スベリヒユは赤紫の茎が地面を這うように広がる、畑地でよく見られる雑草です。山形では「ひょう」と呼び、からし和えなどにして食べる野菜としても有名です。
しかし畑に一度発生すると、その繁殖力から非常に厄介な雑草とも言えます。ここでは、スベリヒユを、どうやって駆除し、防除していくのか、おすすめの除草剤を中心に説明していきます。
スベリヒユの特性
科 | ナデシコ目スベリヒユ科 |
種類 | 一年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Portulaca oleracea |
別名 | グンバイウチワ、ヨッパライグサ、イワイヅル コオロギグサ、ホトケミン、ツルツル、ヨッパライ |
スベリヒユは温帯から熱帯まで、世界中に分布し,日本では全国で見流ことができます。葉っぱが多肉質で緑色、茎は赤紫色で下部は地面を這うような生え方をしています。畑、道ばたに多く生育し、特に野菜畑によく見られることが特徴です。
生態は、種子で繁殖する一年草で、5月頃から発芽します。出芽深度は浅く,2cmが限界で,0.5cm前後、夏に開花し、黄色い小さい花を付けます。繁殖力が強いのが特徴です。
山形では「ひょう」、沖縄では「ニンブトゥカー」と呼ばれ、葉物野菜の不足する夏に重宝される野菜として食用となっている点も特徴です。
スベリヒユは西暦500年頃から漢方薬として有名で、抗菌作用、抗炎作用、抗アレルギー作用があ流と言われています。また、健康成分として注目されているオメガ3脂肪酸も含まれていて、薬草、健康食としての側面を持っています。食用としてのスベリヒユは変種タチスベリヒユ(P. oleracea L. var. sativa (Haw.) DC.)というもので、茎が直立していて,自生はしていません。
スベリヒユの駆除方法
草刈り、草取りでの駆除
生育初期は草かき、草むしりで防除できます。出来るだけ早く取り除くようにしましょう。生育がある程度進んだ場合は,手取り、または草かきで除草し,畦畔か道ばたに運び出し,堆積させ、枯死させましょう。畑に置いておくと土壌と活着して復活します。
除草道具については下記を参考にしてみてください。
中耕した場合は、後に茎葉の一部が地上に露出していると再生してしまうので、土壌中に完全に埋め込むようにしましょう。
除草剤での駆除
土壌処理剤
スベリヒユは出芽深度が浅いため、発生前、発生初期に土壌処理剤で防除するのが効果的です。
ゴーゴーサン乳剤、ゴーゴーサン細粒剤F
ペディメタリンを成分とし、選択性の土壌処理剤の代表的な除草剤です。イネ科雑草と広葉雑草両方の一年草に効果を発揮します。キャベツ、白菜、レタス、にんじんと非常に多くの作物で使用することができる除草剤です。
乳剤は、撒いた後に大雨が降ると被膜が破れてしまう為、天気が心配なときは細粒の方を使用した方が良いでしょう。
トレファノサイド乳剤、トレファノサイド粒剤
トリフルラリンを成分とするジニトロアニリン系の除草剤で、発芽時の雑草の成長分裂を阻害することで、雑草を抑える薬剤です。イネ科の雑草(メヒシバ、ノビエ、イヌビエ、スズメノテッポウなど)に優れた効果を発揮し、スベリヒユ、ハコベにも効きます。また、非常に多くの作物で使用することができる点もメリットです。
フィールドスターP乳剤
酸アミド系の除草成分ジメテナミドPを有効成分とする野菜・畑作用土壌処理型除草剤です。ノビエ、メヒシバなどの一年生イネ科雑草をはじめ、カヤツリグサ、ヒユ類、スベリヒユに効きます。キャベツ、ブロッコリー、玉ねぎ、大豆、枝豆、とうもろこしや馬鈴薯に使用可能です。
商品名 | ゴーゴーサン | トレファノサイド | フィールドスターP乳剤 |
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概要 | |||
タイプ | 土壌処理剤 | 土壌処理剤 | 土壌処理剤 |
有効成分 | ペディメタリン | トリフルラリン | ジメテナミドP |
効果がある雑草 | 一年生イネ科雑草 一年生広葉雑草 | 一年生イネ科雑草 多年生イネ科雑草 | 一年生イネ科雑草 |
適用作物 | キャベツ 白菜、レタス にんじん 等 様々 | 非常に様々な作物 | キャベツ ブロッコリー 玉ねぎ、大豆、枝豆 とうもろこし 馬鈴薯 |
葉茎処理剤
スベリヒユが発生、生長してしまった場合は、生育初期に茎葉処理剤を用いて駆除することになります。作物の心配がある場合は、下記のような選択制の除草剤を使用すると良いでしょう。
プリグロックスL
速効性を持つ、パラコート系の除草剤です。有効成分が光により変化して草を速効的に枯らします。葉や茎をすぐに枯らすので、1年草のスベリヒユにぴったりです。光があれば温度の影響をほとんど受けず、展着剤添加で効果がアップします。
バサグラン液剤
ベンタゾンナトリウム塩を成分としています。ベンタゾンは、茎葉部から吸収され、植物の光合成を阻害し、葉部白化させ枯死に至らせる効能を持ち、セレクト乳剤の逆で、スベリヒユを含む広葉雑草に効果を発揮します。逆にイネ科雑草や大豆には効かないため、よく大豆畑で使用されます。
