クロルピリホスは有機リン系の殺虫成分で、農薬やシロアリ駆除に使われています。農薬名では、ダーズバンが有名です。日本では特に、2008年に中国産の冷凍食品から検出されたことから、よく認知されている成分と言えるでしょう。
ここでは、クロルピリホスとはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
クロルピリホスとは、どんな殺虫剤?
クロルピリホスは、主にクミアイ化学工業や日産化学、アグロカネショウが販売するダーズバンという、昆虫の神経系を阻害するタイプの殺虫剤の中でも、最も種類が多い、有機リン系化合物の殺虫剤の成分で、広範囲の害虫に効果を発揮する薬剤です。
有機リン化合物系の殺虫剤は様々なものがあり、代表的なものでは、EPN、オルトラン、カルホス、ダイアジノン、ネキリエースK、ネマトリン、マラソン、ラグビーなどがあります。
具体的には、食毒や接触毒により昆虫の中枢神経系のアセチルコリンエステラーゼを阻害し、死に至らしめる効果があります。
クロルピリホスを主成分とする農薬ダーズバンのRACコードは、IRAC「1B」(有機リン系)で、形態は粒剤、水和剤、乳剤があります。適用作物は幅広く、果樹、野菜、いも、豆、花き、樹木等があります。
クロルピリホスのIUPAC系統名は、チオリン酸=O-(3,5,6-トリクロロピリジン-2-イル)=O,O-ジエチル O,O-diethyl O-(3,5,6-trichloropyridin-2-yl) thiophosphate です。
ダーズバンについて
ダーズバン(dursban)はクロルピリホスを有効成分とし、水和剤(ダーズバンDF)、乳剤、粒剤のタイプがあります。クロルピリホス含有率は、水和剤が75.0%、乳剤が40.0%、粒剤が3.0%になります。
シンクイムシ類、ハマキムシ類、カイガラムシ類等の同時防除ができること、そして、速効性、残効性、耐雨性に優れていることが特徴です。
例えば、ダーズバンDFは以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。また、乳剤と水和剤は希釈して使用します。希釈については下記に詳しく解説しています。
クロルピリホスにまつわる論点
クロルピリホスは、その強い効果中枢神経系のから、人体や生物、生態系に対して毒性や影響があるのではないかといった、様々な懸念、論点があります。
シックハウス症候群を引き起こす?
クロルピリホスは農薬だけではなく、古くからシロアリ駆除剤(防蟻剤)に使われてきました。
しかしながら、クロルピリホスはシックハウス症候群を引き起こす原因物質の1つといわれ、平成12年12月には室内濃度の指針値(厚生労働省:1μg/m3、小児の場合0.1μg/m3)が設定され、平成14年7月の建築基準法の改正によりクロルピリホスを使った建材の使用が禁止されています。
EU(欧州連合)で農薬承認の取り消し
欧州連合(EU)での、食品の安全性評価を担う欧州食品安全機構(EFSA)で、2019年8月にクロルピリホスの暫定的な安全性評価を公表しました。
結果、ごく少量の摂取でも子どもの脳の発達に影響を及ぼす可能性を指摘し、禁止を提言。これを受けてEUは、2020年1月末、クロルピリホスの農薬としての承認を取り消しています。
また、アメリカでもニューヨーク州、カリフォルニア州、ハワイ州でクロルピリホスを禁止しています。