独特な香りを持つ春菊は、すきやきなどの鍋料理や、てんぷらやナムル、おひたしなど幅広い料理に使える冬が旬の野菜です。暑さ寒さにも強く、病害虫の被害もすくないので育てやすく水耕栽培でも育てることができます。
ここでは、春菊の水耕栽培について、タネから育てる手順や収穫までの育て方について、初心者の方でもわかりやすく説明します。
春菊の水耕栽培について
春菊の基礎知識
春菊は、栽培が簡単で畑やプランターなどの土耕栽培だけでなく、水耕栽培でも育てることができます。タネまきから収穫までは35日前後と栽培期間も短く、暑さや寒さにも強いので初心者の方にも育てやすい野菜です。
発芽適温、生育適温とも15℃~20℃で冷涼な気候を好みます。タネまきは春まきと秋まきが一般的ですが、初めての人は春まきはとうが立ちやすいので、秋まきがおすすめです。収穫は春まきは株ごと刈り取って収穫しますが、秋まきでは、株元を少し残して収穫する摘み取り栽培をすることで収穫を長く楽しむことができます。栽培の時期にあった品種を選んで栽培することが大切です。
作物名 | シュンギク |
---|---|
科目 | キク科シュンギク属 |
原産地 | 地中海沿岸 |
発芽適温(地温) | 15℃~20℃ |
生育適温 | 15℃~20℃ |
育てやすさ | 簡単 |
栽培時期
春菊の作型は、春まき栽培と秋まき栽培が一般的です。下記は露地栽培での土耕栽培の栽培時期の目安です。水耕栽培は室内でも育てることができるので、生育適温保てれば一年中栽培が可能です。初心者の人は栽培しやすい秋まき栽培から始めましょう。
作型 | 播種(種まき)時期 | 収穫時期 | 備考 |
---|---|---|---|
春まき栽培 | 3月下旬~5月 | 4月下旬~6月中旬 | とう立ちに注意 |
秋まき栽培 | 9月 | 10月~11月上旬 | 初心者におすすめ! |
品種
春菊には、葉の大きさにより主に中国・九州地方で栽培される大葉種、最も一般的な中葉種、小葉種があります。最も一般的なのが中葉種で、根元から株が張る「株張り型の品種」と、側枝の発生が多く、伸びた茎葉を順次摘み取って収穫して栽培する「摘み取り型品種」があります。
この他にも最近では、茎が長く伸びるスティック春菊などの新しい品種もあります。
区分 | 特徴 | 主な品種 |
---|---|---|
大葉種 | 葉は大きく丸形で、葉緑の切れ込みが浅く少ない 柔らかくあくが少ない。鍋物やサラダに使われる | おたふく春菊 大葉春菊 |
中葉種(株張り種) | 関西地方を中心に栽培され、「菊菜」とも 呼ばれます。株が横に張り、茎が立ちません。 根元から切って収穫します。 | さとゆたか おきく3号 |
中播種(摘み取り種) | 関東地方を中心に栽培されています。 茎が株立ちして生長し、脇芽の茎葉を収穫すると、 また脇芽が成長して長く収穫が楽しめます。 | 冬の精 きわめ中葉春菊 |
小葉種 | 葉が小型で、葉の切り込みが深い。 抽苔しやすく、収穫も少ないため、現在はあまり生産 されていません。 | ー |
春菊の水耕栽培のポイント
水耕栽培は、土を使わず「水で栽培をする方法」の一つです。水耕、水栽培などとも呼ばれます。水耕栽培は、野菜だけでなく、観葉植物や果物などのさまざまな植物を衛生的に育てることができます。
水耕栽培ではさまざまな野菜や植物を育てることができますが、サニーレタスなどの葉物野菜やバジルなどのハーブは特に栽培が簡単で、春菊も特別な設備がなくともペットボトルやスポンジなどをつかって、簡単に栽培することができます。
またくせのある味が特徴の春菊ですが、水耕栽培で作る野菜はクセが少なく葉がやわらかく育てることができるので、サラダ専用の種類でなくとも、普通種でも生で食べることができます。
春菊の水耕栽培の手順
ここでは家庭の水耕栽培でよく使われる、ペットボトルとスポンジを使った水耕栽培の方法を説明します。
用意するもの
- ペットボトル500mℓ以上
- スポンジ(キッチンスポンジでOK メラニンスポンジは不可)
- 春菊の種
- タッパーなど、スポンジをいれる穴の開いていない容器
- 水耕栽培用の肥料
- カッター、ハサミ、アルミホイル、ビニールテープ、ラップ、竹串
事前準備
栽培容器を作る
- ペットボトルの上部を7㎝~8㎝のところでカットします。キャップは、外しておきます。
- 切り取ったペットボトルの下部に、空気穴を2つあけておきます。
- 切り口は、触るとケガしやすいのでビニールテープを貼っておきます。
種まき
- 春菊の種子は、タッパーに水をはり、一昼夜水に浸けておきます。
- スポンジを、2㎝~3㎝程度に四角にカットし、十字に切り込みを入れます。
- スポンジに水を十分含ませて、切込みに竹串などを使って、種を4~5粒重ならないように差し込みます。
- タッパーにスポンジの底がつかる程度水をいれ、ラップをかけ空気穴を竹串などで穴を複数空けます
- 日なたで乾かさないように管理します
- 発芽して、本葉が2~3枚になったら、よく育っている2本を残して、あとは間引きます。
手順
- 手順1
ペットボトルを加工して、水耕栽培用の栽培キットを作ります。
- 手順2
スポンジに種をまいて、本葉が2~3枚になったら、元気のよい苗だけを2本残し、あとは間引きます。
- 手順3植え付け
ペットボトルの上部の口の部分に、スポンジをセットします。
