除草剤の種類
主に水稲で使われる除草剤は、使う時期の違いから、「初期剤」「中期剤」「後期剤」と分かれ、初期剤と中期剤をまとめてまかなえる「一発処理剤」もあります。詳しい内容は下の通りです。
- 初期剤・・・代かき後から田植え前、また田植時からノビエ1.5葉期までに使用する除草剤です。
- 中期剤・・・初期剤の使用後、ノビエが3~4葉期になるまでに使用する除草剤です。
- 後期剤・・・中期剤、または一発処理剤の使用後、除草する必要がある時に、使用する除草剤です。
- 一発処理剤・・・「初期剤+中期剤」の効果をもたらす除草剤です。体系是正剤ともいいます。
ヒエにおすすめの初期剤
ソルネット(粒剤)
有効成分 プレチラクロール 4.0%
ソルネットは、植代時から移植前7日まで、または移植時、移植直後からノビエ1葉期(ただし,移植後30日までに使用する)まで効果のある初期剤です。植代から移植まで6日以上の水田やアゼナ類,ホタルイの多発する水田において、一発処理剤・中期剤との体系処理剤として高い除草効果を示します。
エリジャンジャンボ(ジャンボ剤)
有効成分 プレチラクロール:15.0%
有効成分のプレチラクロールは、非ホルモン型吸収移行性の除草剤であり、雑草に対して主に幼芽部の
伸長を抑えて、成長を阻害して枯死させます。ノビエをはじめ抵抗性雑草のアゼナ類・ホタルイ等に高い効果を発揮します。雑草の発生前から生育初期に有効なので、ノビエの1葉期までに時期を失しないように散布してください。抵抗性雑草が多発している場合には、一発剤、中期剤を体系的に使って除草する必要があります。
ヒエにおすすめの中・後期剤
トドメMF乳剤・トドメMF1キロ粒剤
有効成分 メタミホップ (乳剤4.9%・粒剤1.35%)
トドメMFは、ノビエ(ヒエ)専用の除草剤です。有効成分のメタミホップは、高葉齢のノビエ(ヒエ)に効果が期待できます。ヒエの他、キシュウスズメノヒエ、アゼガヤにも効果を示します。移植水稲だけでなく、直藩水稲でも使うことができます。ヒエだけが大きくなってしまった圃場には、トドメMFは1成分のみのため、複合剤より安価です。
移植水稲で粒剤はヒエ(ノビエ)5葉期、乳剤はさらに長く7葉期まで散布することができます。
トドメバスMF液剤
有効成分 ベンタゾンナトリウム塩 18.3%、 メタミホップ 1.2%
トドメバスMF液剤の、有効成分メタミホップは6葉期までの高葉齢のヒエ(ノビエ)に効き、ベンタゾンナトリウム塩は、広葉雑草に効果の高い薬剤が組み合わさった速効性のある葉茎処理剤です。生育の進んだ各種雑草に効果が期待できます。移植水稲だけでなく、直藩水稲でも使うことができます。
ヒエクリーンバサグラン粒剤
有効成分 ピリミノバックメチル 0.4%、ベンタゾン(ナトリウム塩)11.0%
ヒエクリーンバサグラン粒剤は、ヒエ(ノビエ)に対し優れた効果を示すヒエクリーン(有効成分ピリミノバックメチル)と、ノビエ以外の一年生広葉雑草や多年生雑草、オモダカ等の難防除雑草までの水田雑草に優れた効果を示すバサグラン(有効成分ベンタゾン)をひとつにした水稲用中・後期除草剤でヒエ剤の代表格です。ノビエ4葉期まで使用可能です。
SU(スルホニル尿素)剤に抵抗性を示す一年生広葉雑草(アゼナ、ミゾハコベ等)、コナギ、ホタルイ等に対しても高い除草効果を発揮します。また、多年生難防除雑草でSU抵抗性が確認されているオモダカに対しても優れた効果を示します。
クリンチャージャンボ・クリンチャーEW・クリンチャー1キロ粒剤
クリンチャーは、シハロホップブチルを有効成分とする除草剤で、残草したノビエ(ヒエ)等イネ科雑草に有効に有効な、水稲用中後期除草剤です。
クリンチャーは剤型も多くあり、粒剤の他投げ込むだけで簡単なジャンボ剤、大きくなったヒエに効果のあるEW剤もあります。それぞれノビエ(ヒエ)に散布可能な葉齢が違いますので、用途に合わせて選びましょう。クリンチャーは、広葉雑草には効かない点、また、すでに発生しているヒエの茎葉に直接成分を触れさせないと効果が出ない点に注意してください。広葉雑草にも困っているようでしたら、ヒエと広葉雑草と同時に効くクリンチャーバスME液剤もあります。
移植水稲には、粒剤・ジャンボ剤はノビエ5葉期まで、EW剤は6葉期まで枯らすことができます。
ヒエにおすすめの一発処理剤
一発処理剤は、初期剤より残存期間が30日~50日ほどと長く広範囲の雑草に効果があります。そのため1度の散布で初期剤と中期剤の両方の効果が期待できるため、省力化できる便利な除草剤です。一発剤には、移植後すぐにつかえるものと、数日たってから使うものがありますのでヒエの発生時期に合わせて使いましょう。
ホクト粒剤
成分 ピラゾフルフロンエチル0.070%、シハロホップブチル:0.60%、ジメタメトリン:0.20%、プレチラクロール:1.5%
