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カルシウム肥料・石灰肥料

石灰乾燥剤は肥料に使える?

石灰乾燥剤 カルシウム肥料・石灰肥料

お菓子や海などに入っている乾燥剤。その乾燥剤の中でも石灰乾燥剤は肥料の使い道があり、捨てるのはもったいない素材。ここでは、石灰乾燥剤とはどんな成分なのか、また家庭菜園などで、どんな時に使うといいのか、解説してきます。

乾燥剤にはどんな種類があるの?

海苔やお菓子といった食品を湿度から守る乾燥剤は、主に3種類あります。

石灰乾燥剤

石灰乾燥剤の中身は生石灰で、酸化カルシウム(CaO)です。

生石灰は石灰石を高熱で分解すると生成され、水と反応して吸収するため、乾燥剤に使われています。水に濡らすと反応する際に激しく熱を発するため、発火、火傷する危険性があります。水分に濡れ吸湿すると生石灰から消石灰に変化します。

シリカゲル

シリカゲルは二酸化ケイ素からできている乾燥剤で、薄い青色、また透明です。シリカゲルは水に濡れても熱を発しないため、最近の乾燥剤の主流はこちらで、日常生活でよく見かけるのでは、と思います。

シリカゲルは石灰乾燥剤と違って、一度湿ってもまた加熱して湿気を飛ばせば再利用することができる、優れた乾燥剤です。が、シリカゲルは残念ながら肥料としては利用できません。

脱酸素剤

脱酸素剤は酸素を取り込んで内部の酸素を減らすことで湿気を減らす乾燥剤です。カイロにも使われています。還元鉄の粉が成分で、こちらも肥料としては利用できません。

食品に入っていて私たちが目にする乾燥剤はこの3種類がほとんどですが、肥料として利用できるのは「石灰乾燥剤」のみです。石灰乾燥剤は袋に石灰乾燥剤と記載されているので、肥料として使用する前に、記載をみてしっかり識別するようにしましょう。

石灰乾燥剤はどんな成分?

成分について

石灰乾燥剤の主成分は生石灰で、酸化カルシウム(CaO)です。生石灰は石灰石を高熱で分解すると生成され、水と反応して消石灰に変化します。

カルシウムは植物にとって重要な多量要素(二次要素)の一つです。カルシウム成分は栽培において、以下の働きがあります。

  • ペクチンという多糖類と結合し、細胞膜を丈夫にして病害虫に対する抵抗力をつける働き
  • 根の生育を促進する働き
  • 植物体内でできる過剰な老廃物(有機酸)を中和する働き
  • 土壌酸度(pH)の調整剤としての働き

カルシウムが不足(欠乏)すると、生長の盛んな新芽や根の生育が悪くなります。カルシウムは植物体内での移動がほとんどありませんので、新芽に症状があらわれやすいのが特徴です。

また、極端にカルシウムが過剰な状態が続くと土壌がアルカリ性となり、生育不良を引き起こします。特に、土壌酸度(ペーハー)が高くなるとマンガン、亜鉛、鉄、ホウ素などの微量要素の吸収が阻害され、欠乏症状を引き起こす危険性もあるのです。

どんな時に使える?

