「ダントツ」(有効成分クロチアニジン)は、住友化学(株)が販売しているネオニコチノイド系殺虫剤で,非常に幅広い殺虫スペクトラムを持つ農薬です。水溶剤、粒剤と、用途に合わせて使用できます。
ここでは、農薬ダントツとはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
ダントツとは、どんな殺虫剤?
「ダントツ」(有効成分クロチアニジン)は、住友化学(株)が販売しているネオニコチノイド系殺虫剤です。
アブラムシ類、コナジラミ類、ウンカ類、ヨコバイ類、カメムシ類、コナカイガラムシ類などのカメムシ目害虫、アザミウマ目害虫に加えて、ハモグリバエ、ハモグリガ、ホソガ、シンクイムシ、カミキリムシなどハエ目、チョウ目、コウチュウ目害虫に対して、非常に高い防除効果を示します。この幅広い殺虫スペクトラムが特長です。
ダントツの有効成分、性状
- クロチアジニン・・・水溶剤、粒剤などにより含有%が異なる
有効成分のクロチアジニンは、住友化学が開発したネオニコチノイド系の殺虫剤です。
ネオニコチノイド系は90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン製アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止します。結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。致死濃度以下でも、食害や交尾、産卵や飛行など、虫のあらゆる行動が減少します。
ダントツは、ネオニコチノイド系の中でも、クロロチアゾール基をもつ新しいタイプのネオニコチノイド系殺虫剤で、従来のクロロニコチニル系化合物とは構造的に異なる「クロチアニジン(試験名:TI-435)」を有効成分とする殺虫剤です。
性状は、水溶剤が青緑色水溶性細粒、粒剤が類白色細粒になります。水溶剤は水で希釈して散布します。農薬の希釈については下記をご参考ください。
ダントツの特長
ダントツの最大の特長は、多くの作物に適用があること、アブラムシ類、コナジラミ類、ウンカ類、ヨコバイ類、カメムシ類、コナカイガラムシ類などのカメムシ目害虫、アザミウマ目害虫に加えて、ハモグリバエ、ハモグリガ、ホソガ、シンクイムシ、カミキリムシなどハエ目、チョウ目、コウチュウ目害虫に対して、非常に高い防除効果を示すことが挙げられます。
また、ネオニコチノイド系の特長として、残効性が長く、防除効果が続きやすい点もポイントです。
浸透移行性に優れ、茎葉部から作物体内に吸収され、作物全体へ浸透移行していきます。また、トランスラミナー作用により、葉の表から裏への移行性も示しますので、アブラムシなど葉裏に生息している害虫にも優れた防除効果を発揮するのも特長です。
使用するときに注意したい点
ミツバチ、マルハナバチに悪影響
ミツバチ、マルハナバチには悪影響があります。
ミツバチの巣箱、その周辺には薬液がかからないように注意しましょう。受粉促進を目的としてミツバチを放飼している施設や果樹園では使用しないようにしてください。また、周辺で養蜂が行われている場合は、関係機関へ農薬使用に係る情報を提供し、ミツバチの危害防止に努めてください。
水産動植物(甲殻類)に影響
水産動植物(甲殻類)に影響を与えるので、河川、養魚田,養魚池などに飛散,流入しないように充分注意しましょう。
また、ボルドー液と混用する場合は散布直前に行い、できるだけ早く使用すること、その他のアルカリ性の強い農薬との混用は避けるようにしましょう。
その他、使用する際は、使用上の注意をしっかり確認するようにしましょう。
効果・薬害・毒性
ダントツは以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
ダントツ水溶剤
作物名 | 適用病害虫名 |
---|---|
稲(イネ) | ウンカ類 カメムシ類 イネアザミウマ イネドロオイムシ ツマグロヨコバイ |
稲(箱育苗) | ウンカ類 イネミズゾウムシ イネドロオイムシ フタオビコヤガ ツマグロヨコバイ |
未成熟とうもろこし | アブラムシ類 ツマジロクサヨトウ アカスジカスミカメ |
水田作物、畑作物(休耕田) | カメムシ類 |
かんしょ | アブラムシ類 |
ばれいしょ | アブラムシ類 テントウムシダマシ類 |
やまのいも | アブラムシ類 |
かぶ | アブラムシ類 |
だいこん | アブラムシ類 ダイコンハムシ |
てんさい | アブラムシ類 カメノコハムシ テンサイトビハムシ テンサイモグリハナバエ |
あさつき | ネギアザミウマ ネギハモグリバエ |
にら | アブラムシ類 ネギアザミウマ ネギネクロバネキノコバエ |
にら(花茎) | アブラムシ類 ネギアザミウマ |
ねぎ わけぎ | ネギアザミウマ ネギハモグリバエ |
豆類(種実、ただし、だいず、あずき、いんげんまめ、らっかせいを除く) | アブラムシ類 |
あずき | アブラムシ類 マメホソクチゾウムシ |
いんげんまめ | アブラムシ類 カメムシ類 インゲンマメゾウムシ |
だいず(大豆) えだまめ(枝豆) | アブラムシ類 カメムシ類 フタスジヒメハムシ マメシンクイガ |
豆類 (未成熟、ただし、えだまめを除く) | アブラムシ類 |
きゅうり | アブラムシ類 カメムシ類 コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ |
食用へちま | アブラムシ類 |
とうがん | ミナミキイロアザミウマ |
にがうり | アブラムシ類 ミナミキイロアザミウマ |
かぼちゃ | アブラムシ類 ウリハムシ カボチャミバエ |
すいか | アブラムシ類 ウリハムシ ミナミキイロアザミウマ |
