ハモグリバエ

ネギコガを駆除、防除する農薬について

ネギコガの幼虫の食害痕 ハモグリバエ

白い線や葉のところどころに穴を開けるネギコガ。ここではネギコガとはどういう虫なのか、その特性と、ネギコガを駆除、防除するための農薬、またその他の効果的な方法、対策についても解説します。

この記事の執筆者・監修者
農家web編集部
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そもそも、ネギコガはどういう害虫?

ネギコガとは?

ネギコガは、チョウ目アトヒゲコガ科に属する昆虫です。([英名]Allium leafminer)体長は4.5mm程で、羽を開くと1cm程、前翅の後縁中央に白色斑があるのが特徴です。

ネギコガの成虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

幼虫は胴の部分に黒い小さな点があるのが特徴で、葉に穴をあけ,表に出たのち、網のような繭をつくって蛹化します。

ネギコガの幼虫
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ネギコガの幼虫の食害痕
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

このような形態はコナガに似ており、食害痕が白い線になるところはハモグリバエにも似ていますが、葉に穴があくところがハモグリバエと異なるところと言えるでしょう。

どうしてネギコガは害虫なのか?

ネギコガの幼虫は、葉の内部を食べて、白い食害痕を残してしまいます。ハモグリバエなどと同じく、食害痕で農作物の価値を下げてしまうため、農家にとっては厄介な害虫です。また、ニラなどでは花も加害し,種子の生産を低下させてしまいます。

いつ頃発生しやすいの?

6月から10月頃が発生する時期ですが、梅雨明けの高温、乾燥状態で一気に増える傾向があります。

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ネギコガに効く農薬

ネギコガに効く代表的な農薬

有機リン系 

有機リン系殺虫剤は殺虫剤の中でも、昆虫の神経系を阻害するタイプで、殺虫剤の代表的なタイプです。代表的な有機リン系農薬は、オルトランスミチオンがあります。

ネオニコチノイド系 スタークル、モスピランなど

ネオニコチノイド系とは、90年代に登場した比較的新しい殺虫成分で、ニコチンの仲間です。ニコチン性アセチルコリン受容体と結合し、信号の伝達を阻止し、結果、昆虫は麻痺し、死に至ります。

浸透性、速効性、持続性が優れていることや幅広い殺虫スペクトラムを持つため、現在非常によく使用されている殺虫剤です。ネオニコチノイド系農薬については下記で詳しく説明しています。ご参考ください。

家庭園芸でよく使われる住友化学の「ベニカベジフルVスプレー」や「ベニカXファインスプレー」「ベニカXネクストスプレー」「ベニカベジフルスプレー」は、ネオニコチノイド系のクロチアニジンを成分にしています。

アニキ

アニキ乳剤の最大の特徴は、新規系統の殺虫剤のため、既存の殺虫剤に抵抗性がある害虫に効く可能性が高いこと、また高い即効性(速効性)があること、訪花昆虫・天敵等の有用昆虫に対する悪影響が少ないため、IPM(総合的害虫管理)に非常に適した薬剤であることです。

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メタジアミド系 グレーシア

グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。日産化学(株)が開発した新規化合物である、イソオキサゾリン系の有効成分「フルキサメタミド」が害虫の神経に作用して速攻的な殺虫作用を示します。
コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。

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ディアナSC

ディアナはマクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤で、チョウ目害虫、アザミウマ類、ハモグリバエ類、チュウゴクナシキジラミに卓効を示します。有機リン系、カーバメート系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系など既存の殺虫剤に抵抗性を発達させた害虫に対しても効果が有るのが特徴です。

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ネギコガに効く農薬一覧表

RACコード別に分類した、ネギコガに効く代表的な農薬は以下のようになります。

IRACコードグループ名ハモグリバエ
1B有機リン系オルトラン
スミチオン
3Aピレスロイド系アディオン
4Aネオニコチノイド系アルバリン
スタークル
モスピラン
5スピノシン系
(マクロライド系)
ディアナSC
6アベルメクチン系
ミルベマイシン系
(マクロライド系)
アニキ
13ピロールコテツフロアブル
14ネライストキシン類緑体
(ネライストキシン系)
リーフガード
21AMETI剤ハチハチ
28ジアミド系プレバソン
ヨーバル
フェニックス
30メタジアミド系グレーシア
ブロフレア

※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、適用作物、用法・用量を守ってお使いください。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

殺虫剤はネギコガだけでなく、カメムシ類、カイガラムシ類やハダニ類、アブラムシ類、アザミウマ類、ヨトウムシコナジラミコガネムシハスモンヨトウネキリムシ、ヨコバイ、ハモグリバエ、ハマキムシ、イラガ、ウンカ、メイガ、ハムシ、ケムシ、テントウムシダマシナメクジシンクイムシ、コオロギ、タマネギバエ、ダンゴムシ、ウリハムシアオムシ、ゾウムシ、ハバチ、グンバイムシ、モモハモグリガ、ハモグリガなど幅広い殺虫スペクトラムを持つものも多いので、うまく活用しましょう。

上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒剤(粒状や顆粒)です。希釈方法等については下記をご参考ください。

防除する際のポイント

ネギコガは幼虫が葉の内部で生活することから、葉の内部への侵入をいかに防止するか、がポイントになります。また、発生が少ない梅雨前からの防除により、夏以降の大量発生を防ぐようにすることが大事になります。

このため、孵化幼虫の食入防止をねらってしっかり浸透性の高い液剤を使用するようにしましょう。また、ネギ類は薬液の付着が悪いので,展着剤を使うことを検討してみてください。

さらに近年では、特定の農薬に抵抗性を持った害虫も多く発生し、農薬の効率的な使用のため、農薬のRACコードを確認して、タイプの異なる殺虫剤のローテーション散布を心がけること、また、農薬の使用量を減少させ、薬害を少なくするために、生物的、物理的、耕種的防除法を取り入れたIPM防除体系を組んで、統合的に実践することが重要になってきています。

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

生物農薬(生物的防除)

生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。

その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、ハダニなど)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。

天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。

生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。

その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。

物理的防除

防虫ネット

ネギコガの被害は直接的な食害なので、網目の細かい防虫ネットなどで農作物を物理的に守るのも効果的です。家庭菜園だと、寒冷紗(かんれいしゃ))も便利です。

耕種的防除

しっかり除草する

圃場の周りに雑草があると、ネギコガの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、被害を少なくするのに極めて重要です。

除草については、以下のコンテンツが参考になります。

まとめ

特にネギ類によく発生するネギコガは、幼虫が葉の中で生息するため防除しにくく、早期からの防除によって大量発生させないことが非常に大事です。本記事が、適切に退治、防除を行うためのネギコガ対策の一助となれば幸いです。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

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編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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