農業で使われる多くのカルシウム資材の中でも、生石灰は以下のような特性を持っています。

  • 加水により発熱し消石灰に変化する。
  • 速効性があり、アルカリ性が強い。

このため、土壌酸度(pH)が酸性で早く中性に改良したいときの調整剤として使うのがよいでしょう。

カルシウム資材は生石灰の他にいろいろなものがあります。ご興味ある方は下記一覧表を参考にしてみてください。

名称土壌酸度(pH)アルカリ側への矯正の強さカルシウムの肥効特徴
生石灰
(酸化カルシウム)
速効性加水により発熱し消石灰に変化する。速効性がある、アルカリ性が強い。施肥後、定植・播種まで2週間以上おく。反応が強すぎるので取り扱いづらい。
消石灰
(水酸化カルシウム)
速効性空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムとなる。速効性があり、アルカリ性が強い。施肥後、定植・播種まで20日以上おく。反応が強すぎるので取り扱いづらい。
石灰窒素速効性加水されるとシアナミドと水酸化カルシウムが生成され、やがてシアナミドも変化し窒素として吸収される。消石灰とほぼ同等の水酸化カルシウムが含まれている。
炭酸カルシウム緩効性水に溶けにくく、カルシウムの効き方は緩効性である。反応が穏やかで効き目が持続する。
硝酸カルシウム-(弱酸性)速効性水に溶けやすく、カルシウムの効きは早い。硝酸態窒素も含み、水耕栽培によく使用される。
苦土石灰緩効性水に溶けにくく、カルシウムの効きは遅い。マグネシウムも含まれており、補給ができる。散布後すぐに定植・播種することができる。
カキ殻石灰緩効性カキ殻を粉砕したもの。海のミネラル分も含む。炭酸カルシウムほどではないが、土壌pHを高める。
貝化石緩効性古代の貝やヒトデの化石。海のミネラル分も含む。
草木灰緩効性焼かれた草木(草や木)に由来する灰のことで、カリウムが豊富に含まれる。
塩化カルシウム-(中性・弱酸性)速効性水に溶けやすく、作物に利用されやすい。土壌酸度(pH)の矯正には使えない。葉面散布にもよく使われた。
硫酸カルシウム-(中性・弱酸性)速効性土壌溶液に溶けやすく、作物に利用されやすい。弱酸性または中性であり土壌酸度(pH)の調整には使えない。「畑のカルシウム」が有名。葉面散布にもよく使われた。

使うときの注意点

土壌調整剤として使用する量は、その土壌の酸度や栽培する作物の適正pHによって異なります。土壌診断や土壌酸度計による酸度測定を行って、適正なpHになるように施肥しましょう。

またカルシウム肥料はアルカリ性資材ですので、酸性資材と混ぜると有害なガスが発生したりするので注意しましょう。

カルシウムの積極的な施肥が必要な作物

カルシウムは欠乏しがちな要素の一つとなります。果樹や果菜類、葉菜類といった野菜類など多様な植物に対してカルシウム欠乏症が発生する可能性があるため、注意が必要です。全般的に新しい葉の葉先が枯れたり、果実の尻腐れなど、植物の生長が盛んな部分に異常が出ます。

以下に解説する症状が出た場合には、カルシウム欠乏を疑いましょう。

果樹

リンゴ

「ビターピット(苦痘病)」が現れます。果実の皮にくぼみができ、果肉や皮に茶色の斑点が現れます。斑点部分の味が苦くなることからビターピットと呼ばれています。

カンキツ

新梢葉(新梢に付いている葉)の先端から、黄化症状が出始めます。さらに症状が進むと、葉の全体が黄化していきます。

果菜類

トマト

尻腐れが発生します。実が赤くなる前に、花の先端(果実の尻の方)が柔らかくなり、黒褐色になって陥没します。

イチゴ

新芽の展開時に先端部が枯れる「チップバーン」が現れます。症状が進むと新芽全体が展開前に枯れます。

ピーマンなどのトウガラシ属

尻腐れが発生します。花の先端(果実の尻の方)において、くぼみが発生し、その部分から乾燥、腐敗が進みます。

葉菜類

ハクサイ

芯腐れ(心腐れ)、縁腐れが発生します。芯の部分や葉の縁の部分が枯れます。

レタス

縁腐れが発生します。葉の縁の部分が枯れます。

根菜類

サトイモ

芽つぶれ症が発生します。サトイモの子・孫イモの芽の部分が欠落して、中身が露出している状態になり、そこから腐敗します。

ダイコン・カブ

心腐れ(芯腐れ)が発生します。

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農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
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