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病害虫農薬農薬の種類

いもち病に効く農薬について徹底解説!

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稲の葉にいもち病の病班、症状が出ている写真 病害虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

いもち病は稲(イネ)に関わる農家の方にとって歴史上多大な影響を与えた病気で、稲にかかる最も有名な病気との一つです。ここでは、いもち病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。

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いもち病とはどんな病気?

いもち病とは?

いもち病はいもち病菌の糸状菌によって起こる病害で、糸状菌が寄生して発病します。イネの根以外のほとんどすべての部位で発病し,発病時期の違いにより「苗いもち」「葉いもち」「穂いもち」と呼ばれるだけでなく,「穂いもち」の発病部位の違いから、「籾いもち」「(穂)首いもち」「枝梗いもち」などとも呼ばれます。それぞれの特徴を簡単にまとめると、以下のようになります。

病名時期特徴
葉いもち分げつ期から出穂期にかけて病斑を作る。その大きさ・形・色・性質から大まかに4種に分けられる。
「褐点型」・・小さな褐点で,抵抗性品種上や窒素肥料の少ないイネで見られる
「白班型」・・白い小さな円形病斑
「浸潤型(急性型)」・・直径数mmのほぼ円形で色はやや紫色を帯びた灰白色
「止まり型(慢性型)」・・葉脈方向に沿って長い紡錘形の病班
穂いもち出穂期発病部位によって、「首いもち」,「枝梗いもち」,「籾いもち」を総称して穂いもちという。
「首いもち」・・暗褐色紡錘形病斑が穂首に生じたのち速やかに穂首節全体が暗褐変し,のちに灰褐色
「枝梗いもち」・・「首いもち」より色調はやや淡い
「籾いもち」・・出穂間もない籾でははじめ退緑色の病徴を示し,しだいに褐変
稲の苗にいもち病の病班が出ている写真
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
苗いもち病の斑点
いもち病の病班
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
葉いもちの停滞型の斑点
穂首に褐色の病斑を生じた穂いもち病の穂
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
穂の先端が褐色になった穂いもちの症状

いもち病菌が稲に付着すると、水滴と合わさって発芽します(胞子発芽)。発芽すると、菌糸が毒素を出しながら、稲の表皮細胞を破って侵入し、葉や穂を枯らし始めます。葉いもちの場合、葉が枯れます。穂いもちの場合は、白穂になったり、籾の稔実(実がなること)が阻害されたりして、品質低下や収量減を招いてしまいます。

いもち病は、1970年代から冷害年など気象条件によってはたびたび大発生しましたが、2000年代には,葉いもち防除薬剤の育苗箱施用が一般的となり,葉いもちの多発生は改善されました。2010年代以降,いもち病抵抗性を付与した良食味品種の栽培が拡大するとともに,栽培期間が比較的高温で経過する年が多くなったことから,いもち病による被害は全国的には減少傾向にあります。

発生する原因

いもち病は、モミガラ、ワラ、稲株といった残渣やモミに付いた胞子(分生子)や菌糸で越冬して、播種後のイネに飛散し、くっつきます。水滴と合わさることで発芽、繁殖します。気温が15〜30度、稲に水滴が8時間以上付いている場合に発芽しやすくなります。

このため、そんなに高温ではない時期に雨が続くと感染しやすくなります。降雨が多い時期は水田を観察し、早期発見できるかどうかがポイントになってきます。

似た症状の病気との違い

ごま葉枯病

ごま葉枯病は楕円形の病斑で,葉いもち病斑のような壊死線のある紡錘形とは異なることで区別できます。また壊死部の褐色が、いもち病よりも赤みが強いため、判断することができます。

すじ葉枯病

すじ葉枯病は脈間を葉脈に沿って上下に進展し,長さ5~10mm,幅1mm程度の両端のとがった周縁のやや不鮮明な紫褐色の条斑を作ります。この条斑の形状は、すじ葉枯病特有なので、いもち病と見分けがつくかと思います。

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防除における、予防と治療

病原菌の中でも、カビ(糸状菌)は以下のような3段階で病気の発病させます。

  1. カビの胞子が葉に付く
  2. 付いた菌が葉の表面のワックス層を溶かして菌糸を伸ばし、植物の細胞内に吸器を作る
  3. 植物の細胞から栄養を取り、、分生胞子を作って繁殖し、再び胞子を拡散、増殖させる

1の段階でカビを防ぎ、2の段階に行かないように、胞子の発芽を抑制したり菌糸の侵入を阻害するのが「予防剤」で、2、3以降になり、菌糸を死滅させたり、分生胞子が作られるのを阻害するのが「治療剤」になります。

農薬のラベルには、「予防剤」「治療剤」の表記はありません。菌が蔓延した状態で完全に効く治療剤はほぼないため、「治療剤」と名乗ると、効かなかった場合にメーカーとして不利益を被るのを避けるためだと思われます。

