ミカン、レモン、柚子、オレンジなどの柑橘類の中でも、耐寒性があり病害虫にも強い金柑(キンカン)は古くから家庭で栽培され、初心者にもおすすめの果樹です。
この記事では、そんな金柑の肥料についてやり方やおすすめの肥料、肥料の時期などをご紹介します。
金柑(キンカン)の肥料
金柑は、ミカン科キンカン属の常緑低木です。樹高がそれほど高くならない品種もあるので、庭植え(地植え)でも鉢植えでも育てることができます。肥料については、庭植え(地植え)、鉢植え別に説明します。
肥料時期
庭植えの場合は、2月に寒肥として緩効性肥料を、着果確認後の7月~8月に夏肥を、果実が大きくなる後半の10月~11月に追肥をします。追肥は速効性肥料を使います。
鉢植えの場合は、春に芽が動き始めた3月頃に緩効性肥料を、その後は5月~10月に速効性のある液体肥料(液肥)を2週間に1度施します。
肥料の与え方
庭植え(地植え)
2月の寒肥は、土壌改良効果もある有機質肥料や有機入り肥料を使うとよいでしょう。樹冠の下より少し広めに、肥料をまき軽く土を混ぜ合わせます。春に出る新芽の前に与えます。
着果確認後の夏肥は、幼木~若木にだけ与えます。速効性の肥料を使い規定量より少なめに置き肥します。10月~11月の追肥は速効性の肥料を規定量与え、土に軽く混ぜ合わせて施します。樹勢が弱っているようなら9月頃に液体肥料を与えてください。
鉢植え
3月に固形有機肥料もしくは緩効性化成肥料を置き肥します。追肥は5月と10月に化成肥料を置き肥するもしくは5月~10月の間に液体肥料を水代わりに2週間に与えます。夏の液体肥料は規定量より薄めてあたえるとよいでしょう。
鉢植えは、庭植えより肥料ぎれしやすいので液体肥料もおすすめですが、肥料の与えすぎは注意が必要です。
肥料をあげすぎて肥料焼け?
肥料は、多ければ多いほどよいというわけではありません。土中肥料の濃度が高くなりすぎると、根が吸水できなくなり、植物に障害が発生したり枯れてしまったりすることがあります。これが「肥料焼け」です。
成長が楽しみで、ついつい肥料を多くあげたくなってしまうかもしれませんが、一般に肥料をあげすぎると、かえって植物が弱ることがあり、樹や枝葉に障害が生じることもあります。肥料は過多にならないよう注意しなくてはいけません。また、苗(苗木)は成木に比べ弱いので、特に苗(苗木)の段階では施肥量を減らす工夫が必要です。
金柑におすすめの肥料
金柑を育てる際におすすめの肥料をご紹介します。
金柑におすすめの有機肥料
金柑におすすめの有機肥料としては、油かす、鶏ふん、米ぬかなどがあります。元肥として植え付け時や毎年冬に使用しても良いでしょう。油かすは窒素成分を多く含んでいるので施用する際には施用量に気をつけましょう。また、鶏ふん、米ぬかはリン酸などの豊富に含まれていますが、窒素成分が不足する可能性もあるので、その場合には緩効性化成肥料と併用してみましょう。
油かす(油粕)
油かす(油粕)肥料は、ナタネやダイズから油を搾る工程の残りかすを原料として使用する、植物に由来する有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)を主な成分として含有しており、リン酸やカリウムも多少含んでいます。
鶏糞
鶏糞は、ニワトリの糞を乾燥させた有機(有機物)肥料です。窒素(チッソ)、リン酸、カリの各成分が豊富に含まれています。特に、植物の実や花に栄養を与えたい時に使われるリン酸が豊富です。同じ堆肥として牛ふんが比較されることがありますが、成分が異なるとともに、牛ふんは土壌改良の目的でも利用される点が異なります。
米ぬか
