リン酸カルシウム肥料とは、リン酸(P)とカルシウム(Ca)を主成分とした肥料です。カルシウムに拮抗するカリウムを含まないものも多く、リン酸の供給と同時にカルシウムを効率的に供給でき、植物の生長に必要な成分を補うことができます。中でも、亜リン酸とカルシウムを組み合わせた液体肥料(液肥)が人気です。
この記事では、リン酸とカルシウムを含んだリン酸カルシウム肥料の基本と特徴を解説します。
リン酸カルシウム肥料とは
リン酸カルシウム肥料とは、リン酸(P)とカルシウム(Ca)を主成分とした肥料です。リン酸とカルシウムを補える肥料で、植物の生長に合わせて施用することで、効果が大きく出ます。
リン酸カルシウム肥料は、広義として主に以下の3つに分けることができます。
過リン酸石灰・重過リン酸石灰
リン酸カルシウムが含まれている肥料として、「過リン酸石灰」「重過リン酸石灰」が挙げられます。それぞれ、「過石」「重過石」と呼ばれることもあります。
過リン酸石灰(過石)の基本と効果
過リン酸石灰は、第一リン酸カルシウム Ca(H2PO4)2·H2O と硫酸カルシウム(石膏) CaSO4 の混合物で、りん酸以外に硫黄、カルシウムやマグネシウムなど作物の生育に必要な養分も多量含んでいるので広く愛用されていました。最近では、高濃度の燐安(DAP、MAP)に一部代替され、消費量が少なくなっています。
過リン酸石灰は、可溶性リン酸として15%、水溶性リン酸を13%以上含むことが保証されています。また、可溶性石灰、く溶性石灰、水溶性石灰、可溶性硫黄をそれぞれ1%以上含むことも保証されています。(出典:肥料の品質の確保等に関する法律に基づき普通肥料の公定規格を定める等の件 – 農林水産省公示)
過リン酸石灰に含まれるリン酸は、水溶性リン酸が多いので、水に溶けて作物に吸収されやすいです。そのため、速効性のあるリン酸肥料として使用することができます。また、リン酸以外に、硫黄、石灰(カルシウム)、苦土(マグネシウム)、鉄などの多量要素・微量要素が含まれているので、それらの補給としても役立ちます。
重過リン酸石灰(重過石)
過石と同様に主成分はリン酸一石灰であるが、リン酸含量が高く、可溶性リン酸は30%以上含まれています。
リン酸含量が高いことで、施肥の回数など手間が減ります。肥料の効果、施用方法については、過石とほぼ同様ですが、高成分でありムラが出やすくなるため注意が必要です。
カルシウムが含まれた亜リン酸肥料
亜リン酸肥料にもカルシウムが含まれたものがあります。最近では、リン酸を効率よく植物に吸収させるため、亜リン酸肥料が注目されています。
カルシウムはリン酸とともに吸収されることで、効果を発揮しやすいです。そのため、理にかなっている配合と言えるでしょう。カルシウムの効果は、果菜類の尻ぐされ、葉物野菜の芯ぐされ、花卉類のチップバーンへの対策が期待できます。
骨粉・バットグアノなどの有機肥料
有機肥料(有機質肥料)の中にもリン酸とカルシウムが多く含まれた肥料があります。中でも骨粉やバットグアノがよく利用されます。
リン酸カルシウム肥料の具体的な商品
ホスカル(サカタのタネ)
ホスカルはリン酸とカルシウムに特化した液体肥料です。リン酸成分は亜リン酸で、一般的なリン酸肥料と比べて根や葉面から吸収されやすく、即効性があります。
また、拮抗するカリウムを含まないことで、効率的に供給することができます。液肥の中でも亜リン酸とカルシウムの組み合わせは非常に珍しく、植物に強い窒素中断(わい化)や石灰欠対策に有効です。
過燐酸石灰(朝日アグリア)
リン酸を17.5%含んだ、速効性の酸性肥料です。速効性リン酸肥料(花肥・実肥)で、植物の初期生育に有用な肥料で幅広く使われます。実物野菜や花などの元肥・追肥として特に効果的です。
その他の過燐酸石灰肥料もほぼ同様の成分量ですから、必要な量や手に入りやすさなどから選ぶと良いでしょう。
リン酸カルシウム肥料の購入場所
家庭菜園等で使用する肥料は、ホームセンター、100均、インターネットなどで購入可能です。肥料を購入できる主な場所・方法は以下のとおりです。プロ農家の方は、JAや資材店等に相談すると良いでしょう。