ウリノメイガ(ワタヘリクロノメイガ)は、ウリ科の植物を好み幼虫が葉や果実を食害します。ここではウリノメイガの生態から、駆除するための農薬、農薬以外の対処方法について説明します。
そもそも、ウリノメイガはどういう害虫?
ウリノメイガとは?
ウリノメイガは正式名称は「ワタヘリクロノメイガ」で、チョウ目メイガ科に属する蛾の仲間です。幼虫がきゅうり、ゴーヤ、メロン、スイカなどのウリ科の植物やオクラ、ワタなどのアオイ科の植物を好んで、葉や茎、果実を食害します。
幼虫は体長が2cmほどの緑色のイモムシで、2条の白い縦線が入るのが特徴です。成虫の体長は約10mmほど翅の外側は黒茶色で内側が白色の半透明です。
春から秋にかけて年5~7回発生します。8月~9月の被害が大きくなります。


画像出典:HP埼玉の農作物病害虫写真集
どうしてウリノメイガは害虫なのか?
ウリノメイガ(ワタヘリクロノメイガ)は、若齢幼虫の時は葉の内側のみを食害しますが、老齢幼虫になると芽基部や葉を食害し、果実や茎の中に入り込んで食害をします。
多発すれば、苗の生育に影響を及ぼし生産量が少なくなる以外にも、果実の食害がおきれば品質の低下をおこします。

ウリノメイガを防除する際のポイント
ウリノメイガは代表的な害虫のため、多くの適用農薬が販売されています。下記の農薬(殺虫剤)は、基本的に成虫、卵の状態に散布しても駆除することはできません。
多発したり老齢幼虫になり芽基部に入り込んだりすると、農薬が効きにくくなります。昼間の成虫や葉裏の若齢幼虫の食害などの初期発見につとめて初期に農薬散布することが大切です。また、成虫をハウス内に入れないようにする、捕殺するなど、科学的防除だけでなく、物理的防除も合わせた、IPM(総合的害虫管理)が大事です。
農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。
- 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
- 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
- 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
- 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法
(IPM・・・Integrated Pest Management)
ウリノメイガに効く代表的な農薬
ウリノメイガの防除によく使われる農薬についていくつか紹介します。
アファーム乳剤
アファーム乳剤は、メロン、きゅうりに適用があるマクロイド系の新しいタイプの殺虫剤です。チョウ目の害虫には速効性があり、害虫スペクトラムが広いためコナガ、アザミウマ類などと同時防除が可能です。
BT剤
BT剤とは自然界に広く分布する細菌「バチルス・チューリンゲンシス(BT)」を活性成分とする微生物殺虫剤で、安全性が高く有機栽培でも使え、農薬の散布回数にカウントされません。
対象害虫がBT菌が作る殺虫タンパク質を摂食することで殺虫効果を発揮します。食毒性のため死亡には2~3日かかりますが食害は止まります。(殺虫タンパク質は対象害虫のみに効果があり、人畜、鳥、昆虫などが摂食しても害はありません)
ゼンタリー顆粒水和剤は、ウリ科野菜、エンドウマメ、さやえんどう、実えんどうの栽培に使えます。デルフィン顆粒水和剤とチェーンアップ顆粒水和剤は野菜の栽培に使えます。
プレオフロアブル
プレオフロアブルは、チョウ目やアザミウマ目の害虫に速効性のある農薬です。チョウ目の中~老齢期幼虫に対しても若齢幼虫と同等の効果を発揮します。対雨性、残効性にも優れており、メロン、すいか、きゅうり、にがうりのウリ科の作物に適用があります。
ウリノメイガに効く農薬一覧表
RACコード別に分類した、ウリノメイガに効く代表的な農薬は以下のようになります。ウリノメイガは、有機リン剤,カーバメート系剤,合成ピレスロイド剤,ネオニコチノイド系剤,IGR剤の農薬は効果が薄いといわれます。
農薬を使う際には、抵抗性を生じさせないように異なる系統の薬剤をローテーション散布しましょう。
※農薬を使用する際にはラベルをよく読み、用法・用量を守って薬害等に注意してお使いください。
RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。
例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。
同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。
殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。
上記の農薬は水で溶かして薄めて使用する液剤や水溶性の粉剤、粒状、粒タイプです。希釈方法等については下記をご参考ください。
生物農薬
生物農薬とは、「農薬の目的に使われる生物を使い、病害を防除する農薬」のことを言います。
その生物とは主に、昆虫、線虫、微生物で、害虫(例えばアブラムシやアザミウマ、コナジラミ、チョウ目の食害する虫など)を捕食する、天敵に当たる昆虫や、昆虫に寄生するもの、センチュウ、また病原菌にあたる生物になります。
天敵導入による防除は、名前でこそ「生物農薬」と呼ばれますが、化学農薬ではなく、有機JASでも勿論使用可能です。
ウリノメイガの天敵製剤は販売されていませんが、上記で紹介したBT剤は生物農薬の一種です。
生物農薬は、在来種以外の天敵昆虫を使用することが多く、本来の生態系に影響を与える恐れがある為、閉鎖系の圃場以外では使用、散布し難いものがあるなどの注意点もあります。
その他、生物農薬については下記に詳しく、具体的な製品も紹介していますので、ご参考ください。
物理的 耕種的防除
防虫ネット
防虫ネットは物理的に農作物に近づけさせなくするので有効です。
しっかり除草する
圃場の周りに、雑草があると、ウリノメイガの発生を促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけこまめに除草するのが、害虫被害を少なくするのに極めて重要です。
除草については、以下のコンテンツが参考になります。


栽培に役立つ 農家webのサービス
農家web 農薬検索データベース
作物に適用がある農薬を一覧で探したいときには、「農家web農薬検索データベース」が便利です。
検索機能は、適用作物・適用病害虫に合致する農薬を探す「農薬検索」、「除草剤検索」をはじめ、さまざまなキーワードで検索できる「クイック検索」、農薬・除草剤の製品名で検索できる「製品検索」、農薬・除草剤に含まれる成分名で検索できる「成分検索」の4つで、農薬・除草剤の作用性を分類したRACコードや特性、 効果を発揮するためのポイントなど実際の使用に役立つ情報も知ることができます。

農家webかんたん農薬希釈計算アプリ
除草剤、殺虫剤を代表する農薬の液剤は、かなりの割合が原液で、水で希釈して散布するのが一般的です。希釈倍率に合わせて水と混ぜるのですが、希釈倍率が500倍、1000倍と大きく、g(グラム)やL(リットル)などが入り混じっていて、計算が難解だと感じる方も多いのではないでしょうか。
「農家webかんたん農薬希釈計算アプリ」は、使用する農薬の希釈倍数を入力し、散布する面積などから薬量・液量を算出します。面積の単位や薬剤の単位も簡単に行えます。
ラベルを見て希釈倍率を入力するだけでなく、農薬検索データベースと連携しているので、使いたい製品・適用ラベルを選択することで、希釈倍数を自動入力することができます。

農家web かんたん栽培記録
作物を栽培するときに、植え付けから収穫までの栽培記録をつけることは、作物の安全性を守る他にも、ノウハウを蓄積し、よりよい作物を栽培するためにも大切な作業です。
農家webのかんたん栽培記録はこれひとつで、無料で作物ごとに栽培記録できるだけでなく、その作物に発生しやすい病害虫やおすすめ農薬、また農薬に頼らない防除方法も、簡単にカレンダーから確認することができます。会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