米ぬかは、精米の際に削り取られる外皮の部分を有機(有機物)肥料として利用するものです。リン酸が多く含まれている、緩効性のリン酸肥料です。糖分やタンパク質も含まれているため、有用な土壌微生物の働きを活性化させる効果もあります。発酵させてからつかうとよいでしょう。
みかんがおいしくなる肥料
「みかんがおいしくなる肥料」という名称のみかん専用肥料ですが、金柑にもおすすめです。窒素:リン酸:カリ=8:6:5で配合されているほか、苦土(マグネシウム)も加えられています。大面積で金柑を栽培する場合にはコスト高になってしまうかもしれませんが、庭木などとして栽培する場合にはこうした便利な製品も上手く利用するとよいでしょう。
金柑におすすめの化成肥料
ハイポネックス(Hyponex)
ハイポネックスジャパンが製造販売する「錠剤肥料シリーズ かんきつ・果樹用」という肥料もあります。追肥に利用する錠剤タイプで、置くだけでOKという簡便な肥料です。窒素:リン酸:カリ=8:10:9で配合されているほか、マグネシウム、マンガン、ホウ素、カルシウムも加えられています。
また、ハイポネックスには「ハイポネックス原液」などの液体肥料シリーズもあり、樹勢が弱っているときに与えると良いでしょう。さらにハイポネックスにはマグァンプなど固形肥料のシリーズも販売されています。適している肥料を選択して、使ってみましょう。
マイガーデンベジフル
マイガーデンは、住友化学園芸の登録商標で、粒状の様々な草花・庭木・果樹の元肥や追肥に使うことができる肥料です。栄養分を効率よく吸収させるすぐれた腐植酸入り緩効性肥料として特許を取得していることや、土に活力を与える作用がある腐植酸をブレンドしていることや、肥料成分は樹脂コーディングされていて、土壌の温度変化や植物の生育にあわせて溶出する量が調節され、効き目が持続するのが本製品の特長です(リリースコントロールテクノロジー)。
追肥として、「マイガーデンベジフル」が有効です。また、「マイガーデン液体肥料」や「花工場原液」、「ベジフル液肥」は速効性の液体肥料なので、樹勢が弱り始めたときに薄めの濃度で与えてあげると良いでしょう。使用方法は各商品のラベルの指示に従ってください。
地植えにおすすめ!打ち込み型肥料グリーンパイル
ちょっと変わった肥料に打ち込み型のグリーンパイルがあります。グリーンパイルは樹木に理想的なバランスで必要な栄養:N(窒素)-P(リン酸)-K(カリウム)を配合した樹木(植木・庭木)専用の打ち込み型肥料です。棒状なので打ち込むだけで施肥が簡単にできます。地植えの樹木におすすめの肥料です。

その他 金柑の栽培で気をつけること
甘くておいしい金柑を収穫するには、肥料のほかにも気をつけたいポイントがあります。
栽培環境・水やり
金柑は日当たりの良い場所を好みます。庭植え・鉢植えともによく日の当たる場所で管理しましょう。また金柑の実は寒風や霜に弱いので、鉢植えは霜のあたらない場所で、庭植えの場合は不織布シートを全体にかけてあげるなどして、霜よけ対策をしましょう。
水やりは、庭植えは特に必要ありませんが、夏は水切れに注意し、日照りで乾燥が続くようなら与えます。鉢植えは、土の表面が乾いたら、鉢底から水がでるまでたっぷり与えます。
種類(品種)
金柑の果実を生で食べることを目的とするのであれば、酸味がすくなくて甘い品種を選びましょう。ニンポウキンカン(寧波金柑)は、昔から人気の代表品種です。また種なしの品種「ぷちまる」や糖度が高い「こん太」は日本生まれの品種もおすすめです。
金豆(キンズ)は別名豆金柑(マメキンカン)とも呼ばれ、小型で盆栽や観葉植物として人気があります。長金柑(ナガキンカン)・丸金柑(マルキンカン)の実は酸味が強く、福州金柑(フクシュウキンカン)は実が多く、よく販売されていますが生食には向きません。
