そばは成長が早いため、初期生育を早めることで雑草を防除するのが基本ですが、排水の良くない土地での初期不良や、連作により雑草が多く生えることもあります。
この記事では、そば栽培に適用のある除草剤や、効果的な使い方についてわかりやすく説明します。
そば栽培の雑草対策について
そばは生育が早く収穫までの期間が短いため、雑草の生長より苗を早く成長させ、雑草を生えさせなくするのが基本です。生育期間中に生えた雑草は、中耕培土や除草剤を使って圃場の雑草を対処します。
- は種前にすでに雑草が生えている圃場には、非選択性の茎葉処理剤の除草剤をつかって雑草を枯らしておく
- 湿害により初期の生育不良が起きやすいため、排水対策をし、耕起を丁寧に行ない初期生育を早め
- 開花始めに除草を兼ねて中耕し、株元に土を寄せる培土を行う
- 生育中に雑草が生えてしまった場合には、茎葉処理剤を使って雑草を駆除する。
そば栽培に使える除草剤の種類と使い方
除草剤の種類
除草剤には、大きく分けて雑草が発芽する前もしくは雑草の生育初期に、土にばら撒いて使う「土壌処理剤」と、雑草がある程度成長してから葉や茎に薬液を散布する「茎葉処理剤」があります。茎葉処理剤には、葉や茎にかけるだけで根まで枯れるものと、薬剤がかかった部分のみ枯れる接触型の除草剤があります。
また除草剤には、作物に薬液がかかっても枯れず、雑草だけがかれる選択制の除草剤と、薬液がかかったらどんな植物も枯らしてしまう非選択性の除草剤があります。選択制除草剤は、作物に影響がないため安心して散布できますがそば栽培では、イネ科雑草だけに効果がある選択制の除草剤しかないため、広葉雑草等が生えている場合は作物に薬液がかからないように注意が必要です。
そば栽培では、は種前に生えている雑草には、非選択性の茎葉処理剤を使い、生育中に生えてきた雑草には雑草の種類により非選択性の茎葉処理剤か選択制の除草剤をつかって防除します。
そば栽培では、あまり土壌処理剤は使われません。しかし耕作放棄地などで雑草が繁殖している場所、排水対策をしても生育初期の成長が良くない場合などでは、土壌処理剤を使って防除する方法もあります。
土壌処理剤の使い方
土壌処理剤は、土にばら撒いて使うことで、土壌に1cmほどの処理層を作って、雑草の種子の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があります。除草剤によって抑制期間は変わりますがおおよそ40日~60日ほどです。そば栽培に使う場合は、雑草発生前の「は種後出芽前」に全面散布して使います。
茎葉処理剤の使い方
事前に雑草対策をしても、栽培途中に雑草が生えてきてしまったら、茎葉処理剤を使って雑草を駆除しましょう。選択制の除草剤を使うことで、薬液がかかっても、そばは枯らさず、雑草だけを枯死させることができます。
雑草の種類(イネ科雑草、広葉雑草)によって使う除草剤も異なります。どんな雑草が生えているのか確認して、それに合った除草剤を使うことが大切です。
基本的な使い方は、成長している雑草の茎や葉に、水で希釈して散布します。(希釈倍率・雑草の大きさなどは除草剤のラベル参照のこと)噴霧器(散布機)を使うと無駄なく効果的に雑草に薬液を散布することができます。
農薬の希釈について
除草剤は水で希釈してつかうものがほとんどです。希釈倍率や使用量を間違えると、雑草の除草に効果がないばかりか、作物等に影響を与えることもあります。除草剤の希釈方法の記事や、便利な計算アプリもあります。
そば栽培に適用のあるおすすめの除草剤
に適用のある除草剤について、特徴や散布時期について説明します。
非選択性の茎葉処理剤
畑にすでに雑草が生えている場合には、耕起(こうき)だけでは雑草を駆除できないこともあります。多年生雑草が生えている場合には、根までからすグリホサート系除草剤がおすすめです。グルホシネートの除草剤は、茎葉にかけても根までは枯れないので、1年生雑草が生えている場所に有効です。
グリホサート系除草剤
有効成分にグリホサートを含む除草剤は、非選択性の茎葉処理剤です。イネ科、広葉の一年生雑草、多年生雑草、ササ類、雑灌木などほぼすべての草種に有効で、枯らす効果があります。性質は遅効性で効果の発現に3 ~7日、そして完全な効果に10日~2カ月ほどを要します。
グリホサート系の除草剤は、葉や茎に薬液をかけるだけで根まで枯らす効果があるので、土壌に根を張っている雑草にも効果的です。で使えるグリホサート系の除草剤は下記のものなどがあります。散布時期は、耕起前又はは種前まの2週間前までに散布するのがおすすめです。散布可能時期はそれぞれの除草剤のラベルを確認してつかってください。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | タッチダウンiQ |
---|---|---|---|
概要 | |||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | シンジェンタジャパン(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ |
