病害虫別

ネギのさび病に効く農薬、防除方法について徹底解説!

ネギで進行が進んださび病 病害虫別

さび病はネギニンニク、ブドウなどでよく発生する病気です。ここでは、ネギのさび病を予防、治療するためにはどのような農薬を使えばいいのか、その他、効果的な防除法について詳しく解説してきます。

この記事の執筆者・監修者
農家web編集部
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さび病とはどんな病気?

さび病とは?

さび病はPuccinia(プクシニア)属の糸状菌(カビの一種)によって起こる病気です。タマネギ、ニラ、ネギ、ニンニク、カブ、ラッキョウ、ラディッシュなどでよく見られます。

ネギに発生したさび病
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

糸状菌であるさび病の菌は、降雨や結露による水滴で濡れ続ける環境で発生しやすくなります。特に,5~25℃のときに感染し、感染適温は10~20℃になります。湿度が高ければ高いほどさび病の胞子は増加します。

感染源は、ネギ,タマネギの罹病株からが多く、発生してしまうと、近くのネギ類にさび病をうつしてしまいます。

さび病の症状

さび病が発病すると、写真のように、葉に橙色または褐色の楕円状の小さい斑点が発生します。これが鉄の錆(さび、サビ)のように見えることから、さび病と言われています。

ネギのさび病の病班
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

病気が進行すると、写真のように斑点が増加していき、斑点は葉の表や茎にも広がり、枯れることもあります。

ネギのさび病の病班が進展した状態
写真提供:HP埼玉の農作物病害虫写真集

このようになってしまうと生育が阻害され、野菜などでは収量や品質の低下、花きでは鑑賞価値の低下を招いてしまい、非常に大きな被害を出してしまいます。

発生する原因

カビ(糸状菌)の胞子が風によって運ばれ、葉に付着することで感染します。

さび病のカビは水分がないと病原菌の胞子は発芽・侵入しないタイプです。やや冷涼な多湿の環境で発生しやすいタイプといえます。(5~25℃のときに感染し、感染適温は10~20℃)

冬以降、気温が高めに推移する年は発生時期が早まります。早めの防除が必要になるので注意しましょう。

防除における、予防と治療

病原菌の中でも、カビ(糸状菌)は以下のような3段階で病気の発病させます。

  1. カビの胞子が葉に付く
  2. 付いた菌が葉の表面のワックス層を溶かして菌糸を伸ばし、植物の細胞内に吸器を作る
  3. 植物の細胞から栄養を取り、分生胞子を作って繁殖し、再び胞子を拡散、増殖させる

1の段階でカビを防ぎ、2の段階に行かないように、胞子の発芽を抑制したり菌糸の侵入を阻害するのが「予防剤」で、2、3以降になり、菌糸を死滅させたり、分生胞子が作られるのを阻害するのが「治療剤」になります。

農薬のラベルには、「予防剤」「治療剤」の表記はありません。菌が蔓延した状態で完全に効く治療剤はほぼないため、「治療剤」と名乗ると、効かなかった場合にメーカーとして不利益を被るのを避けるためだと思われます。

「予防剤」か「治療剤」かは、「病気の初発後に使用しても効果が期待できる」など、発病後でも防除効果が期待できるような記載があるかどうかで判断することができます。

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ネギのさび病に効果がある農薬

さび病には様々な適用農薬があります。ここでは代表的な農薬を紹介します。

予防のために、越冬後の初発時に薬剤を散布すると、病気の進展を抑えることができます。

ストロビーフロアブル(FRAC 11)

ストロビーは予防効果に優れた殺菌剤で,発病初期から使用すると高い防除効果、また散布後に安定した防除効果が得られます。幅広い抗菌スペクトラムを有することから,多種の病害に対して防除効果が認められ,総合的な防除薬剤としての利用も可能な薬剤です。

アミスター20フロアブル(FRAC 11)

アミスターの有効成分のアゾキシストロビンの作用性は呼吸阻害で、作物に侵入する前の病原菌に対して予防効果があり、侵入した病原菌に対しても治癒効果があります。浸透移行性があり、雨に強いため効果が持続するのが特長です。

ラリー乳剤(FRAC 3)

ラリーは浸透移行性により安定した効果を示しつつ、耐雨性も示すおすすめの殺菌剤です。

シグナムWDG(FRAC 7,11)

シグナムWDGは、互いに作用機作の異なる薬剤成分(ボスカリド、ピラクロストロビン)が配合されており、より幅広い病害に対応するように作られた野菜用殺菌剤です。 うどんこ病、炭そ病、つる枯れ病、すすかび病など幅広い病害に優れた効果を示します。

RACコードとは??

