家庭園芸用にもよく使われる殺虫剤マラソン乳剤。農薬マラソンはホームセンターでも手に入るメジャーな有機リン系の殺虫剤で、適用作物は果樹から野菜、花きと幅広く、家庭菜園、圃場でもよく使われています。
ここでは、農薬マラソン乳剤とはどんな殺虫剤なのか、特長や、効果と注意点を説明していきます。
マラソン乳剤とは、どんな殺虫剤?
マラソンは、日本農薬(株)などが販売する、昆虫の神経系を阻害するタイプの殺虫剤の中でも、最も種類が多い、有機リン系化合物の殺虫剤で、広範囲の害虫に効果を発揮する代表的な園芸用殺虫剤です。
マラソン乳剤の有効成分、性状
- マラソン・・・50.0%
マラソンは、有効成分化学名を「O,O-ジメチル S-[1,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル]ホスホロジチオエート」と言い、コリンエステラーゼの活性を阻害して神経機能に障害を起こさせ駆除する、有機リン系化合物の殺虫剤です。
性状は、黄褐色澄明可乳化油状液体になります。乳剤なので、水で希釈して散布します。農薬の希釈については下記をご参考ください。
マラソン乳剤の特長
マラソンの最大の特徴は、殺虫効果に即効性があることです。早い場合は30分ほどで苦悶、落下が見られ、翌日には全て落下します。
マラソンは安価でホームセンターなどでも手に入りやすく,また対象作物,対象害虫も広く,速効的な効果があり,抵抗性がでていない限り効くので、非常に便利な農薬と言えるでしょう。
使用するときに注意したい点
しっかり直接かかるように散布する
残効性はほとんど期待できない農薬なので、散布ムラによって散布されない害虫がいると生き残ります。しっかり直接虫に薬液がかかるように散布しましょう。
抵抗性を持つ害虫には代替農薬で対応しましょう
マラソンを含む有機リン剤に対して抵抗性が出ている虫もいます。アブラムシ、ヨコバイ、アオムシなどは抵抗性が発達しやすいです。しっかり散布したのに翌日も、減少していたとしても集団で残っている場合は抵抗性を疑いましょう。
このような場合は、有機リン剤以外の薬剤を再散布しましょう。有機リン剤以外の代替農薬としては、抵抗性害虫のでている場合の代替農薬としては,アリルメート乳剤,オルトラン水和剤,合成ピレスロイド剤,除虫菊乳剤、トランスフォームフロアブルなどがあります。
その他
ウリ類,トマトの苗は苗質によって薬害がでることもあるので,育苗期には使用しないようにしましょう。
効果・薬害・毒性
マラソン乳剤は以下のように、幅広い「適用作物」と「適用病害虫名」に対応しています。
作物名 | 適用病害虫名 |
---|---|
かんきつ (なつみかんを除く) | ハダニ類 アブラムシ類 カイガラムシ類 ハマキムシ類 ヤノネカイガラムシ若齢幼虫 アオバハゴロモ |
りんご | ハダニ類 リンゴワタムシ アブラムシ類 ナシヒメシンクイ ハマキムシ類 カイガラムシ類 モモシンクイガ |
なし | ハダニ類 アブラムシ類 ナシヒメシンクイ ハマキムシ類 カイガラムシ類 |
もも | ハダニ類 アブラムシ類 ナシヒメシンクイ カイガラムシ類 モモシンクイガ |
ぶどう | ハダニ類 アブラムシ類 ハマキムシ類 カイガラムシ類 キンケクチブトゾウムシ成虫 |
かき | ハマキムシ類 カイガラムシ類 イラガ類 |
おうとう | ハマキムシ類 ハダニ類 アブラムシ類 |
うめ | アブラムシ類 ハマキムシ類 カイガラムシ類 |
びわ | アブラムシ類 |
稲 | ウンカ類 ツマグロヨコバイ |
だいず えんどうまめ あずき | ハダニ類 アブラムシ類 アザミウマ類 コガネムシ類 マメシンクイガ ハモグリバエ |
いんげんまめ | ハダニ類 アブラムシ類 アザミウマ類 コガネムシ類 マメシンクイガ ハモグリバエ インゲンテントウ |
豆類 (未成熟) | ハダニ類 アブラムシ類 アザミウマ類 コガネムシ類 ハモグリバエ類 マメシンクイガ カメムシ類 インゲンテントウ |
きゅうり | ハダニ類 アブラムシ類 ウリハムシ |
すいか | ハダニ類 アブラムシ類 ウリハムシ |
メロン | ハダニ類 アブラムシ類 ウリハムシ |
かぼちゃ | ハダニ類 アブラムシ類 ウリハムシ |
うり類(漬物用) | ハダニ類 アブラムシ類 ウリハムシ |
にがうり | アブラムシ類 |
トマト なす ピーマン | ハダニ類 アブラムシ類 |
キャベツ カリフラワー ブロッコリー | アブラムシ類 アザミウマ類 カブラハバチ アオムシ |
はくさい | アブラムシ類 アザミウマ類 カブラハバチ アオムシ |
だいこん かぶ | アブラムシ類 ハモグリバエ カブラハバチ アオムシ |
いちご | ハダニ類 アブラムシ類 ミカンキイロアザミウマ |
ねぎ たまねぎ | アブラムシ類 アザミウマ類 ハモグリバエ |
にんじん | アブラムシ類 キアゲハ ヤサイゾウムシ |
ごぼう ほうれんそう レタス 食用ぎく よもぎ | アブラムシ類 |
あしたば | ウドノメイガ |
花き(花木)類・ 観葉植物 | ハダニ類 アブラムシ類 |
きく | ヨトウムシ類 |
サルビア | オンブバッタ |
マリーゴールド | ハモグリバエ類 |
たばこ | アブラムシ類 ヤサイゾウムシ |
※記載事項が変更、修正されている場合があります。使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守ってお使いください。
下記の有効成分を含む農薬の総使用回数(年限)は以下の通りなので、使用回数には注意してください。
- マラソン 1〜6回
マラソンの使用可能回数(年限)は、適用作物によってかなり変わってきます。適用作物と使用回数をよく確認するようにしましょう。
マラソンの効果を高めるために
マラソンは残効性がないため、直接虫にかけることが重要です。このため液剤を広範囲に効果的に散布できる散布機(噴霧機)やスプレイヤーの使用をおすすめします。
薬液の付着の悪い作物(キャベツ,ハナヤサイ,レタス,タマネギ,ネギ,エンドウなど)に使用する場合は、展着剤を加えると良いでしょう。
まとめ
マラソンは安価で手に入りやすく、病害虫の防除によく使われる農薬です。筆者も柑橘の果樹園で使用していたのをよく見ました。乳剤の他に、マラソン粉剤もあります。