おいしくてかわいいさくらんぼ。さくらんぼの実は桜桃(おうとう)とも呼ばれます。日本ではセイヨウミザクラ(西洋実桜)が食用のサクランボの木の種類の代表で、佐藤錦や紅秀峰(べにしゅうほう)もここに属します。観賞用としても人気があります。
この記事では、さくらんぼの木への肥料の時期ややり方、おすすめの肥料などをご紹介します。
さくらんぼの木について
肥料の話をするまえに、さくらんぼの木について知っておきましょう。植物の栽培をするうえで、その植物の特徴を知っておくことは大切です。自生地や生育期などを知ればその植物がどのような環境で育てると、枯れずに元気に育つのかわかってきます。
基礎知識
学名 | Cerasus avium(Prunus avium) |
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属名 | バラ科 サクラ属 |
原産地 | ヨーロッパ西部・アジア西部トルコ周辺 |
樹高・草丈 | 1m~3m |
耐寒性等 | 耐寒性:強い 耐暑性:強い |
収穫期 | 5月下旬から6月中旬 |
さくらんぼの木は、バラ科の落葉果樹です。庭植えの方が果樹は多くとれますが鉢植えでも育てることはできます。多くの品種は自家不結実性のため、異なる品種を一緒に育てる必要があります。多くの収穫を望むのであれば人工受粉が必要です。しかし1本でも結実する品種もあります。
品種
さくらんぼの木では、日本ではセイヨウミザクラ、別名カンカオウトウが有名ですが比較的寒い地域を好みます。
暖地や関東などで家庭で育てるには1本で結実する「中国オウトウ」別名ミザクラ、ダンチオウトウ(暖地桜桃)もおすすめです。
またさくらんぼの栽培は難しいといわれますが、ユスラウメ(山桜桃梅)は他の種類に比べ栽培が容易なので、こちらもおすすめです。
肥料の時期と与え方
肥料を与える時期
それではさくらんぼの肥料の時期や肥料の種類について説明していきます。庭植えの場合は年2回、秋に元肥として有機(有機物)肥料もしくは緩効性肥料を施し、果実が終わった後のお礼肥として速効性の肥料を与えます。
鉢植えの場合は、年3回、2月と落葉後に緩効性肥料を、収穫が終わった後のお礼肥に速効性肥料を与えます。
さくらんぼの木 肥料の年間スケジュール
それでは、さくらんぼの木に与える肥料の季節ごとのスケジュールを、庭植え、鉢植え別に説明します。
- 春
春は、開花の時期です。庭植え・鉢植えとも肥料は不要です。
- 夏
- 秋タイトル
鉢植えは落葉したら、緩効性肥料を置き肥します。
庭植えは、11月に有機質肥料を施肥します。株の周りに4か所ぐらい穴をあけて有機質肥料を施します。
- 冬タイトル
庭植えは、11月に肥料を与えたら肥料は与えません。鉢植えは2月に緩効性肥料を置き肥します。
冬は植え付け、植え替えの時期です。元肥として緩効性肥料を少なめに施肥します。
肥料をあげすぎて肥料焼け?
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。成長が楽しみで、ついつい肥料を多くあげたくなってしまうかもしれませんが、一般に肥料をあげすぎると、かえって植物が弱ることがあり、樹や枝葉に障害が生じることもあります。肥料は過多にならないよう注意しなくてはいけません。また、苗(苗木)は成木に比べ弱いので、特に苗(苗木)の段階では施肥量を減らす工夫が必要です。
おすすめのさくらんぼ(さくらんぼの木)の肥料
さくらんぼの木を育てるのにおすすめの肥料をご紹介します。
さくらんぼにおすすめの有機肥料、有機配合肥料
さくらんぼにおすすめの有機肥料としては、油かす、鶏ふん、米ぬか、牛ふんなどがあります。油かすは窒素成分を多く含んでいるので施用する際には施用量に気をつけましょう。また、鶏ふん、米ぬかはリン酸などの豊富に含まれていますが、窒素成分が不足する可能性もあるので、その場合には緩効性化成肥料と併用してみましょう。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。さくらんぼ農家では、鶏糞はお礼肥として使われていることが多いようです。
牛ふん
牛の糞を原料に生産した有機(有機物)肥料です。牛ふんは、カリの成分が多く含まれており土壌改良にも効果があります。土壌改良には腐葉土やパーク堆肥などと合わせて使いましょう。元肥として使われることが多いです。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。
さくらんぼにおすすめの化成肥料
ハイポネックス(Hyponex)