ピラゾスルフロンエチルは、スルホニルウレア系化合物(SU)系の除草剤、通称SU一発処理剤の一つです。田植え後5日後を目安に、水田に撒くだけで、幅広い効果を発揮し、ノビエ、クサネム、アゼナ、カヤツリグサをはじめ、水田一年生雑草及び主要な多年生雑草に優れた効果を発揮し、更にアオミドロや表層はく離にも防止の効果が期待できます。
ジャンダルムMX豆つぶ250
有効成分 ピリフタリド:7.2%、メソトリオン3.6%、ピリミスルファン:2.0%
3成分を有効成分とする水稲用除草剤で、ノビエはもちろん、SU抵抗性の各種雑草や多年生雑草まで幅広い草種に高い効果を発揮します。移植後3日~ノビエ3.5葉期まで使えます。袋のまま、ひしゃくで散布するのに加え、動力散布機や無人航空機(ドローン)での散布も可能です。オモダカ、クログワイ、シズイ、コウキヤガラは発生期間が長く、これだけでは防除できないため、これらの雑草が発生する場合は、体系的に後期剤の使用が必要です。
稲刈り後におすすめの除草剤
グリホサート系除草剤
グリホサートは、多年生雑草の根、地下茎まで枯らすことができる非常にメジャーな除草剤の成分です。このため、ヒエに限らず、厄介な多年草のクログワイなども枯らし、翌年の発生を減らす効果が見込めます。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV9 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
グルホシネート系除草剤
グルホシネート系は多年生雑草の根、地下茎まで枯らすことはできませんが、地上部を速効的に枯らすため、キシュウスズメノヒエをはじめとしたヒエを枯らして種子の結実を減らすことができます。
プログリックス
プリグロックス(preegloxl)は、ジクワットジブロミド、パラコートジクロリドを有効成分とする、シンジェンタが販売するジクワット・パラコート液剤です。水田畦畔で使われるメジャーな除草剤で、散布すると1日で効果が出る速効性、雨に強い、土壌に触れるとすぐに不活性化するので、散布後すぐに播種、定植を行いやすいといった特長があります。
グリホサートと異なり、根まで枯らすことはできないので、多年生の雑草を根絶したい場合はグリホサート系の上層剤を使うことをおすすめします。
ヒエ(ノビエ)の葉期の数え方
田んぼ(水稲)の除草剤には、移植後〇日もしくは、収穫前〇日などの記載と同時に、ノビエ〇葉期までと、除草剤の使える期間が、初めの日から終わりの日まで記載されています。この時期にキチンと散布することで除草剤は効果を発揮します。
この除草剤に書かれているノビエの葉期について、きちんと理解しておきましょう。ノビエの葉期とは、田んぼに生えている中でも一番大きく育ったノビエの葉数です。ノビエの平均の葉数ではないことに注意しましょう。
(参考)除草剤を使わないヒエの除草方法
農薬を使わずにヒエの発生を防いだり、除草したりする方法として、多くの農家さんが色々な方法を試しています。ヒエを防ぐためには様々な防除方法を複合的に行い、統合的に防除することが大事です。
ここでは、その方法を何点か紹介しますので、興味あるものがあれば、実行してみてください。
7~8cmの深水で防除する
田植え後から水深7~8cmの深水にしたところ、ヒエの発生を抑制する効果あるとして、実践されている農家の方がいます。
アイガモを利用した除草
アイガモはクログワイ、コナギ、ノビエを含む雑草や、ウンカといった害虫を食べてくれるので、生物的防除になります。
ヒエ(稗)とは?
科 | イネ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Echinochloa crus-galli Beauv. |
別名 | ノビエ |
ヒエは、タイヌビエ、ケイヌビエ、イヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエ等を総称してノビエと呼ばれます。日本を含むアジア、アメリカのアジア,アメリカの水湿地に広く分布しています。日本では明治時代まで主食用として栽培されてきた歴史があります。
ほふく稈は長く横に這い、滑らかで,節から発根します。高さは,10~40cm程です。葉は線形で、短く先は尖っています。
ヒエの特徴
ヒエは水田,水路内や,水田周辺の畦畔,溝などに生えます。ひとたび発生,定着してしまうと,株やほふく稈の除去が大変困難になってしまいます。
まとめ
稲作につきものの水田雑草。水田には様々な雑草が生えますが、ヒエ(タイヌビエ、ケイヌビエ、ヒメタイヌビエ、イヌビエ等を総称してノビエ)は水田雑草の代表格です。本記事がお役に立てれば幸いです。