ミントは、シソ科ハッカ属の植物の総称で日本でも古くから人気のハーブです。さわやかな香りが特徴で、種類も多く香りもさまざまあります。
ペパーミントやスペアミントなどは料理やお茶などの食用として使ったり、精油や薬用にもつかわれています。その他、ストロベリーミントやアップルミント、パイナップルミントなど果物の香りのするハーブもあります。
比較的初心者でも育てやすいイメージがあるミントですが、どんな肥料をいつ、どれくらいの量をやれば健全に育ってくれるのでしょうか?この記事では、ミントへの肥料のやり方や与える時期、おすすめの肥料について解説します。
そもそも植物に必要な養分って?植物が必要な養分に関するおさらい
植物が育つためにはチッソ(窒素)、リンサン(リン酸)、カリウム(加里)の三要素のほか、マグネシウムやカルシウム(石灰肥料が有名)などの「二次要素(中量要素)」、さらに鉄、マンガン、ホウ素をはじめとした「微量要素」が必要です。
チッソ(窒素)は、葉や茎などの成長に欠かせず、植物の体を大きくするため、「葉肥(はごえ)」と言われます。
リンサン(リン酸)は、開花・結実を促し、花色、葉色、蕾や実に関係するため、実肥(みごえ)と言われます。
カリウム(加里)は、葉で作られた炭水化物を根に送り、根の発育を促すほか、植物体を丈夫にし、抵抗力を高めるため、根肥(ねごえ)と呼ばれています。不足すると根・植物が弱ります。
肥料の箱や袋などに記載されているN-P-Kの表示は窒素(N)、リン酸(P)、カリウム(K)を指しています。その他、肥料についてより詳しいことは、下の記事を参考にしてみてください。
ミントに使用する肥料は、植物を栽培するという点で、野菜や果樹などの栽培に使うものと基本的には同じで問題ありません。ハーブだから特別な肥料を使うということはありません。
色々あって複雑ですが、最初は葉や茎活力を与えたいときは窒素(チッソ)多めの肥料を、花を咲かしたい、実の成長を促したいというときはリン酸多めの肥料を施すというイメージでやってみましょう。
花用の肥料は、綺麗な花を咲かせるためにリン酸が多いことが多いです。
そもそもミントに肥料は必要?
ミントはそれほど多くの肥料を多く与えなくても育つ植物ですが、花をきれいに咲かせたり、長く健全に育てるには他の植物と同様に水も肥料も必要です。
ただし肥料を上げすぎると、ミントの香りを弱めることになるので注意しましょう。
肥料はどんな種類があるの?
作物・植物の栽培における肥料の種類は、大きく以下のとおりに分けることができます。
肥料はその物質の有機、無機によって、「有機肥料(有機質肥料)」「化学肥料(≒無機質肥料、化成肥料は化学肥料に属します)」の2つに分けることができ、形状によって、「固形肥料」と「液体肥料(液肥)」があります。
「化学肥料」とは、化学的に合成しあるいは天然産の原料を化学的に加工して作った肥料です。「有機肥料(有機質肥料)」とは、「油粕や米ぬか、腐葉土など植物性の有機物」「鶏糞(鶏ふん)、牛糞(牛ふん)、馬糞や魚粉、骨粉などの動物性の有機物」を原料にして作られたものです。堆肥も、家畜の糞や落ち葉などの有機物を微生物によって分解・発酵したもので、有機肥料となります。有機肥料は、用土(培土)を養分を補うだけではなく、物理性の改善(ふかふかにする)にも役立ちます。
肥料を与えるタイミング 元肥と追肥
用土に肥料を与えるタイミングによって、肥料の呼び名が変わります。具体的には、「元肥」と「追肥」があります。
