殺虫剤アニキは、三井化学アグロ(株)が開発した有効成分レピメクチンを含む殺虫剤で、チョウ目、アザミウマ目、カメムシ目、ハエ目などの害虫に大きな効果が期待できます。
ここでは、農薬アニキとはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
アニキ乳剤とは、どんな殺虫剤?
アニキ乳剤は、三井化学アグロ(株)が開発した、2010年に農薬登録された新しい殺虫剤です。
有効成分のレピメクチンとは、害虫の抑制神経系に作用するマクロライド系の化合物です。接触毒と食毒、両方の作用により速効的な殺虫効果を示します。
また、有効成分は環境中で容易に分解する性質を持ち、普通物であるため人畜に対する毒性が低く、ハチ類など有用昆虫に対する悪影響も小さいという特徴があります。
アニキ乳剤の有効成分、性状
- レピメクチン・・・1.0%
有効成分のレピメクチンは、害虫の抑制神経系に作用するマクロライド系の化合物で,抑制性神経系に作用し、神経興奮が伝達されないようにし、本剤を処理された害虫は,外部からの刺激に対して反
応を示さなくなり,麻痺したかのように動かなくなり,静かに死に至ります。
性状は、淡黄色澄明可乳化油状液体になります。乳剤なので、水で希釈して散布します。農薬の希釈については下記をご参考ください。
アニキ乳剤の特長
アニキ乳剤の最大の特長は、訪花昆虫・天敵等の有用昆虫に対する悪影響が少ないこと,そして、低薬量で既存の農薬に抵抗性を示している防除しにくい害虫にも効果を発揮すること、です。
このため、IPM(総合的害虫管理)に非常に適した薬剤であるといえます。
農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「科学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。
- 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
- 「科学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
- 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
- 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法
使用するときに注意したい点
その他
天敵に高い安全性があることが確認されていますが、ミツバチ、蚕には悪影響があるため、ミツバチの巣箱や桑(クワ)には薬液がかからないように注意しましょう。
効果・薬害・毒性
アニキ乳剤は以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
作物名 | 適用病害虫名 |
---|---|
イチゴ | ハスモンヨトウ |
トマト ミニトマト | オオタバコガ ハスモンヨトウ ハモグリバエ類 コナジラミ類 ミカンキイロアザミウマ |
ナス | オオタバコガ ハスモンヨトウ トマトハモグリバエ |
キャベツ | コナガ アオムシ ハスモンヨトウ ハイマダラノメイガ タマナギンウワバ |
ハクサイ | コナガ アオムシ ハスモンヨトウ ハイマダラノメイガ |
ダイコン | コナガ アオムシ ハイマダラノメイガ |
ブロッコリー | コナガ |
レタス | オオタバコガ ハスモンヨトウ |
ねぎ | シロイチモジヨトウ |
茶 | チョノコカクモンハマキ |
みかん | チャノキイロアザミウマ ミカンハモグリガ アゲハ |
かんきつ (みかんを除く) | チャノキイロアザミウマ ミカンハモグリガ アゲハ |
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数(年限)は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- レピメクチン 2〜4回
レピメクチンを含む農薬の使用可能回数(年限)は、適用作物によって2〜4回と変わってきます。適用作物と使用回数をよく確認するようにしましょう。また、使用時期(収穫何日前など)もしっかりチェックしてください。
アニキ乳剤の効果を高めるために
薬液を広範囲にまく際には、効果的に散布できる散布機(噴霧機)やスプレイヤーの使用をおすすめします。
まとめ
アニキ乳剤の最大の特徴は、新規系統の殺虫剤のため、既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高いこと、また高い即効性(速効性)があること、訪花昆虫・天敵等の有用昆虫に対する悪影響が少ないため、IPM(総合的害虫管理)に非常に適した薬剤であることです。
チョウ目害虫を中心に幅広い殺虫スペクトラムを持つアニキ。水稲などには適用がありませんが、畑地、果樹には非常に防除のローテーションに組み入れやすい液剤、製品です。