人参の水耕栽培といえば、普段は捨ててしまうヘタの部分を使って、人参の葉を育てるのが人気ですが、そこから根の部分を作ることはできません。
根菜である人参は、水と肥料だけでは作れませんが、土にかわる培土を使えばミニニンジンであれば水耕栽培も可能です。ここでは種まきからつくる人参の水耕栽培の育て方についてわかりやすく説明します。
人参の水耕栽培について
人参の水耕栽培の手順を説明する前に、少し水耕栽培について説明しておきます。
土を使わず培養液(肥料を含んだ水)で野菜や草木を栽培する方法を、「養液栽培」といいます。養液栽培は、土に代わる用土(固定培土)を使う栽培方法の「固定培土耕」と、固定培土を必要としない「水耕栽培」に分かれます。
しかしこの辺りの定義は園芸上は曖昧で、土を使わず培養液で育てる「養液栽培」を広域で水耕栽培と呼んでいることもあります。水栽培や水耕などと呼ばれることもあります。人参の根を栽培するのは、正式には「固定培土耕」ですが、ここでは水耕栽培として説明しています。
手軽なのは水と容器だけで始められる方法です。葉物野菜やハーブなどの栽培に最適な栽培方法です。人参の切れ端のヘタをつかった再生野菜(リボーンベジタブル)も、この方法で人参の葉を栽培することができます。
人参の根の部分を栽培したい場合には、水だけでは育たないので土のかわりになる固定培土が必要となりますが、ミニニンジンなどは家庭でも水耕栽培(養液栽培)で作ることができます。
種まきから始める人参の水耕栽培
それでは、人参の水耕栽培のやり方を説明していきます。容器はペットボトルやプラカップなどが使えます。ミニニンジンであれば5㎝~10㎝ほどに成長するので、できれば高さが15㎝あると安心です。
種まきの時期
人参は、発芽温度は4℃~33℃と幅広いのですが、適温は15℃~25℃。生育温度は15℃~20℃と冷涼な気候を好みます。春と秋に種をまくのがおすすめです。温度が低いうちと発芽までに時間がかかります。
用意するもの
- ミニニンジンの種
- ペットボトル or プラカップ(できれば高さが15㎝程度あるもの)
- バーミキュライト
- キリ(プラコップに穴を空けるために使います)
- 鉢底ネット(排水用のネットでも代用可)
- プラコップが収まるトレー
手順
- 手順1容器の準備
ペットボトルを使う場合はは上部を切り取ります。
容器の底に、キリ等で穴を空けます。
容器の中に、鉢底ネットをいれて、バーミキュライトを入れます。
プラカップをトレーに置き、水を入れバーミキュライトに水を吸わせます。 - 手順2種まき
割り箸等で、バーミキュライトに穴をあけて、重ならないように種をまきます。
人参は発芽が難しいので多めに撒いておきましょう。
土を薄く被せ、上から霧吹きで水を与えておきます。水は腰水で与えます。トレーの水を切らさないようにしましょう
- 手順3培養液で育てる
種まき後、10日程度で発芽します。発芽してきたら培養液で育てましょう。
水耕栽培用の肥料をつかって、水に薄めて使います。培養液は、トレーにいれて底穴から吸わせる腰水のまま育てます。
- 手順4間引き
間引きをしながら育てます。
本葉が2~3枚になったら、元気な苗を残し間引きします。
株間が1.5㎝程度になるようにしましょう。
本葉が4~5枚になったら、さらに株間を3㎝~5㎝程度になるように間引きます。 - 手順5収穫
種まきから70日~90日ほどたったら収穫の時期です。
地際の根の部分が2㎝ほどになったら収穫しましょう。
葉っぱももちろん食べれます。
人参の水耕栽培の育て方
発芽の成功率を上げるには
人参は発芽が成功すれば、栽培の半分が成功といわれるほど発芽不良が起こりやすい野菜です。タネは多めにまいた方がよいでしょう。発芽の成功率を上げるにはいくつか注意点があります。
- 種を選ぶ ニンジンの種は短命で、採取翌年の夏を越すと発芽が悪くなります。タネはあたらしいものを、また人参にはペレット種子もありますので、そちらもおすすめです。
- 覆土は薄くしすぎない 人参の種は好光性だからと覆土を薄くしすぎると、乾燥や温度が高温になったり低温になりすぎたりします。裸種子が5mm~10mm、ペレット種子の場合は10mm程度がよいでしょう
- 乾燥させない 発芽の好適水分は20%~60%で土をもったときに崩れない程度の水分が必要です。夏まきで発芽まで8日程度かかるのでこの間は乾燥しないように注意が必要。とくにペレット端子は乾燥に弱いので注意しましょう。
- 温度 発芽温度は4℃~33℃と幅広いのですが、適温は15℃~25℃。できるだけこの温度にちかいときに種まきしましょう
環境・水やり
人参は日の当たる場所を好みます。なるべくベランダなど日の当たる場所で育てましょう。しかし日光に当てて、培養液で育てると容器に藻(アオコ)が発生しやすくなります。容器(トレー)はアルミホイルなどで遮光し、ぬめり等が出てる場合には水洗いしましょう。
水やりは、トレーに水を張り、容器の穴から水を吸わせる腰水で行います。養液が切れないようにして育てましょう。
肥料
水耕栽培は土から栄養が取れないため、肥料を使って育てる必要があります。
水耕栽培用の肥料は普通の肥料とは異なり、カリ成分が高めに設定されていたり、二次要素(多量要素)や微量要素も含まれているなど、普通の肥料とは組成が異なります。水耕栽培は根が直接栄養素を吸い上げる形になりますので、培養液の組成や状態がとても重要となります。必ず水耕栽培用の肥料を使用しましょう。
家庭で使える水耕栽培用の肥料として有名なものは「ハイポニックス微粉」や「ハイポニカ液体肥料」です。苗が小さいころは、パッケージの濃度より薄めて使います。
下記のページに水耕栽培用の肥料についてまとめておりますので、参考にしてください。
バーミキュライトについて
バーミキュライトとは、原料の苦土蛭石(ケイ酸塩鉱物)を高温で加熱した無菌の無菌の土壌改良材です。軽量で、保水性や保肥性に優れているため水耕栽培にもよく使われます。
ほぼ無菌状態のため、育苗から挿し木などにも使われ、使い捨てカイロの原料でもあります。100均などでも手軽に買え、土ではないので一般ごみとして捨てることもできる自治体が多いので、手軽に使えます。
この他にも養液栽培では固定培地としてヤシガラ、ピートモス、ロックウールなどが使われます。
まとめ
人参は家庭菜園で育てると、葉っぱまで食べることができます。途中で間引きした葉や茎も食べれるので、スープやみそ汁、サラダなどにも使えます。セリ科の植物ですので独特の香りや苦味が気になる人は、炒め物やかき揚げなど油を使った料理がおすすめです。
水耕栽培ではこのほかに、シソやミント、バジルなどのハーブや、トマト、キュウリなどの本格野菜も作れます。リボベジでは、豆苗や大根、クレソンなどもできるので、いろいろな野菜やハーブなどを作って収穫を楽しんでみてください。