苗を植え付け(定植する)前に予め土壌へ施しておく肥料を「元肥(もとひ・もとごえ)」と言います。元肥は、初期生育を助ける働きがあり、肥料効果が長く続く緩効性や遅効性の肥料を施すのが一般的です。
苗の植え付け後(定植後)、作物が生長していくときに、土壌の肥料切れが起こらないように追加で施す肥料を「追肥(ついひ・おいごえ)」と言います。追肥を施す時期が遅れたりすると、植物の生育期に葉の色が薄くなったり、花が小さくなったりして最悪の場合、枯れてしまいます。特に窒素、カリウムは消費されるのが早いので適切な時期に追肥が必要です。
大きな植木鉢で用土を使う場合は、植え付け時や植え替え時に緩効性の化学肥料や臭いの少ない有機肥料を元肥として十分に施し、その後生育を見ながら液体もしくは固形の化成肥料を追肥として施していくと良いでしょう。
ハイドロカルチャーのような土を使わずジェルボールやハイドロボール、ゼオライトを培土として使う場合は、元肥を施して土作りすることができませんので、主に追肥によって養分を与えていきます。追肥には固形肥料ではなく、液体肥料を用いることが主流です。
植物の種類によっては、肥料をそこまで必要としないものもありますので注意しましょう。
ミントに対する肥料のやる時期と頻度
ミントの肥料はいつ、どれくらいあげればいいのでしょうか。下記にミントの一般的な肥料をやる時期と頻度について、基本的な考え方を説明します。
- 春
春は植えつけ・植え替えの時期です。植えつけ・植え替えの時は元肥として緩効性化学肥料を用土に混ぜて施します。植え替えをしない場合には、追肥として緩効性化学肥料を置き肥します。
- 夏
春にしっかり元肥・追肥していれば肥料は必要ないでしょう。ミントの開花は夏です。蕾のころがミントの香りが強くなります。保存用などで多く収穫した場合は、液体肥料(液肥)を規定より薄めて、水代わりに与えます。
- 秋
秋も植えつけ・植え替えの時期です。植えつけ・植え替えの時は元肥として緩効性化学肥料を用土に混ぜて施します。植え替えをしない場合には、追肥は必要ありません。
- 冬
冬は生育が弱まります。肥料は不要です。収穫も行わないようにしましょう。
元肥・追肥に使えるおすすめの固形肥料 2選!
固形肥料は、液体肥料(液肥)と比べ、緩効性・遅効性の肥料が多くなります。植え付け時、植え替え時の元肥として使用できます。また、観葉植物の生育が始まる春先から、用土の上に置けば2ヶ月以上効果が持続する追肥として使用できる肥料もあります。効果的な使い方ができる観葉植物におすすめの固形肥料をご紹介します。
ハイポネックス「いろいろな野菜用粒状肥料」
ハイポネックスから販売されているアミノ酸入りの肥料がおすすめです。有機と化成(肥効機関の異なる4種類)の組合せで、すぐに効き始め安定した効果が約1〜2ヶ月間持続します。アミノ酸も含まれているので、根張りがよくなったり品質が向上します。元肥・追肥どちらでも使用することができるので、家庭菜園やプランター栽培などでも気軽に使用することができる肥料です。
ハイポネックスの粒状肥料として最も有名な「マグァンプK」も使うことができます。
花ごころ ハーブ・香草の肥料
花ごごろの「ハーブ・香草の肥料」は、ハーブの花色や香りを豊かにする効果があります。N-P-K=6-5-5であり、有機質を多く含んでおり、安心して使える肥料です。花ごころは、バラや花に効く肥料を中心に様々な商品を販売しています。
ミントにおすすめの液体肥料(液肥)と活力剤 4選!
液体肥料とは?
