立枯病(立ち枯れ病)は、土壌感染し、苗が赤紫色を帯び,下葉から黄化して落葉し、やがて枯れてしまう恐ろしい病気です。
ここでは、立枯病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。
立枯病とはどんな病気?
立枯病とは?
立枯病は、放線菌の一種の病原菌が土壌を汚染し、土壌に定植された苗に感染する病気です。土壌伝染性の病害ではありますが,極いもおよび,苗床の土壌汚染が本圃の汚染につながる可能性もあります。病原菌は前年の被害植物上や土中で胞子や菌糸の状態で越年します。やがて地際部の植物の気孔から侵入してきます。
発病は地温25~40℃で起こり,35℃発病のピークを迎えます。つまり、長期間のマルチ栽培の場合は発病を大きく助長してしまいます。
また土壌のpHも発病に大きく影響し、pHが5.0以下では発病がきわめて軽微であるのに対して6.0以上で激化するのも特徴です。
立枯病の症状
立枯病に犯された土壌に定植した苗は、土壌から感染し、苗は植付け後まもなく、葉が赤紫色を帯び,下葉から黄化して落葉し始めます。
茎は節間がつまって伸長しなくなり,のちに萎凋枯死してしまいます。根は褐変または黒変してしまい,軟化腐敗(腐る)して脱落します。症状のかるい株では,苗は生育してつるの伸長や塊根を形成します。
変色した苗は、下の写真のように萎凋し、遂には枯死してしまいます。
立枯病に効果がある農薬
立枯病の科学的防除には、土壌消毒を行うのがおすすめです。ここでは有効と言われているクロルピクリン剤を紹介します。
クロルピクリン錠剤
クロルピクリンは、臭化メチル以外の土壌消毒方法として利用されます。クロルピクリンのガスは空気よりはるかに重く、土壌の下層まで拡散し、土壌中の微生物や雑草の種子などに非選択的に効果を及ぼします。
クロルピクリン錠剤は刺激臭による作業の困難性を改善するため,有効成分を錠剤化して水溶性のフィルムに包んだものです。このためハウス内でも使用できます。また、周辺へのガス放出の心配がないため、住宅近接地でも使用できます。
使い方は30×30cm毎(15cmの深さ)1錠処理が基本になります。また、ゴボウなどの深根性作物や病原菌が深層まで分布するような病害の場合には,より深い位置に処理することで,高い防除効果が得られます。
土壌消毒剤以外の農薬
下記のように、他の病害の防除(カビ(糸状菌)によるうどんこ病、べと病、灰色かび病など)にも使える予防剤としての農薬もあります。
アフェットフロアブル(FRAC 7)
担子菌、子のう菌、不完全菌に属する幅広い植物病原菌に対し、高い活性を示す新規なチオフェン系殺菌剤で、多くの病害に優れた予防効果を有する薬剤です。
トップジンM水和剤(FRAC 1)
速攻性と残効性を有し、優れた効果が長続きする、広範囲の作物の病害に基幹防除剤として使用できるベンゾイミダゾール系殺菌剤です。低濃度で高い効果があり、作物の汚れが少なく、定期的な予防散布に、激発時のまん延防止に優れた効果を発揮します。
ダコニール1000(FRAC M)
広範囲の病害に有効な定番の殺菌剤です。
このほか、タチガレン、オーソサイド水和剤、ベンレート、ランマンフロアブル、バスアミド、リゾレックスなどがあります。
上記の農薬は原液を水で溶かして薄めて使用する液剤、乳剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。
化学的防除以外の防除方法
pHを適正に保つ
立枯病は、pHが5.0以下では発病がきわめて軽微であるのに対して、6.0以上で激増する傾向があります。このため、pHを6未満に保つことは発生の増加を防ぐのに有効です。
地温の上昇を防ぐために工夫する
ポリマルチを利用した長期間のマルチ栽培は地温を上昇させ、立枯病を増加させてしまいます。植え付けの時期はマルチを止めるなど、マルチの使用期間を短くする、白黒ダブルマルチを利用するなど,地温の上昇を防ぐための工夫をすることは有効です。
連作を避ける
発生が見られた時はもちろん、連作を避けるのは立枯病の予防に有効です。
周りをしっかり除草する
圃場の周りに雑草が多くあるとその雑草に病害虫が発生し、繁殖、促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。(この他、イネ科雑草、広葉雑草、多年生やその他の厄介な雑草(スギナやヤブガラシ、スズメノカタビラなど))は個別の対策、防除記事もあります。
まとめ
立枯病は観葉植物やアスパラガス、トマト、ナス、ピーマンなどの野菜類など幅広い作物で発生し、近年ではキクの新病害「ピシウム立枯病」も現れています。
ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。
発生してからの圃場の回復は非常に難しいので、予防でしっかり防除することを心がけましょう。
若い葉や茎の表面にうどん粉をまぶしたように白いかびが生えるうどんこ病の防除は下記を参考にしてみてください。市販のベニカ、ベニカスプレーなども使えます。
(補足)殺虫剤など、他の農薬について
農家webでは、下記のような害虫別のコンテンツがあります。気になるコンテンツがあれば、ぜひ参考にしてみてください。
栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
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農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
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「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
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