ホウレンソウコナガダニは名前のとおり主にほうれん草を食害する害虫で、施設栽培などで大きな被害をもたらします。ここでは、ホウレンソウコナガダニを防除する農薬や、その他の防除方法について説明します。
ホウレンソウケナガコナダニの特徴・被害
ホウレンソウケナガコナダニは、ダニ目コナダニ科のコナダニ類の一種で、土壌内で増殖し株に侵入し食害します。成虫で体長0.3~0.7mmと小さく、体色は半透明な乳白色で胴体の背面に長い毛が生えています。
発生適温は20℃前後で比較的低温、高湿度を好みます。低温には強く25℃以上の高温でふ化率が下がります。土壌表面5cm以下の部分で土壌中の未分解の有機物や表面の藻を食べて増殖します。
多発する時期は春期(2~5月)と秋期(9~11月)ほうれん草では春まき、秋まき栽培での被害が多くなります。ほうれん草の2~4葉期頃に株に侵入し、4葉期頃になり被害に気付くことが多くなります。被害にあった葉は、展開する葉にこぶ状の小突起や小さな穴をあけ、縮葉し奇形となります。
葉に症状が出てからの防除は難しいため、ケナガコナダニの発生を見逃さずに早めの対策が必要です。



画像出典:HP埼玉の農作物病害虫写真集
ホウレンソウケナガコナダニの防除のポイント
ホウレンソウケナガコナダニは土壌中で未成熟の有機物をエサとして増殖するため、予防として未成熟な堆肥や油粕などの肥料の使用を避ける他、残さなども土壌にすき込まないようにしましょう。
前作で多発している場合には、播種前に土壌消毒を行い、2葉展開期、4葉展開期に農薬散布を行います。
葉に被害がでてからの農薬散布は、被害が広がるのを防げないためコナダニ用のトラップなどをハウスの入り口に設置し、モニタリングし早期発見、早期の薬剤散布が有効です。
またホウレンソウケナガコナダニはククメリスカブリダニ剤などの天敵製剤も使うことができます。化学農薬と組み合わせることで化学農薬を減らすこともできます。
化学農薬散布のポイント
ホウレンソウケナガコナダニに適用のある農薬を選ぶときには、すでに抵抗性が発生している農薬がある場合もあります。地域などで効果が少なくなっている農薬等がないか確認しましょう。
農薬の散布時期は、播種前、ほうれん草の2葉と4葉展開期です。散布はほうれん草の株だけでなく、株間の土壌表面にも散布しましょう。
農薬の散布は、薬剤の抵抗性を防ぐため、同じ系統の農薬は使わずIRACコードを確認して、作用が異なる農薬をローテーション散布しましょう。
またホウレンソウケナガコナダニの防除に天敵製剤を使う場合には、天敵に影響の少ない薬剤を使いましょう。
ホウレンソウケナガコナダニに適用のある農薬
土壌処理剤
茎葉処理剤
| 農薬名 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | IRACコード | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ディアナSC | 2500 | 100〜300㍑/10a | 収穫前日まで | 2回以内 | 散布 | 5 | マクロライド系の有効成分スピネトラムを含む新規殺虫剤です。 アザミウマ、ハスモンヨトウ、ハクサイダニ、 ハモグリバエ類、シロオビノメイガと同時防除が可能。 |
| カスケード乳剤 | 4000倍 | 100〜300㍑/ | 収穫3日前まで | 3回以内 | 散布 | 15 | 幼虫の脱皮時にその致死効果が発揮されるIGR剤で残効が長い薬剤です。 ハスモンヨトウ、マメハモグリバエ、シロオビノメイガ、 アシグロハモグリバエと同時防除が可能です。 |
| アファーム乳剤 | 2000倍 | 100〜300㍑/10a | 収穫3日前まで | 2回以内 | 散布 | 6 | マクロイド系の新しいタイプの殺虫剤で、有効成分が自然由来なため、 安全性が高く、天敵に影響の少ない薬剤です。 ハスモンヨトウと同時防除が可能です。 |
| リーフガード顆粒水和剤 | 1500倍 | 100〜300㍑/10a | 収穫7日前まで | 2回以内 | 散布 | 14 | ネライストキシン系の殺虫剤 アザミウマ類、アブラムシ、アシグロハモグリバエと同時防除が可能 |
| ネコナカットフロアブル | 1000倍 | 100〜300㍑/10a | 収穫3日前まで | 2回以内 | 散布 | 10B | 新規系統の殺ダニ剤 ケナガコナダニの脱皮を阻害するため、2葉展開時の散布がおすすめです。 |
この他にもホウレンソウには多くの農薬が使えます。ホウレンソウのホウレンソウケナガコナダニに適用のある農薬は農家webの農薬検索データベースからほぼすべての農薬が検索できます。
化学農薬以外の防除方法
ホウレンソウケナガコナダニの防除は、農薬をつかった化学的防除以外にも、未熟な有機物を使用しないなどの耕種的防除や、天敵をつかった生物的防除、太陽熱を利用した土壌消毒などの物理的防除などを組み合わせたIPM防除が有効です。
農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。
- 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
- 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
- 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
- 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法
(IPM・・・Integrated Pest Management)
耕種的防除
ケナガコナダニは土壌中で未分解の有機物や藻などをエサに増殖します。油粕や鶏糞などの有機物や堆肥などを使う場合には十分に成熟したものを使いましょう。稲藁や、ホウレンソウの残渣などもエサとなるので土壌にすき込まないようにしましょう。
物理的防除
ハウスでの土壌消毒は、薬剤を使わず夏に太陽光をつかった太陽熱土壌消毒も有効です。
またコナダニ見張番などのコナダニ用のトラップを使って、葉に被害が出る前に発生を見つけることも、早期の発見に有効です。トラップは農薬使用後に効果が出ているかを検証するのにも使えます。
生物的防除
ケナガコナダニの天敵には、トゲダニ類やククメリスカブリダニが有効です。生物製剤では「ククメリスEX」がホウレンソウに使えます。ククメリスカブリダニはアザミウマ類にも効果があります。
生物製剤を使う際には、化学農薬は天敵に影響のない薬剤を使いましょう。
農業アプリを活用しましょう
今まで農業日誌や栽培記録、ノートやパソコンで管理していたという人には、農業に役立つアプリを活用しませんか。農家webの「かんたん栽培記録」アプリはスマホから作物と地域を入力するだけで、防除暦、栽培カレンダーが自動表示。実際の栽培記録はタップ一つで登録可能。自社の「農薬検索データベース」「かんたん農薬希釈計算アプリ」と連動しているので、散布したい農薬をいれればラベルをみなくとも希釈計算も可能で、散布回数もカウントしてくれます。また自分の使っている農薬を登録するだけで、混用が可能な農薬もわかります。
地方自治体から発表される予察情報も反映しているので、農家の防除に役立つアプリです。ダウンロードも不要で、ID登録だけですべての機能が無料で使えるアプリです。ぜひ一度使ってみてください。

この他ほうれん草の病害虫に使える農薬については下記で詳しく説明しています