植え付け・植え替え
金柑は苗を購入して育てるのが一般的です。また金柑を鉢植えで育てる場合には2年に1度、植え替える必要があります。
植えつけ
水はけのよい土であれば育てることができます。地植えの場合、植え替えることが難しいので、日当たりの良好な場所を選んで植え付けるようにしましょう。
植え付けする苗の大きさにもよりますが、約20〜50cm程度の深さの穴を掘り、土:腐葉土:赤玉土を5:3:2位の割合で混ぜ合わせ半分ほど土を戻します。そのあと、苗を植えて残りの混ぜ合わせた土を戻します。植え付けは真夏、真冬を避けて3月〜4月頃がよいでしょう。植え付けのときには根を触らないようにしましょう。
元肥として施用する緩効性化成肥料や有機肥料(有機質肥料)がおすすめです。
植え替え
庭土を用土として利用することができます。市販の用土を利用する場合は、赤玉土小粒7~8、腐葉土3~2の割合で配合するようにしましょう。植木鉢は、できればプラスチックのプランターではなく、素焼きやテラコッタのものを選びましょう。素焼きやテラコッタの植木鉢は、通気性、吸水性、排水性に優れています。
植木鉢を使う場合は、鉢底に鉢底石を敷き、そこに用土(培土)を半分程度入れて苗を植え付けます。植え付けた苗の周りにも用土(培土)を入れて苗を安定させ、水をたっぷりと与えると根がしっかりと張ってきます。植え付けは真夏、真冬を避けて3月〜4月頃がよいでしょう。。植え付けや植え替えのときには根を触らないようにしましょう。
剪定
収穫が終わった3月~5月頃に、剪定をしましょう。細い枝が混みあっている場合は、間引きしましょう。また樹形を乱す枝や、枯れた枝なども整理することで、日当たりを良くします。ほうきを逆さにしたような形(ほうき仕立て)にするのが一般的な剪定方法です。
摘果
金柑は小さな苗木にたくさんの果実がつきます。着果が多いようなら小さいうちに摘果します。果実が小指大ほどになったら大きな実を残して、小さな実は取り除きましょう。枝の長さにもよりますが、一枝に1個から3個ほどが目安です。枝の真ん中の実を残すとよいでしょう。
鑑賞用でも、木にあまり多くの果実をつけさせると木が弱り、来年実をつけないこともありますので、できれば摘果は行いましょう。
病害虫
害虫に対する備えが必要な場合があります。カイガラムシ、エカキムシ、カミキリムシ(ゴマダラカミキリムシ)が発生した場合には、農薬を散布するなどして防除および駆除に努めましょう。
金柑の肥料を購入
ホームセンターなど店舗で購入する
上記で紹介した肥料は、コメリなどのホームセンターでも販売されています。また、ダイソーなどの100円均一でも販売されていることがありますが、取り扱いのない店舗も多いようなので注意が必要です。
通販で購入する
店舗で実物をみて購入することも良いことですが、「その店舗での取り扱いがない」ことや「そもそもその商品がホームセンターなどの小売店で販売されていない」ことも多いです。肥料は量が多く重いので通販(インターネットショッピング)を利用しましょう。今ではAmazonや楽天市場など様々なECサイトで農業・園芸用品が取り扱われています。店舗よりも安く購入できる場合も多いですので、一度のぞいてみましょう。
まとめ
金柑の皮は、原産地の中国では昔から漢方にも使われ、のど飴などにも使われる体によい果実です。あまり手をかけなくとも、木も丈夫で毎年実をつけてくれるので、初心者の人にもおすすめです。
果実は花が咲いてから約150日ほどで、収穫できます。実はジャムにしたり甘露煮にしたりすることもできます。花が次々と咲くので収穫時期も長く楽しめます。ぜひ自分のお気に入りの品種をみつけて、かわいらしい実を実らせてみてください。