稲作につきものの水田雑草。水田には様々な雑草が生えますが、ヒエ(タイヌビエ、ケイヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエ等のノビエ、キシュウスズメノヒエ、チクゴスズメノヒエ)は水田雑草の代表格です。
ここではヒエの中でもキシュウスズメノヒエについて、特徴と、駆除、防除方法について、徹底解説していきたいと思います。
キシュウスズメノヒエとは?

科 | イネ科 |
種類 | 多年草 |
分布 | 関東以西 |
学名 | Paspalum distichum L. |
別名 | カリマタスズメノヒエ |
キシュウスズメノヒエは、イネ科の多年草で、アジア、アメリカの熱帯に湿地に広く分布しています。日本では1924年に和歌山県で発見されて以来、関東、北陸地方以西の水田でよく見られるようになりました。もともとは北アメリカ原産の多年生帰化雑草です。ほふくするイネ科多年生雑草の総称として、ヤベヅル、ヨバイヅルとも呼ばれます。
越冬した株から、節間の稈を伸ばして畦畔から水田に侵入し、ほふく稈が節から発根し,萌芽、水田内で繁殖します。生育スケジュールは下記になります。

キシュウスズメノヒエの特徴
キシュウスズメノヒエは水田周辺の畦畔などに生えます。水田に侵入し定着してしまうと,稈が地表を這い、節からよく分枝し、発根して広がっていきます。こうなってしまうと、毎年繁殖拡大し、株やほふく稈の除去が大変困難になってしまいます。
キシュウスズメノヒエの防除方法

科学的防除(農薬による防除)
畦畔の防除
キシュウスズメノヒエは主に畦畔から侵入してくるため、畦畔に生えているキシュウスズメノヒエをしっかり防除することが重要です。下記のような多年生のイネ科雑草に効く除草剤で駆除しましょう。しかし畔は根まで枯らすグリホサート系の除草剤は、畔が崩れる要因ともなりますので、接触型のグルホシネートがおすすめです。水田で繁殖した場合は、稲刈り後グリホサートで除草するのがおすすめです。
グリホサート系除草剤
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV8 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |

「農耕地」とは、畑や菜園、圃場、水田は勿論、田んぼの畦畔などが当てはまります!
農耕地使用の場合は、農耕地使用に「◯」が付いたものを使うようにしてください。
グルホシネート系除草剤
グルホシネート系は多年生雑草の根、地下茎まで枯らすことはできませんが、地上部を速効的に枯らすため、キシュウスズメノヒエの水田への侵入を防ぐには有効です。
水田での除草
水田内で発生した場合は、下記のような除草剤で防除していきましょう。
成分ベンタゾンが含有されているクリンチャーバス、バサグラン粒剤、液剤などが良いでしょう。
クリンチャー(シハロホップブチル)は雑草の茎葉部から速やかに吸収され作用点へ移行し、殺草、直播水稲や、育苗箱で使用することも出来るキシュウスズメノヒエ対策の代表的な除草剤です。
ただし、ヒエ三葉まで枯らす効果がありますが、広葉雑草には効かない点、また、すでに発生しているヒエの茎葉に直接成分を触れさせないと効果が出ない点に注意してください。(5葉期までの適用がありますが、気象条件や圃場条件により、発生時期や生育スピードが異なる場合がありますので、雑草の生育状況をよく観察して散布してください)
特にヒエクリーンバサグラン粒剤は、ノビエに対し優れた効果を示すヒエクリーンと、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグランをひとつにした水稲移植後中・後期除草剤でヒエ剤の代表格で、広範囲の雑草を除去できる有効な除草剤です。
SU(スルホニル尿素)剤に抵抗性を示す一年生広葉雑草(アゼナ、ミゾハコベ等)、コナギ、ホタルイ等に対しても高い除草効果を発揮します。また、多年生難防除雑草でSU抵抗性が確認されているオモダカに対しても優れた効果を示します。
重要なことは、どの雑草も成長、繁茂してからの除草は困難であるということです。地下茎を伸ばしたり、草丈が伸長する前、できるだけ初期に除草、防除することを心がけましょう。
また、田面散布の際は、田面の土壌表面がなるべく均一になるよう、ていねいに砕土・代かきし、均平となるように整地するのが重要です。(湛水散布の際は、水の出入りを止めて湛水のまま田面に均一に散布します。)
物理的、生物的、耕種的防除
農薬を使わずにヒエの発生を防いだり、除草したりする方法として、多くの農家さんが色々な方法を試しています。ヒエを防ぐためには様々な防除方法を複合的に行い、統合的に防除することが大事です。
ここでは、その方法を何点か紹介しますので、興味あるものがあれば、実行してみてください。
完全に埋没させる
キシュウスズメノヒエは、代かきを丁寧にするなどして、稈を湛水土中に完全に埋没させると、節から萌芽できなくなります。
アイガモを利用した除草
アイガモはクログワイ、コナギ、ヒエを含む雑草や、ウンカといった害虫を食べてくれるので、生物的防除になります。
まとめ
水田に生える雑草は、その他コナギ、イヌホタルイ、イヌビエ、イボクサ、コウキヤガラ、タイヌビエ、ミズガヤツリ、オモダカ、ヒルムシロ、アメリカアゼナ、キカシグサ、ウリカワ、クサネム、シズイ、ハリイ、タマガヤツリ、ミゾハコベ、タケトアゼナ、キシュウスズメノヒエ、タカサブロウ、ミソハギ、ウキヤガラ、アゼトウガラシ、タウコギ、イグサ、ゴマノハグサ、カズノコグサ、ミズハコベ、ミズワラビ、ヒメタイヌビエ、タガラシ、デンジソウ、ホタルイ、トチカガミ、ヘラオモダカ、アゼナなどがあります。まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、土壌処理剤、一発処理剤で防除し、生育したものに対しては後期に使える薬剤を散布する方法などで駆除をしていきましょう。何よりも早め早めに土壌処理剤でしっかり防除することで、カメムシなどの害虫の発生、病害虫による病害の発生も防ぎ、殺虫剤も減らせますし、農作業を楽にすることができます。早期発見、予防を心がけましょう。
水稲用の農薬は、日産化学やシンジェンタ、三井化学、日本農薬、クミアイ化学工業から展開されています。
また、田んぼの肥料や、発芽・幼苗期の代かきや田植、灌水、分げつ期、穂ばらみ期など、時期、適期毎の稲の育て方を下記で詳しく説明しています。
一年生、多年生雑草対策に水田で使える除草剤について、液剤も含めて下記で概略を説明しています。
乳剤や水和剤の希釈方法や農薬の効果を高める展着剤については下記を参考ください。


また、畦畔、畑作、畑地の除草などには、しっかりからせるグリホサート系(ラウンドアップ、サンフーロンなど)、グルホシネート系(バスタ、ザクサ)や刈払機がおすすめです。広範囲に散布するための噴霧機の記事も合わせてご参照ください。