作物の心配がなければバスタ、ザクサのような非選択制のグルホシネート系除草剤がおすすめです。逆にグリホサート系除草剤はスベリヒユの茎や軸まで枯らし難く、残ってしまう割合が多いため、おすすめしません。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
その他の駆除方法
熱湯をかける
その他植物全般を枯らすのに効果がある方法として、枯らしたい植物に熱いお湯、つまり熱湯をかける方法があります。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼けて、枯れますが、地下茎や根までは浸透しないため、地上部にしか効果が出ません。また、土壌に熱湯をかけることで、土壌内部の細菌などに悪影響が出てしまいますし、熱湯を雑草にかけることは大量に行うことは難しく、費用対効果も合わないかと思います。このため、スベリヒユを駆除するために熱湯をかけることはお勧めできません。
塩を撒く
最近、塩を撒くことで、除草することを勧めている記事、また除草塩という商品などが見受けられます。確かに塩分濃度が高くなると雑草は枯れるので、除草の効果はありますし、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぎます。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨などで塩が流れ出て、隣の土壌にも多大な被害を及ぼします。
このため、除草に塩を使うことはくれぐれも避けてください。
(農耕地以外での)スベリヒユの防除方法
除草剤(土壌処理剤)での防除
土壌処理剤は、まだ雑草が生えてきていない、また草丈が低い時期に散布し、地面に膜を張って、新しく生えてくる雑草を抑えるものになります。春先などにしっかり撒けば、長期間防ぐことができます。ここでは、代表的なおすすめの土壌処理剤をご紹介します。
クサノンEX粒剤 (住友化学園芸(株))
ターバシル・フルミオキサジン、2種類の有効成分で、スギナ・ススキ・ヤブガラシ、シロツメクサ、ヒメジョオン、シロザ、アレチノギクなど各種雑草の葉や茎だけでなく根までスッキリ枯らすことができる微粒の土壌処理剤です。低温時にも使え、植栽地を除く樹木等の周辺地に撒くことを想定した薬剤です。
カダン除草王(フマキラー(株))
カダン除草王の成分カルブチレートは、非ホルモン型吸収移行性の尿素系の微粒(粒状)除草剤であり、雑草・草の光合成阻害により除草します。
カダン除草王は、細粒の非選択制除草剤で、メヒシバ、オヒシバ、スズメノカタビラ、ブタクサ、ツユクサ、カヤツリグサ、コニシキソウ、ハコベ、エノコログサ、カラスノエンドウなど一年生雑草といわれる一般的な雑草から、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、スギナ、カタバミ、オオイヌノフグリ、オオバコといった多年生広葉雑草、ススキ、チガヤといった多年生イネ科雑草、ササ類など枯れにくい雑草まで、根っこまで枯らすことができます。効果は最大約6ヵ月間と長期間持続することも特徴です。
非選択性で全ての植物、庭木に影響を与えるため、植物、庭木を植えている、植える予定の花壇やまた畑、水田といった農地ではなく、道路や空き地等で撒けることを想定した商品です。
ネコソギパワー粒剤 (ネコソギトップW) (レインボー薬品(株))
アミカルバゾン、ブロマシルを成分とし、粒のまま地面にパラパラ撒くタイプの粒状の除草剤で、除草効果が約5~9ヶ月間という非常に長期間持続するのが特徴です。1~2週間で枯れ始め、30日前後でほとんど枯らすことができ、成分が土壌に一定期間とどまるので、新しい雑草の発生を予防できます。
防草シートでの防除
スベリヒユをしっかりと駆除した後、その場所に防草シートを貼ることが可能であれば、防草シートを貼ることは、非常にに有効な防除になります。防草シート(除草シート)は、光をほぼ遮光することで、植物に光合成を行えないように抑制するもので、大変有効です。
防草シートについては、下記のコンテンツに詳しく説明していますので、防草シートを貼ることが可能な方は、是非参考にしてください。
まとめ
スベリヒユは非常に強い繁殖力で、どんどん繁茂します。生い茂る前に予防、早期防除をするようにしましょう。
その他の庭や畑に生える雑草にお困りの方は、難雑草(イタドリ、スギナ、竹、苔、イヌビエなど)の駆除、除草についてまとめた下記コンテンツをどうぞご参考にしてみてください。
また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、ブレード(チップソーなど)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。