クズは除草剤が効きにくく、土中に巨大な地下茎を形成し、草刈りをしても逆にどんどん増えてしまうという、非常に厄介な雑草です。また茎が蔓状にどこまでも伸びて絡みつき、その繁殖力の強さからグリーンモンスターとも呼ばれます。
太陽光パネルを設置している場所で発生して繁殖してしまうとパネルを大きな葉が覆い、大きく電力生産量を損なうことから、クズの除草、防除は電力業者にとって緊急の課題です。ここでは、クズの生態と、駆除、防除するにはどんな方法があるのか、徹底解説していきたいと思います。
クズとは?
クズの特徴・生態
葛(くず・クズ)は、日本全土だけでなく、中国やフィリピン、インドネシアでも見られる多年草です。日本での歴史は古く、吉野葛で有名なように、肥大した地下茎、塊根が多くのデンプンを含むことから「葛粉」という食料として重宝されてきました。湯で溶かした葛湯、また生薬として風邪や胃腸不良に葛根湯など、私たちの日常に浸透しています。
クズはヤブカラシと同じく、地下部で栄養繁殖し、地上茎を萌芽して、物体に絡み、巻き付いて伸長していきます。地面を這う「つる」は10メートル以上伸び、地下茎はサツマイモくらいの大きさまで成長する塊根となります。
筆者も土中がクズだらけの耕作放棄地を耕したことがあります。最初はさつまいもかと思うほど塊根が大きくなっていて、そこから生えている地下茎は手ではちぎれてしまって、除去することはできませんでした。
科 | マメ科 |
種類 | つる性の多年草 |
分布 | 日本全土 |
学名 | Pueraria montana var. lobata |
別名 | – |
クズの葉っぱは幅広くて大きく、花期は8〜9月になります。濃紺紫色の花を下から順に咲かせていきます。
生長した葛(くず・クズ)は非常に広範囲まで近く期、根を張り巡らすため除去するのが困難になります。アメリカでは、その繁茂力、拡散力の凄さから、有害植物ならびに侵略的外来種として指定され、駆除が続けられている程の難雑草です。
また、クズの特徴として、地上部を刈り取っても除草に効果なく、より繁殖してしまう手助けになること、また一般的に除草剤が効きにくく、駆除しようとすると、他の雑草に比べてかなり大変なことが挙げられます。
発生しやすい条件
日本では林、緑道、畑地、茶園,樹園地などの圃場,生垣、空き地など,広い範囲に生育します。有機質の豊富な,肥沃な土壌の部分に発生しやすい雑草です。樹木の近くに繁殖すると樹木に絡まり、樹木の成長を阻害してしまうため、定期的に除草する必要があります。
クズの防除方法
防除の基本的な考え方
クズは根、地下茎が繁茂する多年生雑草なので、地上部を草刈り、除草しても本質的な解決にはなりません。長期に及ぶ防除が必要になってきます。そして、地下茎を枯らさなければ駆除できません。
葛(くず・クズ)の難点は、他の雑草よりも除草剤が効きにくいことです。
高濃度に希釈した除草剤を直接塗る方法を毎年繰り返すか、下記のような、除草剤を染み込ませた楊枝のようなピンを根茎に直接刺して枯らしましょう。刺す本数の目安は、葛(くず・クズ)の直径が2cm以下なら1本、2〜5cmなら、2〜5本、5cmを超えている太いものは、5〜10本くらいを刺すのがいいでしょう。有効成分のイマザピルが注入され、クズを根絶します。
また、ケイピンエースの他に、液剤を株の頭に一押滴下するだけでクズを根まで枯らすことができる、クズコロン(主成分 MDBA(2-メトキシ-3,6-ジクロロ安息香酸ジメチルアミン))という専用の薬剤もあります。
クズに効果がある葉茎処理剤
地下部まで浸透して枯らすことができるラウンドアップ やサンフーロンなどのグリホサート系の葉茎処理剤タイプの除草剤を直接塗るのも効果的です。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV9 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
防草シートでの防除
クズを繁殖させない方法として、防草シートはかなり有効です。しっかりと地上部のクズを根元から刈った後、その場所に防草シートを貼ることが可能であれば、非常に有効な防除になります。防草シート(除草シート)は、光をほぼ遮光することで、植物に光合成を行えないように抑制するものです。シートの上に砂利などを敷けると、シートの耐久性もアップして長く持ちます。
防草シートについては、ザバーンなど優れたシートを下記に詳しく説明していますので、是非参考にしてください。ホームセンターのガーデニング・資材コーナーに行くのもおすすめです。
まとめ
クズは農家の方にとって、放置するとたちまち繁茂し、一旦定着すると撲滅が非常に難しい指折りの難雑草です。庭でも、庭木・花木に絡み付いて枯らしたりしてしまいます。本記事が防除の一助になれば幸いです。
また、つる性の雑草は、その他ヤブガラシ、ガガイモ、ヤブツルアズキ、ヘクソカズラ、アサガオ、ヒルガオ、ノウゼンカズラ、ヤマノイモ、カラスウリ、カラスノエンドウと色々ありますが、長期間土中で生育するものも多く、駆除、退治が困難な、やっかいな雑草ばかりです。
まずは早期発見、早期の撤去を軸としつつ、生育したものに対しては、直接葉茎処理剤を散布、茎に塗る方法で繰り返し枯らし、駆除をしていくことが基本になります。早め早めの対策を心がけましょう。