RACコードとは、農薬を作用機構(農薬の効き方)ごとに分類して番号と記号を振ったコードになります。

例えば殺虫剤なら有機リン系は[1B]、ネオニコチノイド系は[4A]など、すべての農薬にRACコードが設定されています。

同じRACコードの農薬を繰り返し使うと害虫や病原菌に抵抗性がついてしまうのを、RACコードが違うコードの農薬を交互に使うことで防ぐことができます。「系統」とも呼ばれますが、RACコードの方が、より厳密に分類されています。 

殺虫剤は、IRAC(アイラック)コード、殺菌剤にはFRAC(エフラック)コード、除草剤にはHRAC(エイチラック)コードになっています。

ネギは展着剤の利用が重要

ネギ類はワックス質が発達しているため、農薬が付着しにくい作物です。このため、展着剤を活用できると、効果が大きく違ってきます。展着剤は、一般展着剤、アジュバント(機能性展着剤)、固着剤と、本当に様々な種類があります。是非、下記を参考にして、展着剤を活用してみましょう。

その他の防除方法

発病した被害茎葉を除去する

病気にかかった植物(特にネギ類)から病気がうつるので、発病した被害茎葉を放置せず、すき込む、また畑から離れた場所に持っていって処分する、また他の疾患した植物を速やかに抜き取って処分しましょう。

密植せず、日当たりを確保

糸状菌(カビ)による病気は、主に水滴から病気がうつります。このため、作物の日当たり、通気性をよくすることは防除に重要です。

タンニン鉄を散布

タンニン鉄とは、様々な作り方がありますが、一例として、鉄と落ち葉と水を一つの容器に入れて置いておくと数日で水が黒色に変色します。これは葉っぱに含まれるタンニンに鉄がくっついてできた液体で、「タンニン鉄」と一部では呼ばれています。

これを3倍程度に希釈して散布すると、さび病の発生が減少した、として活用されている農家の方もいらっしゃいます。

周りをしっかり除草する

圃場の周りに雑草が多くあるとその雑草に病害虫が発生し、繁殖、促進してしまいます。圃場の周りの雑草はできるだけ除草しておくことが、被害を少なくするのに重要です。

除草については、以下のコンテンツが参考になります。(この他、イネ科雑草、広葉雑草、多年生やその他の厄介な雑草(スギナヤブガラシスズメノカタビラなど))は個別の対策、防除記事もあります。

また、土壌の窒素の量を適正に保つなど、畑を良い状態で保つことも、さび病が流るのを抑えるのに大事な要素です。

防除する際のポイント

さび病に限りませんが、菌が一度蔓延し、発病してしまうと、完全に防除するのは非常に難しくなります。このため、防除において最も大事なのは、如何に予防剤などを用いて初発で叩いて、発病させないか、です。

また同じ系統の治療剤・予防剤の連続使用は、農薬が効かなくなる耐性菌の発生を招いてしまいます。菌が抵抗性を持つのを避けるために、系統の異なる薬剤を使うことが重要です。

まとめ

さび病はさまざまな作物でかかる病気です。特にネギではメジャーな病気で、多くの農業者を困らせる病気の一つと言えるでしょう。上手に初期防除し、被害の発生を最小限にすることが重要です。

ここで紹介した農薬は、JA販売店やホームセンターのガーデニング・資材、庭木コーナーにあるものもあります。ほ場で早期発見し、適切な薬剤や防除方法でしっかり発生を予防、ガードできると、農薬散布と言った農作業の回数を減らすことができます。

発生してからの圃場の回復は非常に難しいので、予防でしっかり防除することを心がけましょう。

若い葉や茎の表面にうどん粉をまぶしたように白いかびが生えるうどんこ病の防除は下記を参考にしてみてください。市販のベニカ、ベニカスプレーなども使えます。

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