水田畦畔、畑作に幅広く使える除草剤プリグロックス(preegloxl)。プリグロックスは非常に速効性があるので圃場でよく使われ、農家の方には馴染みが深い除草剤です。
ここでは、プリグロックスとはどんな除草剤なのか、効果や希釈倍率と使い方のポイントを説明していきます。
プリグロックスとは、どんな除草剤?
プリグロックスは、ジクワットジブロミド、パラコートジクロリドを有効成分とする、シンジェンタが販売するジクワット・パラコート液剤です。
プリグロックスの有効成分、性状
- ジクワットジブロミド 7.0%
- パラコートジクロリド 5.0%
ジクワット (diquat) とは、ビピリジニウム系に分類される除草剤で、どんな雑草にも効く非選択性除草剤です。土壌に付くとすくに効果を失うため、散布後に播種、定植を行いやすいという利点があります。
パラコートもジクワットと同じく、ビピリジニウム系に分類される除草剤の一つで、接触した部分だけを枯らす特徴を持っています。非常に速効性があり、土壌に付くとすくに効果を失います。どちらも毒性が強いことでも有名です。
性状は、暗青緑色水溶性液体になり、水に希釈して使用します。
プリグロックスの特長
プリグロックスは以下の特徴がポイントです。
- 散布すると1日で効果が出る速効性
- 散布後に雨が降っても、気温が低くても安定した効果
- かかったところだけ枯らすので、作物を栽培中でも使いやすい
- 土壌に触れるとすぐに不活性化するので、散布後すぐに播種、定植を行いやすい
- 適用作物が非常に幅広い
グリホサート系除草剤とは異なり、多年生雑草などの根までは枯らさないので、畦畔、傾斜地の崩れを防ぎ、モグラの移動を抑制してあぜの漏水の防止を促進します。
使用するときに注意したい点
時期
プリグロックスは非常に幅広い使用時期で使えますが、そもそも除草剤は雑草が大きく生長した状態よりも小さい状態の方が効き目があるため、散布はなるべく生長する前に行いましょう。
希釈培率
プリグロックスは、水で希釈して使います。
ラベルの適用表には、作物や適用場所ごとに倍率等が決まっています。自分の使う場所や雑草にに合わせて使いましょう。除草剤には、希釈倍率の記載がなくて、代わりに薬量と希釈水量が書いてあります。これは作物への薬害を防ぐために、面積あたりの薬剤使用量が重要だからです。希釈倍率を求めるのは簡単で、希釈水量から薬剤使用量を割るだけです。
移植水稲の一年生雑草の希釈率は100倍、水田畦畔のスギナなどの多年生雑草の希釈倍率は50倍で散布することができます。
適用作物 | 適用雑草 | 薬剤使用量 | 希釈水量(通常散布) | 希釈倍率 |
---|---|---|---|---|
移植水稲 | 一年生雑草 | 800〜1000mL/10a | 100〜150L/10a | 100倍~187.5倍 |
水田作物(水田畦畔) | 多年生雑草 | 1000〜2000mL/10a | 100〜150L/10a | 50倍~150倍 |
樹木等 | スギナ | 1000〜2000mL/10a | 100〜150L/10a | 50倍~150倍 |
効果・薬害・毒性
プリグロックスは本当に多くの適用作物があります。例えば、かんきつ、かんしょ、だいこん、ほうれんそう、らっかせい、アスパラガス、豆類、たまねぎ、みょうが、きゅうり、スイカ、レタス、にんじん、ピーマン、カリフラワー、にんにく、キャベツ、パセリ、こんにゃく、メロン、ブロッコリーなどです。詳しくは下記を参考にしてみてください。
展着剤や希釈についてのより詳しい情報は下記を参考にしてみてください。プリグロックスに使う展着剤は非イオン系展着剤を使用するようにしましょう。
その他
除草剤全般の使用する際は、服装等、注意することがあります。特にプリグロックスは毒物に該当するので、使用には最新の注意が必要です。下記記事を参考にしてみてください。
まとめ
除草剤を上手に使うことで病害虫の発生を減らし、殺虫剤の使用量を抑えることができます。田んぼに生えてくる雑草、また全般的な防除方法や除草道具については、下記を参考にしてみてください。
(補足)除草剤あれこれ
農耕地で使用できるものとできないものがあります
ラウンドアップやサンフーロン、バスタは、畑作や果樹園などの田畑、農耕地で使用することができますが、グリホエースなど、グリホサート系除草剤でも農耕地で使用できないものもあるので、使用の際は必ず確認するようにしましょう。
具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。また、展着剤を使って効果を上げる方法もあります。
除草剤の希釈方法について
液体の原液の除草剤や液肥、薬剤は、水で希釈して薄めて使用する必要があります。下記では、展着剤、乳剤、水和剤などの希釈方法や、面倒な希釈倍率、水量、液量の計算を楽にする方法を説明しています。
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。