液体肥料とは、液肥(えきひ)とも呼ばれ、液状になった液体の肥料のことを言います。液体肥料は、用土に混ぜ込んで元肥として使用することはほとんどなく、追肥として使用することを主としています。液体肥料には
- そのまま希釈せずに使用するタイプ(ストレートタイプ)
- 定められた希釈率で液肥を薄めるタイプ
の2タイプがありますので、その製品の使い方をよく読みましょう。希釈した液体肥料は土壌に散布します。
また、液体肥料は速効性(効き目がすぐに出やすい)タイプのものが多いため、前述したとおり追肥としての使用がおすすめです。
液体肥料はすぐに効果が出る速効性のある肥料がほとんどで、観葉植物においては春先までは固形肥料で元肥等ベースを作り、生長期の夏から秋にかけて液体肥料で栄養分を補っていくイメージで使用します。
また、ハイドロカルチャーや水耕栽培では、ハイドロボールやゼオライトなどの多孔質で保湿、保肥力のある培地を使うため、液体肥料(液肥)をメインに栄養分を補っていきます。
液体肥料の商品は多くありますが、ハーブの追肥に適している液体肥料のおすすめを紹介します。
ハイポネックス専用液肥 野菜
ハイポネックスの液肥です。アミノ酸配合で緑豊かに育ちます。原液ですので水で希釈して使用します。
微粉ハイポネックス
ハイポネックスの粉状肥料として最も有名なものは「微粉ハイポネックス」です。水に溶かして液肥として使用するタイプのものとなります。様々な植物に適用でき、鉢植、家庭菜園だけではなく、水耕栽培やペットボトル栽培にも使用することができます。特に植物の根を丈夫にするカリウム(加里)が多く含まれ、秋に与えると、花つきを良くしたい場合や耐寒性を高める効果が期待できます。
液体肥料(液肥)国内トップシェアを誇るハイポネックスの定番液体肥料です。ハイポネックス原液は、「三大要素(窒素、リン酸、 カリ)」の他、マグネシウムやカルシウムなどの「二次要素(多量要素)」、さらに鉄をはじめとした「微量要素」を含む15種類の栄養素を最適のバランスで配合された液体肥料(液肥)で、水で薄めて使います。
他のハイポネックス原液などの商品もガーデニング初心者にとって扱いやすいので、興味ある方は下記も是非一読ください(アブラムシやヨトウムシなどの病害虫の予防・駆除という農薬的要素も入っている肥料や、芝生など作物に特化した肥料、希釈しないでそのままの濃度で使える肥料もあります)。
ハイポニカ液体肥料
ハイポネックスの他にハイポニカ液体肥料もおすすめです。ハイポニカ液体肥料は、協和株式会社が開発した水耕栽培だけでなく、土耕栽培や鉢栽培などにも利用いただける液体肥料です。花・野菜・樹木・果樹など、あらゆる植物に対応しており、苗から成木まで植物の生長段階を問わずに同じ希釈率でうすめて使用できる、養分満点の非常に便利な液体肥料になります。
ハイポネックス キュート ハイドロカルチャー・水栽培用
こちらは、液体肥料ではなく活力剤ですがハイドロカルチャー・水栽培用です。水で希釈する必要はなく株元へそのまま使用できます。活力剤は、単体で施用するのではなく、あくまで肥料にプラスして施用するものです。肥料はしっかりと適期に施しつつ、植物が弱ってきたり、より綺麗に花を咲かせたい、葉緑素(光合成に影響があります)を増やして葉を青くイキイキさせたいときに有効です。
その他のハイポネックス原液をはじめとする液体肥料も使用することができます。また、微粉ハイポネックスも希釈したり、溶かしたりする面倒さはありますが、もちろんハイドロカルチャーに使用可能です。
ハイドロカルチャーには、他にもおすすめの肥料があります!
防ぎたい!肥料にまつわるトラブルあれこれ
肥料のやりすぎ
ミントは、野菜栽培などとは異なり冬には休眠期になったりと、比較的植物の中でも肥料を必要としません。このため、家庭菜園のようなペースで肥料をやると、やりすぎになってしまい肥料焼けを起こします。
同じく、ハイドロカルチャーの場合は、水をやりすぎて根が腐って草花を枯らしてしまったり、根詰まり、またカビが生えたりしてしまうことがあります。水が常に容器に満たされた状態で風通しの悪い所に放置すると起こりやすいため、下記のことを心がけて育ててください。
- 水分が切れてから水を与えるようにする
- 風通しの良い場所に植物を置くようにする
肥料は絶対混ぜないで!
