サッカー場などの競技場から公園、ご家庭の庭まで、芝生はさまざまなところに植えられています。芝生の緑色は、心安らぐ空間を与えてくれます。
芝は、葉のみが生長し青々としている印象ですが、芝生の中に混じって花のような穂が見られる場合があります。特に4月〜5月の春ごろに生えてくることが多いでしょう。
この記事では、芝生に生えてくる穂の正体・種類とその対処法について解説します。
芝生の花の正体
「芝生に花が咲く」と聞くと、他の雑草が花を咲かせるようなイメージが思い浮かぶかもしれませんが、そうではなく芝生も立派な花を咲かせます。芝生に使われる植物は、主にイネ科の植物なので、他の草木と同様に花を咲かせるのです。
花を咲かせると言っても、他の果菜類や花卉類のように大きな花を咲かせるのではなく、小さな花穂をつけます。この小さな穂が実となり種を落とし、新たな生命に繋げていくのです。
芝生が穂をつけることによる影響
自然界では穂をつけることによって、子孫を残していくイネ科の植物ですがご家庭の庭や公園、競技場などで育てている芝生に関しては、基本的には穂をそのままにしておくことはしません。理由は、主に3つあります。
見栄えが悪くなる
芝生の穂の色は品種によって異なりますが、大体が暗めの紫色や茶色のような色をしています。そのため、穂が付き始めると緑の芝生が全体的に暗い印象となってしまいます。
高麗芝の穂は白っぽいため、そこまで穂刈りしなくても良いと考えがちですが、綺麗な花を咲かせるわけでもないので、やはり刈り取ってしまうのがベストです。
養分が取られ、その後の生長が悪くなる
芝生に穂が出てくると、穂の生長に養分が取られてしまい、芝生の今後の生長に必要なエネルギーも消費してしまいます。そのため、穂をそのまま残すことはせず、刈り取ることが基本です。
通常のイネ科植物の生長では、穂を付けて種を落とすことで次の世代に繋げます。しかし、芝生に植えられているイネ科の植物は、ランナー(匍匐茎)で繁殖していく品種が多いです(ライグラス類やフェスク類など匍匐茎を持たない品種も一部あります)。
そのため、躊躇せずに穂を刈り取り、いま生えている芝生に栄養分を残すことが重要です。
先祖返りが起こり、品種改良した芝を使うメリットがなくなる
穂を付けたままにしておくと、実を付け種を落とし、新たな芽を出そうとします。高麗芝など、芝の穂には種がないと思われがちですが、不稔性で受精しにくく実が付きづらいことと、発芽率がかなり低いという2つの特性によってそのように感じるだけなので、稀に種が落ちて発芽する場合があります。
TM9は、従来の高麗芝よりも多くの穂をつけるため、穂から種がこぼれ落ち、稀に発芽する場合があります。そして新たに発芽した芝は、TM9の改良前の品種(従来の高麗芝の品種)に先祖返りすることがあります。先祖返りとは植物としての特性が改良前の品種に戻ることを指し、TM9が先祖返りしてしまうと従来の高麗芝のように草丈が伸びやすくなると考えられます。
TM9は高麗芝の改良品種で草丈が伸びにくく人気の品種ですが、先祖返りが起こらないように穂刈りを行うことが重要です。
このような先祖返りを防ぐという観点でも、穂刈りはしっかりと行ったほうが良いでしょう。
芝生が穂をつける時期
芝生が穂をつける時期は、品種によって異なります。下記に一例を掲載しますので、ご自身で栽培されている芝がいつ頃、穂をつけるか予測しておきましょう。
西洋芝/日本芝 | 芝草の種名 | 穂をつける時期 |
---|---|---|
日本芝 | 高麗芝(コウライシバ) | 春(5月頃)と秋(11月頃) |
日本芝 | 野芝(ノシバ) | 春(5月頃) |
西洋芝 | ケンタッキーブルーグラス、ペレニアルライグラスなど | 初夏〜夏 |
西洋芝 | ベントグラス、トールフェスクなど | 夏 |
実際には、土壌中の養分や植物の状態、環境によっても穂をつける時期が左右されるため、定期的に観察することが最も重要です。定期的に観察をして穂が出てきたら穂刈りをしましょう。
コウライシバは短日植物なので、日照時間が短くなると花芽が形成されます。
芝生の穂への対処方法
基本、定期的に芝刈りをされている方であれば、穂がたくさん出てくるということも少ないかと思います。逆に、穂がたくさん出て草丈も伸びているようであれば、草刈りの頻度が少ないというサインかもしれません。
それでは、芝生の穂が出てきたら、どのように対処すればよいか。それは、芝とともに刈り取る(穂刈り)ことが一番です。
通常の芝刈りと同様、芝刈り機を使って穂も一緒に刈り取りましょう。このとき、リール式の芝刈り機がおすすめです。
リール式の芝刈り機は、螺旋の刃がついた円筒形の回転刃が回転し、ベットナイフと呼ばれる下刃とかみ合わせて芝生を切る構造となっています。そのため、穂を挟み込んで巻き込みながら一緒にカットすることができ、ロータリー式に比べて綺麗に精度良く穂刈りができるように感じました。
定期的な芝刈りやサッチング(サッチ取り)、エアレーションなど手入れ作業が重要ですね。
芝生の穂を減らすためには
そもそも芝生の穂の出現を減らすことはできないのでしょうか?