「予防剤」か「治療剤」かは、「病気の初発後に使用しても効果が期待できる」など、発病後でも防除効果が期待できるような記載があるかどうかで判断することができます。

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いもち病に効果がある農薬

いもち病を防ぐためには、まず一時伝染源になる「種子伝染」を防ぐための「種子消毒」、それでも本田での発生が懸念される場合は、葉いもち病予防のため、苗箱での「箱剤」による予防、また穂いもち病予防のために殺菌剤の散布を行います。

そして本田で実際に発生してしまった場合は、予防治療効果に優れる殺菌剤を散布、または水田に溶かすことになります。

それぞれに合わせて、様々な適用農薬があります。ここでは代表的な農薬を紹介します。

「種子消毒」に使える農薬

トップジンM水和剤(FRAC 1)

トップジンM水和剤は速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できるベンゾイミダゾール系殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。

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トリフミン水和剤(FRAC 3)

トリフミン水和剤は稲や麦類の種子伝染性病害など広範囲の病害にすぐれた効果を持つEBI系殺菌剤です。低濃度で高い効果がある薬剤です。

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いもち病対策に使える「箱剤」

「箱剤」すなわち水稲育苗箱処理剤とは、稲の育苗箱に処理するために作られた農薬で、殺虫剤と殺菌剤の混合剤です。田植え(移植)後の本田での農薬散布を減らせることや、育苗箱時に農薬を使用することで散布ムラをなくし、薬剤効果を安定させます。このため、水稲育苗箱処理剤は次第に普及しています。

「箱剤」は様々な効果を持つ農薬が混用されています。いもち病に効く農薬名は以下なので、以下の要素がある「箱剤」を選べば、いもち病を対策できます。

穂いもち病を防ぐための農薬

穂いもち病の感染時期は、穂ばらみ期から出穂後20日で、とくに、出穂直前から出穂後10日間の感染を防げば、その後はイネは抵抗性を増すため、感染する可能性は少ないと言われています。

地域情報等で多発が予想される場合は、下記の農薬の散布がおすすめです。

コラトップ粒剤(FRAC 16.1)

コラトップ粒剤はいもち病菌の侵入を防ぐだけでなく、胞子形成阻害作用・胞子病原性低下作用も有し、いもち病の蔓延を防止するピロキロン剤です。残効(持続)性に優れているので、稲(イネ)の刈取り、収穫期までカバーしてくれるほどです。

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本田で予防治療効果に優れる殺菌剤

水田でいもち病の初発を認めたら、下記の農薬を散布しましょう。

  • ビーム(トリシクラゾール粒剤)
  • コラトップ粒剤、コラトップパック(ピロキロン剤)
  • ブラシン(フェリムゾン・フサライド剤)
  • フジワン粒剤(イソプロチオラン剤)

使用に当たっては使用時期を誤らないように薬剤の注意事項等をよく確かめるようにしてください。

上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤や茎葉散布、また乳剤、水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

その他

農薬を使わない「種子消毒」

無農薬栽培など、農薬を使わず消毒を行いたい方もいらっしゃるかと思います。

イモチ菌は湿熱には非常に弱いため、温湯浸法という消毒方法があります。やり方は55度のお湯に1時間ほど種子を漬け、その後冷水に入れて冷やす、という方法です。

防除する際のポイント

菌が一度蔓延し、発病してしまうと、完全に防除するのは難しくなります。このため、防除において最も大事なのは、如何に予防剤などを用いて初発で叩いて、発病させないか、です。

また同じ系統の治療剤・予防剤の連続使用は、農薬が効かなくなる耐性菌の発生を招いてしまいます。菌が抵抗性を持つのを避けるために、系統の異なる薬剤を使うことが重要です。

化学的防除以外の防除方法

チッソ(窒素)を減らす

施肥がチッソ過多になると、過繁茂を招き、株間の湿度が高いと発病が多くなるので、いもち病の発生を招きやすくなってしまいます。このため、チッソ過多にならないように適切な施肥量を保つことが重要です。

モミガラ、ワラ、稲株等の被害残渣に注意

モミガラ、ワラ、稲株等の被害残渣は、モミに次いで重要な伝染源となります。稲(イネ)の育苗場所はこれらからしっかり離すようにしましょう。

また、モミガラ、ワラ、稲株等の被害残渣は堆肥等にして土壌によく腐熟させれば問題ないので、田植え期までにしっかりと腐熟させるようにしましょう。

まとめ

いもち病は耐性を持つ品種の流通や温暖化によって昔ほどは脅威ではなくなりましたが、今でも非常に恐ろしい病気であることは変わりません。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

多く発生してからの完治は非常に難しいので、予防、初期対応でしっかり防除することを心がけましょう。

(補足)殺虫剤など、他の農薬について

農家webでは、下記のような害虫別のコンテンツがあります。気になるコンテンツがあれば、ぜひ参考にしてみてください。

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編集さん
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