根を傷めないように注意しましょう。ペットボトルの下部に培養水(肥料を溶かした水)をいれ、苗を植えつけた上部をセットします。水位は根が1/3程度つかる程度。アルミホイルなどで遮光して育てます。
- 手順4育苗
明るい窓辺などで管理し、培養液がなくならないように足しながら育てます。
1週間に1度は水をすべて交換し、容器も洗いましょう。 - 手順5収穫
草丈が20cm程度になれば収穫の時期です。
秋まきは、下葉を4枚程度残してハサミで切り取ります。その後脇芽が10cm~15cmほど伸びてきたら、葉を2枚ほど残して収穫します。これを繰り返すことにより、長く収穫が楽しめます。春まきは、気温が高くなるととう立ちして、花が咲いてしまうので蕾が付く前に、草丈が20cmほどになったら、株元から抜き取って収穫します。
春菊の水耕栽培の育て方
容器
葉物野菜の春菊は、特別な設備がなくとも十分収穫が楽しめます。ペットボトルを加工した栽培キットは、さまざまな野菜や観葉植物の挿し木などにも使えます。ペットボトルの容量は500ml~1ℓ程度のものを使うとよいでしょう。
複数株作りたいのであれば、少し大きめのタッパーや発砲スチロールなどもよくつかわれます。その場合は株間は10cmほどあけるとよいでしょう。
透明な容器は、光にあたることでアオコ(藻)が発生します。根に藻がつくと根から酸素を呼吸できなくなり、生育に影響を及ぼします。容器は必ず遮光して育てましょう。アルミホイルなどで容器を包むほか、見た目が気になるならペットボトルカバーや、好きな柄の布やバンダナなどを巻いても。
タネまき
春菊の種子は発芽率が他の野菜に比べ悪く約50%程度です。発芽率を上げるには、発芽適温の時期を外さず、種を乾かさないようにすることが大切です。
発芽率を上げるため、一昼夜水に浸けてから播種するとよいでしょう。また春菊の種子は好光性なので播種後は、明るい場所で管理しましょう。
栽培環境
生育適温が15℃~20℃と、冷涼な環境を好みますが、暑さ寒さにも強い野菜なので真夏と真冬以外であれば、周年栽培は可能です。日当たりのよい、風通しの良い場所を好みます。葉物野菜は最低3時間は日に当ててあげましょう。日当たりの良い窓辺などで管理します。
30℃以上になると生育が悪くなるので、夏は直射日光は避けて涼しい場所で。冬は暖かい室内で管理しましょう。夜は窓際は急激に温度が下がるので注意が必要です。
水やり・水替え
水耕栽培は培養液(肥料を入れた水)で育てます。培養液が切れないよう毎日水量を確認して、培養液を継ぎ足しして育てます。培養液(肥料を入れた水)の水位は、根が2/3~1/2程度浸かる程度。水の中は空気が少ないので、根元は空気に触れるよう濡れないようにします。
水の交換は、1週間に1度は行いましょう。すべての培養液を捨て新しい培養液をいれます。根にストレスがかかるのでできれば、日照の弱い曇りの日か、夕方に行いましょう。
成長してくると水を良く吸うので水切れには注意が必要です。また暑い時期は水が腐りやすいので、水が濁っているときには水を交換しましょう。
肥料
水耕栽培で春菊を育てる場合には、水だけでは育ちません。肥料が必要です。しっかり水耕栽培用の肥料を使って育てましょう。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。ハイポニカはプロ用のものもありますが、家庭用と成分や配合は同じです。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
収穫
収穫は、品種によって株ごと収穫するか、摘み取り収穫できるものか変わります。それぞれに合った収穫をしましょう。
摘みとり収穫ができる品種でも、春はとうが立ち花芽がついてしまいます。花芽がつくと味が落ちるので、蕾が付く前に株ごと引き抜くか、株元から刈り取ります。
秋まき栽培では、摘み取り収穫をすると長い間収穫が楽しめます。水耕栽培なら手元で収穫できるので、採れたてを楽しめます。草丈が20cmほどになったら、下葉を4枚~5枚ほど残して、先端をハサミでカットして収穫します。切った部分のの葉のつけ根から脇芽がでてくるので、15cmほどになったら、つけ根に2枚~3枚の葉を残して収穫しましょう。霜が降りると葉が傷むので、霜が降りる前に収穫を終えましょう。
病害虫
春菊は、独特な香りで害虫を寄せにくく、室内で育てている分にはあまり心配はいらないでしょう。
しかしベランダなどで育てている場合には、アブラムシやハモクリバエ、ヨトウムシの被害にあいやすいです。キク科の春菊はワタアブラムシの被害にあいやすく、アブラムシはウイルスを媒介するので、見つけたらすぐに捕殺しましょう。
病気は炭そ病やべと病などにかかりやすくなります。梅雨などの多湿の時に発生しやすいので、梅雨は軒下などで風通しの良い場所で管理しましょう。
まとめ
春菊は、β-カロテンやビタミン、カルシウムなどが豊富に含まれている栄養価の高い緑黄色野菜です。
収穫までの期間が短く、暑さ寒さにも比較的強く丈夫な野菜なので水耕菜園初心者の人にもおすすめの野菜です。採れたての春菊はくせがなくて食べやすいのも特徴です。鍋物以外でも、サラダでもおいしく食べられます。またキク科の春菊は、花もかわいらしいのでいくつか残して、花を楽しむこともできますよ。
『農家web』にはこのほかにも、水耕栽培のコンテンツが豊富です。野菜だけでなくハーブや、観葉植物、多肉植物、花を楽しむ球根なども水耕栽培で育てることができます。
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