よくある失敗として、いろいろな肥料を混ぜて高い栄養素の肥料を作り与えようとしてしまうことが挙げられます。肥料を混ぜると化学反応を起こし、植物自体に被害が出るだけでなく、有害物質・ガスが発生したりと、大きな事故につながる危険性があります。くれぐれも、肥料同士を原液で混ぜることはしないでください。
その他 ミントの栽培で気をつけたいポイント
害虫に気をつけましょう
ミントは、アブラムシ、ハダニ、ヨウトウムシが発生して寄生しやすいです。野外であればある程、発生し易いといえます。これらの虫が発生した時は、粘着テープで除去する、また殺虫剤などの薬剤で駆除、防虫する方法があります。どちらにせよ、早く対応するに越したことはないので、葉っぱを観察して発見した時はすぐに捕殺するようにしましょう。
多く発生している場合は、殺虫殺菌スプレーの「ベニカ」シリーズで害虫退治するのがおすすめです。(ホームセンターのガーデニング・園芸、ガーデニンググッズコーナーによく置かれています)
栽培環境
ミントは、半日陰でも育てることができるので置き場所には困りませんが、日陰でもなるべく明るい日陰で管理しましょう。夏の強い直射日光は葉焼けの危険があるので気をつけましょう。生育が早く、庭植えすると地下茎(ランナー)を伸ばしてどんどん増えます。庭植えにする場合も、鉢植えに植えたものを床に植え付けるか、地面にプラスチックなどの仕切りを深くいれてから植えると横に広がるのを防ぐことができます。
また違う種類のミントを近くに育てると交雑する可能性もありますので、なるべく離して育てます。
鉢植えの場合は、用土は市販の野菜用培養土など保水性のある土で育てましょう。乾燥にはあまり強くないため水はけのよい多肉植物の培養土などは向きません。室内でも育てることができますが、キッチンの窓辺など明るい場所で育てるとよいでしょう。
水やり
水を好むので、用土の表面が乾いたら、葉の上から鉢底から水がでるまで与えます。水切れをすると葉がしおれたり、下葉がおちてしまうこともあります。多年草ですので、冬も霜にあたらないようにして、冬越をします。水やりは続けます。
植えつけ、植え替え
冬と真夏を避ければ植え付け、植え替えはいつでもできます。ミントは生長が早いので1年に一度は植え替えをしましょう。植え替え時に株分けをすると増やすこともできます。
剪定・切り戻し・収穫
花が咲くと葉が固くなります。葉の収穫が目的であれば、こまめに花穂を切り取りましょう。春に新芽が出てきたら先端を切り取る摘心をすると、元気な葉が育ってよいミントが収穫できます。また草丈がどんどん伸びるので、姿を整えるため収穫を兼ねて刈り取りましょう。
特に花が咲く夏前は、ミントの香りがよくなります。この頃に収穫して刈り取っておくと、夏の蒸れを防ぐこともできるでおすすめです。収穫は冬以外は随時行えます。
剪定や切り戻しをすると、新しい芽がどんどん出てきます。
ふやし方
種まき、株分けや挿し木で増やすことができます。鉢植えの場合は、株を新しくすると木質化を防ぐこともできるので、春や秋の植え替え時に株を半分にして、新しい用土に植え替えて増やします。
さし木は、茎を15㎝程度に切って、下葉を落とします。水上げしてから土に挿すか、水に差しておくだけで発根します。根が伸びたら用土やハイドロカルチャーなどに植え替えます。
種をまくのは、4月中旬以降に行うと発芽しやすいです。ポットに種を蒔いて水を切らさずにしておけば一週間程度で発芽します。
まとめ
ミントは、清涼感のある香りで、料理やお茶に入れたり、夏はたくさん収穫したミントでモヒートをつくったり、ポプリや入浴剤にしたりといろいろと用途があります。夏はたくさん収穫できるので、モヒートなどのカクテルも人気です。半日陰でも育ち、生育旺盛で繁殖力が強いので「爆殖植物」とも呼ばれています。
品種によっては庭の雑草を軽減するグランドカバーとしても使えます。ミントに含まれるメントールが虫除けにもなります。ミントのポット苗は園芸店やホームセンターなどでも、安価で手に入れやすいのも魅力です。ミントの花言葉は「美徳」や「効能」。どんどん増えるのでお友達に株分けしてプレゼントしても喜ばれます。
ハーブは、ミント以外にもローズマリーやバジルなどは虫も付きにくく育てやすいのが特徴です。ぜひお気に入りのハーブを手に入れて収穫の楽しみを味わってみるのはいかがでしょうか。