ハイポネックスジャパンが製造販売する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」という肥料もあります。追肥に利用する錠剤タイプで、置くだけでOKという簡便な肥料です。窒素:リン酸:カリ=8:10:9で配合されているほか、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウムも加えられています。
また、ハイポネックスには「ハイポネックス原液」などの液体肥料シリーズもあり、樹勢が弱っているときに与えると良いでしょう。さらにハイポネックスにはマグァンプなど固形肥料のシリーズも販売されています。適している肥料を選択して、使ってみましょう。
マイガーデンベジフル
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得していることや、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
追肥として、「マイガーデンベジフル」が有効です。また、「マイガーデン液体肥料」は速効性の液体肥料なので、樹勢が弱り始めたときに薄めの濃度で与えてあげると良いでしょう。使用方法は各商品のラベルの指示に従ってください。
地植えにおすすめ!打ち込み型肥料グリーンパイル
ちょっと変わった肥料に打ち込み型のグリーンパイルがあります。グリーンパイルは樹木に理想的なバランスで必要な栄養:N(窒素)-P(リン酸)-K(カリウム)を配合した樹木(植木・庭木)専用の打ち込み型肥料です。棒状なので打ち込むだけで施肥が簡単にできます。地植えの樹木におすすめの肥料です。
その他 さくらんぼの栽培で気をつけること
栽培環境・水やり
日当たりの良い場所を好みます。なるべく庭植えの場合は日に当たる場所に植え付けしてください。鉢植えもベランダなど日の当たる場所で管理します
水やりは、庭植えは特に不要です。夏に乾燥が続くときに与えてください。鉢植えの場合は表土が完全に乾いてから、鉢底から水が出るまでたっぷり与えます。
剪定
「サクラ切る馬鹿、ウメ切らぬ馬鹿」ということわざがあるように、桜の枝は、切ってはいけないと思っている方も多いのではないでしょうか。
さくらんぼの木は桜の仲間です。このことわざは桜は、切り口からは腐朽菌が侵入しやすく、そこから枯れ込みやすいため。家庭でも細い枝などは剪定ハサミでカットし、切り口をきちんとケアすれば剪定は可能です。親株の切り口に、「トップジン M ペースト」などの切口癒合剤を塗っておきましょう。
適期は冬と夏です。長くなりすぎた枝や枯れた枝などはカットしても問題ありません。あまり太い枝は剪定しないようにします。あまり大きくしたくない場合は、夏に長く伸びそうな新梢を摘心するとよいでしょう。
病害虫
さくらんぼの木はアブラムシ、カイガラムシ、カメムシ、ハダニ、コスカシバ、シンクイムシ、ナメクジ、ハマキムシの幼虫、ネコブセンチュウが発生して寄生しやすいです。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、発見した時はすぐに駆除し、防除を心掛けるようにしましょう。
多く発生している場合は、殺虫殺菌スプレーの「ベニカ」シリーズで害虫退治するのがおすすめです。(ホームセンターのガーデニング・園芸、ガーデニンググッズコーナーによく置かれています)
また病気としては灰星病、褐斑病、胴枯れ性、炭素病などに病気にかかりやすいです。予防には殺菌剤も有効です。
さくらんぼ(さくらんぼの木)の肥料を購入
ホームセンターなど店舗で購入する
上記で紹介した肥料は、コメリなどのホームセンターでも販売されています。また、ダイソーなどの100円均一でも有機肥料は販売されていることがありますが、発酵されていないものも多いので注意してください。
通販で購入する
店舗で実物をみて購入することも良いことですが、「その店舗での取り扱いがない」ことや「そもそもその商品がホームセンターなどの小売店で販売されていない」ことも多いです。肥料や土は重いのでAmazonや楽天市場など様々なECサイトで農業・園芸用品が取り扱われています。店舗よりも安く購入できる場合も多いですので、一度のぞいてみましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。ここまでさくらんぼの木の肥料について、おすすめの肥料や与え方について説明してきました。さくらんぼは、苗から育てると実を収穫できるまで4年~5年かかるといわれています。
おいしい佐藤錦を家で育てるのは少し難しいですが、花や紅葉も楽しめるさくらんぼの木。品種を選べば家庭でさくらんぼ狩りもできてしまいます。さくらんぼは追熟しないので、完熟した実を生で食べれるのは自分で育てた人の特権でもあります。またジャムや果実酒としても使えるので、ぜひさくらんぼの栽培にチャレンジしてみてください。