化学的な農薬ではない農薬として注目されている生物農薬。ここでは、生物農薬とは一体どういうものなのか、メリットやデメリットについて詳しく解説していきます。
生物農薬とは?
生物農薬とは?
生物農薬とは、「有害生物の防除に利用される、拮抗微生物、植物病原微生物、昆虫病原微生物、昆虫寄生性線虫、寄生虫あるいは捕食性昆虫などの生物的防除資材」と定義されています。
分かりやすくまとめると、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」ということになります。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)にとって、天敵に当たる昆虫や病原菌にあたる生物になります。
天敵と聞いて分かりやすい例が、アブラムシを食べるてんとう虫(テントウムシ)ですね!
近年では、IPMの重要な要素として非常に注目されている防除方法です。
生物農薬の種類
生物農薬は主に、天敵昆虫や天敵線虫を利用する「天敵農薬」と微生物を利用する「微生物農薬」にわかれます。
天敵農薬
天敵昆虫(捕食性昆虫、寄生性昆虫などで、捕食性ダニ類も含む、成虫、幼虫)を成分とする生物農薬で、代表的な製剤は下記のようなものがあります。
商品名 | スパイデックス | ククメリス | スパイカルEX | エンストリップ | アフィパール | オリスターA | カゲタロウ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
有効成分の種類 | チリカブリダニ | ククメリスカブリダニ | ミヤコカブリダニ | オンシツツヤコバチ | コレマンアブラバチ | タイリクヒメハナカメムシ | ヤマトクサカゲロウ |
作物名 | 野菜類(施設栽培) 豆類(種実)(施設栽培) いも類(施設栽培) 果樹類(施設栽培) 花き類・観葉植物(施設栽培) | 野菜類(施設栽培) シクラメン(施設栽培) | 野菜類 果樹類 花き類・観葉植物(施設栽培) 茶 | 野菜類(施設栽培) ポインセチア(施設栽培) | 野菜類(施設栽培) | 野菜類(施設栽培) | イチゴ(施設栽培) なす(施設栽培) ピーマン(施設栽培) |
適用病害虫名 | ハダニ類 | アザミウマ類 ケナガコナダニ | ハダニ類 カンザワハダニ | コナジラミ類 | アブラムシ類 | アザミウマ類 | アブラムシ類 ワタアブラムシ |
天敵線虫(昆虫寄生性線虫、微生物捕食性線虫など)を成分とする生物農薬で、代表的な製剤は下記のようなものがあります。
微生物農薬
微生物農薬は微生物を有効成分とする生物農薬です。特に昆虫病原性糸状菌を用いて害虫を防除するボタニガードESなどが有名です。いわゆる、BT剤はこの種類に入ります。
代表的な製剤は下記になります。
生物農薬のメリット・デメリット
生物農薬には以下のようなメリット、デメリットがあります。
生物農薬のメリット
- 残留性がないため環境に良く作物に影響が出難い、毒性が低く、人畜に危険性が少ない
- 害虫に抵抗性が発達しにくいため、作期を通じて複数回の使用、散布を行いやすい
- 化学農薬では効かない害虫に効果がある場合もある
生物農薬のデメリット
- 化学農薬に比べ、即効性に乏しい
- 化学農薬に比べ高価な場合も多く、また長期の保存ができない
- 対象病害虫の範囲が化学農薬に比べ狭いため、複数の病害虫が発生する場合に生物農薬だけでは防除し難い
- 在来種以外の天敵昆虫は、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難い
まとめ
現在、従来の化学薬品ではない生物農薬は、IPM(総合的害虫管理)の非常に重要な役割を占めるものとして非常に注目されています。殺虫、殺菌だけでなく、スズメノカタビラなどの雑草を除草する効果があるものもあります。
アリスタなどから、様々な生物農薬が展開されています。化学的防除や物理的防除とうまくかけ合わせて、より効率的な防除体制の一助となれば幸いです。
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