ、ネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、アオムシ、ハムシなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
ローテーション散布について
農薬の種類、活用が増えることで、たまたま耐性があって生き残った特定の農薬が効かない性質のアブラムシが、世代を重ねて集団化する、抵抗性アブラムシが近年、問題になっています。
殺虫剤を散布しても、翌日集団でアブラムシが生息している場合は、抵抗性を疑ってよいでしょう。
このような場合は、お使いの農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、さらには生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要です。
農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。
- 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
- 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
- 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
- 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法
(IPM・・・Integrated Pest Management)
有機JAS縛りでアブラムシ駆除に使える農薬
有機JASで使用できる農薬の代表的なものは、生物農薬が挙げられます。生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
また、還元澱粉糖化物を有効成分とする農薬、商品名だと、「エコピタ液剤」「キモンブロック液剤」「ベニカマイルドスプレー」「ベニカマイルド液剤」もアブラムシ駆除に使えます。
その他、マシン油(機械油)「クミアイ 機械油乳剤95」や、薬液が虫体を被覆することによる窒息やでんぷんの粘着効果で防除できる、デンプン水和剤「粘着くん水和剤」などがあります。
無農薬でアブラムシを駆除する方法
アブラムシにはてんとう虫(幼虫、成虫)などの天敵が存在します。これらを利用したり、物理的に防除することでアブラムシを防ぐことができます。
無農薬でアブラムシを駆除する、生物的防除、物理的防除、耕種的防除について詳しく知りたい方は、下記を参考にしてみてください。
上記には、コレマンアブラバチ、ヤマトクサカゲロウ、ナミテントウ幼虫を使った生物的防除、アルミホイル、シルバーマルチなど、光を乱反射させて防除する方法、黄色の粘着テープやバケツで捕まえる方法、くん炭を株間に撒く方法、デンプン水和剤を散布する方法や、ソルゴーなど様々な防除方法を解説しています。
まとめ
萎縮病はウイルスを保毒した有翅型のアブラムシが作物に飛来する際に感染が生じるため、アブラムシの早期発見が鍵になります。
圃場の横のアブラナ科雑草を定点観測し、アブラムシの早期発見、忌避、退治に役立てている農家の方もいます。早期発見し、適切な薬剤でしっかり発生を予防、防除できるとベストです。
(補足)殺虫剤など、他の農薬について
農家webでは、下記のような害虫別のコンテンツがあります。気になるコンテンツがあれば、ぜひ参考にしてみてください。


































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