2021年に国内で初めて確認されたトマトキバガですが、すごい勢いで全国に広がっています。ここではトマトキバガとはどんな害虫か、また効果のある農薬やその他の防除方法について説明します。
トマトキバガの特徴・被害
トマトキバガとは、南米発生のキバガ科に属する夜行性の蛾の一種で、トマトやピーマンのナス科の作物やインゲンなどの果実や茎を食害します。幼虫は体長0.9mm~7.5㎜ほどになり色はクリーム色、緑色、ピンク色と変化し、頭の後ろに黒い線があるのが特徴です。成虫は5㎜~7㎜と小型で褐色の翅に薄い黒斑があります。
繁殖力が強く、1年で10~12回も世代交代をし、温暖な気候でどんどん増えます。卵、成虫、蛹でも越冬するといわれるため大量発生に注意が必要です。
成虫が葉に卵を産み付け、若齢幼虫が葉や茎を食害し、食害部分は表皮のみを残して白変します。老熟幼虫は果実も食害し、その部分から腐敗もおこします。大量発生すると株全体が枯れて大きな被害を及ぼします。


画像出典:農林水産省植物防疫所
農林水産省の植物防疫所でも侵入を警戒している主な病害虫として、トマトギバガは掲載されています。
トマトキバガを防除する際のポイント
トマトキバガに適用する農薬は増えていますが、世代のサイクルが早いため同じ農薬を使い続けると抵抗性が発生しやすくなります。海外ではすでに抵抗性害虫が発生しています。同じ系統の農薬は続けて使わないようにし、30日を1世代とし、隣り合う世代では同じ系統の農薬を使わない「世代間ローテーション散布」を行いましょう。
多発したり老齢幼虫になり芽基部に入り込んだりすると、農薬が効きにくくなります。昼間の成虫や葉裏の若齢幼虫の食害などの初期発見につとめて初期に農薬散布することが大切です。また、成虫をハウス内に入れないようにする、捕殺するなど、科学的防除だけでなく、物理的防除も合わせた、IPM(総合的害虫管理)が大事です。
農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。
- 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
- 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
- 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
- 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法
(IPM・・・Integrated Pest Management)
トマトキバガに効果のある農薬
トマトキバガに効果のある農薬をいくつか紹介します。
プリロッソ粒剤オメガ
プリロッソ粒剤オメガは、トマトとミニトマトに適用のある薬剤で「育苗期後半~定植時」に株元散布が可能な薬剤です。根から吸収された有効成分が全体に行き渡るため、葉裏の害虫にも高い効果を発揮します。
トマトキバガの他に、ハモグリバエ類、アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類にも適用があるため同時防除が可能です。
ディアナSC
ディアナSCは、チョウ目害虫、アザミウマ目害虫、ハエ目害虫に効果の高い薬剤で、多くの作物に使える薬剤す。トマトキバガの防除にはトマトとミニトマトに使えます。
コナジラミ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、オオタバコガ、チバクロバネキノコバエと同時防除や、コナジラミ類のローテーション散布の1つとしても使えます。安全性が高く収穫前日まで使える薬剤です。
グレーシア乳剤
グレーシア乳剤は、日産化学(株)が発明した非常に新しい殺虫剤です。 コナガなどのチョウ目や、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目等の幅広い作物害虫に高い効果を発揮します。
高い即効性(速効性)がありながらも、茎葉への散布処理によって約2週間の効果が持続する優れた残効性があります。植物体への浸透移行性はありませんが、有効成分が葉組織内で葉表から葉裏に拡散する浸達性があり、葉裏の害虫もしっかり防除することができます。
トマト、ミニトマトに適用がありハスモンヨトウ、オオタバコガ、コナジラミ類、アザミウマ類、ハモグリバエ類、トマトサビダニとの同時防除が可能です。
その他トマトキバガに適用がある農薬一覧
トマトキバガに適用のある代表的な農薬の一覧です。トマトに適用があってもミニトマトに適用のない薬剤もあるので最新の適用表を必ずチェックしましょう。
この他トマトキバガに適用のある農薬は、「農家web農薬検索データベース」からほとんどの農薬を検索できます。
農薬以外の防除方法
物理的防除
ハウス栽培では、防虫ネットで成虫の侵入を防ぐことが有効です。成虫は0.9㎜~なので目合いは0.8㎜程度のものがよいでしょう。
耕種的防除
圃場内のナス科雑草は、増殖や越冬場所にもなるため除草を徹底しましょう。
また被害葉、被害果実、幼虫や卵の付いた葉は切り取り十分な期間密閉させたたのちに、土中深くに埋設するか焼却する等の処理を行いましょう。
生物的防除
海外ではトマトキバガの生物農薬として、コナジラミ類、アザミウマ類の成虫や幼虫の天敵とされる「タバコカスミカメ」も有効とされています。
またトマト・ミニトマトに適用のあるエスマルクDFは、微生物を利用した生物農薬の一種(BT剤)です。
まとめ
日本では大規模な被害はまだ多くありませんが、繁殖力が強く世界中に広がり大きな被害を及ぼしています。大量発生してからでは、防除は難しいため発生が疑われる場合には、各地の病害虫防除所などに連絡をし、地域で適切な対応をしましょう。

その他のトマトの防除情報については、病害虫ごとの対処方法の記事がありますのでそちらも参考にしてください。
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