メロン | アブラムシ類 コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ ウリハムシ ハモグリバエ類 |
トマト ミニトマト | アブラムシ類 コナジラミ類 ハモグリバエ類 |
なす | アブラムシ類 カメムシ類 コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ テントウムシダマシ類 ハモグリバエ類 |
ピーマン | アブラムシ類 カメムシ類 コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ |
とうがらし類 | アブラムシ類 コナジラミ類 ミナミキイロアザミウマ |
ブロッコリー | アブラムシ類 コナガ アオムシ |
非結球あぶらな科葉菜類(チンゲンサイを除く) | アブラムシ類 |
チンゲンサイ | アブラムシ類 ハモグリバエ類 |
キャベツ | アブラムシ類 コナガ アザミウマ類 アオムシ |
はくさい | アブラムシ類 コナガ アオムシ |
せり パセリ みつば ほうれんそう | アブラムシ類 |
セルリー | アブラムシ類 ハモグリバエ類 |
レタス | アブラムシ類 アザミウマ類 ナモグリバエ |
非結球レタス | アブラムシ類 ナモグリバエ |
しゅんぎく | アブラムシ類 ハモグリバエ類 |
アスパラガス | アブラムシ類 カメムシ類 ネギアザミウマ ジュウシホシクビナガハムシ |
オクラ くわい | アブラムシ類 |
オリーブ(葉) | オリーブアナアキゾウムシ マエアカスカシノメイガ |
れんこん | クワイクビレアブラムシ |
みょうが | ナスコナカイガラムシ |
かんきつ | アゲハ類 アブラムシ類 アカマルカイガラムシ ナシマルカイガラムシ ゴマダラカミキリ カメムシ類 ミカンキジラミ ケシキスイ類 カネタタキ コアオハナムグリ コナジラミ類 アザミウマ類 アオバハゴロモ ミカンハモグリガ ミカンバエ ツノロウムシ コナカイガラムシ類 |
かんきつ(苗木) | アゲハ類 アブラムシ類 ゴマダラカミキリ ミカンハモグリガ |
なし | アブラムシ類 カメムシ類 チュウゴクナシキジラミ コナカイガラムシ類 シンクイムシ類 ケムシ類 |
りんご | アブラムシ類 カメムシ類 コガネムシ類成虫 ギンモンハモグリガ コナカイガラムシ類 キンモンホソガキンモンホソガ シンクイムシ類 ケムシ類 リンゴワタムシ |
びわ | アブラムシ類 カイガラムシ類 カミキリムシ類 カメムシ類 |
おうとう | カメムシ類 オウトウショウジョウバエ |
もも | アブラムシ類 クビアカツヤカミキリ カメムシ類 コガネムシ類 モモハモグリガ シンクイムシ類 |
ネクタリン | アブラムシ類 カメムシ類 コガネムシ類 モモハモグリガ シンクイムシ類 |
あんず | アブラムシ類 |
うめ | アブラムシ類 クビアカツヤカミキリ カメムシ類 ケシキスイ類 ケムシ類 |
すもも | アブラムシ類 カメムシ類 |
ぶどう | ブドウトラカミキリ カメムシ類 コガネムシ類 チャノキイロアザミウマ フタテンヒメヨコバイ コナカイガラムシ類 |
ブルーベリー | アブラムシ類 オウトウショウジョウバエ ケムシ類 |
パイナップル(苗木) | パイナップルコナカイガラムシ |
パパイヤ | ヒラタカタカイガラムシ ナガカタカイガラムシ |
マンゴー | アザミウマ類 コナカイガラムシ類 |
オリーブ | カメムシ類 オリーブアナアキゾウムシ マエアカスカシノメイガ |
さんしょう(果実) | アザミウマ類 |
なつめ | ゴマダラカミキリ |
いちじく | カミキリムシ類 アザミウマ類 |
かき | カメムシ類 アザミウマ類 カキノヒメヨコバイ コナカイガラムシ類 カキノヘタムシガ |
キウイフルーツ | カメムシ類 アオバハゴロモ キウイヒメヨコバイ |
花き類・観葉植物 | アブラムシ類 アザミウマ類 |
きく | アブラムシ類 カメムシ類 アザミウマ類 ナモグリバエ ハモグリバエ類 |
たであい | アブラムシ類 |
ばら | コガネムシ類 アザミウマ類 |
わた | アブラムシ類 |
さくら | クビアカツヤカミキリ |
げっきつ | ミカンキジラミ |
デイゴ | デイゴヒメコバチ |
つつじ類 | ツツジグンバイ |
茶 | コミカンアブラムシ チャトゲコナジラミ チャノキイロアザミウマ マダラカサハラハムシ チャノミドリヒメヨコバイ チャノホソガ ツマグロアオカスミカメ |
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数(年限)は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- クロチアニジン 〜6回
クロチアニジンを含む農薬の使用可能回数(年限)は、適用作物によって〜6回と変わってきます。適用作物と使用回数をよく確認するようにしましょう。また、使用時期(収穫何日前、は種、定植、移植何日前など)もしっかりチェックしてください。
ダントツの効果を高めるために
薬液を広範囲にまく際には、効果的に散布できる散布機(噴霧機)やスプレイヤーの使用をおすすめします。
まとめ
ダントツの最大の特徴は、多くの作物に適用があること、アブラムシ類、コナジラミ類、ウンカ類、ヨコバイ類、カメムシ類、コナカイガラムシ類などのカメムシ目害虫、アザミウマ目害虫に加えて、ハモグリバエ、ハモグリガ、ホソガ、シンクイムシ、カミキリムシなどハエ目、チョウ目、コウチュウ目害虫に対して、非常に高い防除効果、そして長い残効性を示していることです。薬剤をうまく活用して、病害虫の防除に役立てましょう。
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