植物としての本能を考えたとき、「種を残そう」と花・実・穂をつけるタイミングは植物自体が弱ってきたときと考えられます。
例えば、トマトなどの果菜類も窒素成分が少なくなってくると、栄養生長(自分自身の生長)から生殖生長(実を付け、種を残そうとする生長)に傾きます(これはかなり簡易的な説明です…)。芝生も同様に肥料が切れて窒素成分が少なくなってくると穂が多く出やすいと言われています(TM9に肥料っているの? | 芝生、芝刈り機のことならバロネスダイレクト)。
要するに芝生に対する窒素成分などの栄養分が不足してくると、穂が出やすくなる環境ナノではないかと推察されます。そのため、休眠期など施肥が不要な時期を除いて、継続的な施肥をしていくことが重要ではないかと考えます。
ただし、肥料のやりすぎは厳禁です。ほとんどの作物に言えることですが窒素成分が多くなると軟弱になり、病気や害虫による被害に遭いやすくなります。目安の量を定期的に施すことが重要です。
芝生に生える他の種類の花
芝生に花(穂)が出てくるという話をしてきましたが、芝生に生える花はそれだけではありません。雑草として自然に生えてくる花や芝生のアクセントとして植える花などもあるでしょう。ここでは、芝生に生える花の種類を簡単に紹介します。
雑草の花
芝生には、約70種類程度の雑草を見かけることができます。雑草は、生育する季節によって以下の2つに大別できます。
- 「冬雑草」秋から翌年の初夏にかけての冷涼期に生育する雑草
- 「夏雑草」春から夏の高温期に生育する雑草
雑草の中には、花を咲かせるものも多いです。「綺麗だな」と残しておくと、雑草の繁殖につながるので見かけたら抜き取ったり、駆除、防除するなどの対策が必要です。芝生に生える代表的な雑草を掲載しますので、ご自身の芝生に生えてきたら該当するものかどうか調べてみてください。
植物名 | ウラジロチチコグサ | オオイヌノフグリ | カラスノエンドウ | スズメノカタビラ | オオアレチノギク | オランダミミナグサ | セイヨウタンポポ | ハルジオン | ハコベ | ノゲシ・ハルノノゲシ | ツメクサ | ノボロギク | オオバコ | エノコログサ | カタバミ | オヒシバ | メヒシバ | カヤツリグサ | ザクロソウ | コメツブウマゴヤシ | コニシキソウ | シロツメクサ | スギナ | チガヤ | ニワゼキショウ | ハマスゲ | チドメグサ | ヒメスイバ | ヒメクグ | ヨモギ |
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写真 | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | (準備中) | |||||||||||||
冬雑草/夏雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 冬雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 | 夏雑草 |
芝生に相性の良い花
基本的には、芝生を綺麗に張りたい場合は他の植物を植えないほうが得策です。なぜなら、他の植物を植えてしまうと、互いに根を張るための競争をしてしまい、うまく根を張れなかった植物が枯れやすくなるためです。また、土壌中の養分の奪い合いも発生するでしょう。特に根が強い植物を芝生に植えると、芝生が枯れ上がることがあるので注意が必要です。
どうしても芝生に花を植えたいときには、花を植える範囲の土壌に根止め(ストッパー)を差し込むと良いでしょう。根止め(ストッパー)を使うことで、芝生とその植物の根を分離させることができ、互いに根の侵入を防ぐことができます。
芝生に植えやすい植物として、クロッカスなどの球根植物があります。芝生の根はおおよそ地上から15cmの深さまで張りますが、それよりも下に根を張る植物が共生には向いています。また球根植物は、芝生の生育が旺盛となる初夏から秋には地上部がないものが多いため、芝生の生長や生育管理にも影響が出づらいです。
芝生には下記の球根植物が植えやすいです。
- 秋植え球根
- クロッカス
- シラー
- アイリス
- スイセン(早咲きのもの)
- 夏植え球根
- コルチカム
- ステルンベルギア
- サフラン