サンフーロンはラウンドアップ のジェネリック商品になります。
グルホシネート系除草剤
有効成分にグルホシネートを含む除草剤は、非選択性の接触型の茎葉処理剤です。そばには、雑草生育期の、「は種前」、「は種後出芽前」の他、生育中の「収穫前日まで」使えます。播種前に1年生雑草が生えている圃場や、生育中に広葉雑草が生えている場所におすすめの除草剤です。
イネ科、広葉、一年生、多年生を問わず、ほとんどの雑草に効果を発揮します。1~3日で効果が発現し、5 ~20 日で完全な効果がでる強力除草剤ですが、吸収移行型ではないため、地下部 、つまり根までは枯死しません。非選択のため、畑地、圃場での散布の際に、農作物にかからないよう注意が必要になります。代表的な製品として、バスタ液剤とザクサ液剤がありますが、ザクサは「は種前」にしか使えません。収穫前日まで使えるのは「バスタ液剤」のみですので注意しましょう。
商品名 | バスタ液剤 | ザクサ液剤 |
---|---|---|
概要 | ||
販売元 | BASFジャパン(株) | 明治製菓ファルマ(株) |
有効成分 | グルホシネート | グルホシネートPナトリウム塩 |
農耕地使用 | ○ | ○ |
選択制の茎葉処理剤
ナブ乳剤
有効成分 セトキシジム 20.00% HRACコード1
ナブ乳剤は、畑作のイネ科雑草(スズメノカラビラを除く)に使われる選択制の茎葉処理剤です。には直接かかっても影響がないため、雑草への茎葉処理だけでなく、薬液がかかることを気にせず全面散布することが可能です。浸透移行性に優れているので、葉や茎に散布するだけで根まで枯らすことができます。
イネ科以外の広葉雑草やカヤツリグサ科には効果がないため、それらの雑草が生えている場所にはこれ以外の除草剤と組み合わせて使う必要があります。そばには、イネ科雑草6〜8葉期 但し収穫30日前まで雑草に茎葉処理するか全面散布も可能です。
土壌処理剤
ロロックス
有効成分 リニュロン 50.0% HRACコード5
ロロックスは、さまざまな野菜に使える、土壌処理剤です。特にヤエムグラ、スベリヒユ、ノミノフスマ、ハコベなど一年生の広葉雑草に効果を発揮します。そば栽培には、は種後出芽前に土壌全面散布して使います。
除草剤の選び方
除草剤は、圃場に合った除草剤を散布することが大切です。圃場にどんな雑草が生えているのか、まずは観察し適切な時期に適用のある除草剤を散布することが、最大限に効果を発揮します。
HRACコードを使ったローテーション散布
除草剤が効かない雑草が増えているという話をよく聞きます。それは殺虫剤と同様に、除草剤に抵抗性を持った雑草が増加しているから。最近は、この抵抗性を防ぐため、除草剤には単剤ではなく混合剤が増えています。これが除草剤のコストが高くなっている原因でもあります。
抵抗性を防ぐには、同じ成分だけでなく、成分によって雑草に効く仕組み(作用機能)が同じものを連続して使わず、ローテーション散布することが大切です。
この作用機能(作用機作)はいくつかのグループ分けすることができ、それが系統です。系統は世界共通のコード「RACコード」に分類されています。殺虫剤ではIRACコード、殺菌剤ではFRACコード、そして除草剤には「HRACコード」が使われます。
HRACコードが異なる除草剤を順番に使うことによって、抵抗性雑草の発生を抑えることができます。HRACコードは一部ラベルに記載しているものもありますが、記載されていないものも多くあります。農薬検索データベースには、RACコードの他適用表、使用上の注意も一覧でみることができますのでそちらも活用してください。
そばに適用がある除草剤・農薬
そばに適用がある除草剤は、あまり多くありませんが「農家web農薬検索データベース」からも探せます。キーワードや適用作物、適用雑草からも探せる便利なデータベースで、そばに使える除草剤や農薬が一覧でみられます。RACコード、適用表、使用上の注意もみることができます。作物名は「そば」「雑穀類」に登録のある農薬が使えます。
そばの栽培には、除草剤の他にも病害虫防除のため、農薬を使うこともあります。栽培日誌をきちんとつけて、農薬の使用量などを管理しましょう。
農家webには無料で栽培日誌がつけられる「かんたん栽培記録」を公開しています。防除暦も確認できるほか、会員登録すれば、LINEに予察情報も届きます。パソコン等が苦手でも、タップで簡単に作業日誌をつけられます。
まとめ
雑草は大きくなると、除草に手間がかかります。排水対策をし苗立ちをよくし、そばを早く大きく育てることで雑草の生える隙間をなくしましょう。それでも生えてきた雑草は早めに手取りしたり、中耕で除草をこまめに行いましょう。栽培に入る前にしっかりと除草しておくことも重要です。除草剤を効果的に使い、栽培中の除草の手間を少なくしましょう。
農家webには、このほかにも畑・農地、水稲に使える除草剤や作物別の除草剤の使い方などの
記事も多くあります。