除草剤というと、近年のグリホサート系除草剤にまつわる様々な話など、非常に危険なイメージをもたれている方も多いでしょう。実際は農林水産省から農薬登録を得ている除草剤は使用方法が明確に記載されているので、正しく使用すれば安全です。
とは言っても、除草剤そのものは人体や犬、ペットにかかると影響を与えます。出来ればできるだけ人畜無害な成分から出来た除草剤があれば、それを使いたいものです。
ここで、最近話題になっているのが、家庭の掃除に使う「重曹」で除草できるのではないか、ということです。
重曹に除草効果は本当にあるのでしょうか?雑草が枯れるのか徹底検証するとともに、使い方の解説も行っていきます。
重曹は特定防除資材(特定農薬)
重曹とは?
重曹とは、弱アルカリ性の性質を持つ炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の粉のことを指します。消化剤や電解液の中和剤、研磨剤、脱臭剤として利用されるほかに、食品添加物として、料理にも使われます。
加熱することで二酸化炭素を出すことから、ベーキングパウダーの代替品として、フワフワの生地を作るためにクッキーやパンケーキ、カルメ焼きに使われています。
重曹は、水質汚染の心配がなく、環境ホルモンも含まれていないので、自然破壊を引き起こさない資材として、現在様々な場所で有効活用しています。また、食品添加物としても使用できるほど、人体に安全であることもよく使われる理由の一つです。
重曹で除草できるの?
結論から言うと、除草効果はあるが市販の除草剤のような雑草を駆除する程の効果は期待できないです。
重曹の主成分であるナトリウムは、多量に吸収されると植物に害を及ぼす(細胞壊死の進行、また気孔からの水分蒸発を促進させて雑草を枯死させる)ので、ある程度の除草、雑草抑制効果があります。
しかしながらそれは、雑草が傷つけられた茎、葉から多量に浸透、吸収した場合で、通常の散布では雑草そのものを完全に枯らす程の威力はありません。
逆に重曹は除草や雑草抑制効果以外の効用の方が多く、殺菌剤等に重宝され、特定防除資材(特定農薬)にも選ばれています。
実際に重曹で雑草を抑制したい場合は、目安として水1L(リットル)に対し、100〜200g程の重曹を溶かした(濃度を8%以上)重曹水を散布すると良いでしょう。これくらいの高濃度であれば、繁茂している雑草を完全に枯らすことはできませんが、雑草の生長を半減させる抑制効果は期待できます。(実際にやってみると、ある程度雑草が黄色に変色したりしました。)
また、重曹は薄い濃度で散布して、土壌をアルカリ性に変える効果もあります。作付けしている農作物の都合で、土壌をアルカリ性にしたい場合は試してみるのもおすすめです。
多年生雑草などを根までしっかり壊死させたい、雑草駆除したい方は、茎葉処理剤のグリホサート系除草剤を使用するのがおすすめです。
商品名 | ラウンドアップマックスロード | サンフーロン | エイトアップ | ネコソギロングシャワーV8 | グリホエースプロ | はやわざ | アースカマイラズ | カダン 除草剤 ザッソージエース | タッチダウンiQ | サンダーボルト007 | アイリスオーヤマ 除草剤 速効除草剤 | 早く効いて根まで枯らす除草剤 | はや効き! |
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概要 | |||||||||||||
販売元 | 日産化学(株) | 大成農材(株) | (有)チャレンジサービス | レインボー薬品(株) | (株)ハート | (株)ハート | アース製薬(株) | フマキラー(株) | シンジェンタジャパン(株) | 日本農薬(株) | アイリスオーヤマ | トムソンコーポレーション(株) | シンセイ(株) |
有効成分 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサートイソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサートカリウム塩 | グリホサート ピラフルフェンエチル | グリホサートカリウム塩 + MCPA | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP A | グリホサート イソプロピルアミン塩 + MCP |
農耕地使用 | ○ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ✖️ | ほぼ✖️ | ○ | ○ | ✖️ | ✖️ | ✖️ |
重曹の雑草抑制以外の効果
重曹は雑草抑制効果以上に、殺菌効果など、農業に活かせる効果を発揮します。具体的に説明します。
うどんこ病、灰かび病に効果あり
重曹1gを水1L(リットル)で希釈した重曹液の散布は、うどんこ病に予防効果があると言われています。うどんこ病や灰色カビ病の農薬として販売されている薬剤ハーモメイトも主成分が炭酸水素ナトリウムと、重曹と同じことも、効果があることを立証していると言えるでしょう。病気対策については下記を参考にしてみてください。
根菜類の栄養剤に
ダイコンやニンジン、タマネギやニンニクといった根菜類の生長中に重曹を溶かした重曹水を散布すると、栄養剤になって大きく育つとして、散布されている農家の方もいらっしゃいます。
理由は諸説ありますが、重曹が水に溶けた時に発生する炭酸水素イオン(HCO3-)が作物の葉、根に付着すると、一部が炭酸ガス(CO2)に形を変えて吸収され、光合成が盛んになって、同化量も増えるのではという説があります。
しかし重曹は高濃度の場合は植物の成長を阻害する作用があるので、濃度は上記の予防剤に使う程度の、重曹1gを水1L(リットル)で希釈ほどにで散布するのがよいでしょう。
土壌をアルカリ性に
上述にあった通り、重曹は薄い濃度で散布して、土壌をアルカリ性に変える効果もあります。作付けしている農作物の都合で、土壌をアルカリ性にしたい場合は試してみるのもおすすめです。
散布する際は家庭園芸・ガーデニングの場合はジョウロで、それ以上に広い場合は散布機を利用するのがおすすめです。散布機については下記をご参考ください。
まとめ
このように、重曹は雑草抑制の効果から、濃度を薄めることで、栄養剤や殺菌剤、予防剤の側面も持ちます。
特定農薬として有機農業にも利用できる重曹を是非、取り入れてみてはいかがでしょうか。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)を敷く防除、均一な貼り方、砂利、コンクリート、花壇との組み合わせ方に興味ある方は下の記事をご参考ください。
刈払機(草刈り機)や草取り、草を刈る道具については、下記が役立ちます。
また農家webは、スギナ、ドクダミ、苔(ゼニゴケ)、竹、笹、ヤブガラシ、オヒシバ、メヒシバ、カタバミ、クローバー、スベリヒユ、セイタカアワダチソウといった主に畑作、芝生に生える雑草、また、クログワイやコナギ、イボクサといった水田雑草、それぞれの対策記事もあります。
更に、ハダニやアブラムシ、スリップス、コガネムシ、カイガラムシ、キスジノミハムシ、ヨトウムシ、ナメクジなどの害 虫、病害虫対策記事もあるので是非参考にしてください!
ネコソギシリーズやカダン、アースカマライズ、ラウンドアップ、サンフーロンといった個別の除草剤の解説、購入ができるコンテンツもあります。
おまけ
雑草対策、除草に塩、除草塩は有効?
植物の生理上、確かに塩分濃度が高くなると枯れるので、塩を撒くことで、雑草駆除、除草の効果はあります。また、塩は非常に土壌に残留、蓄積するので、雑草が新しく生えてくることも防ぐ、防草の効果もあります。
しかしながら、塩は土の中で分解されないため、半永久的に効果が持続します。このため、未来にわたって植木や花などはもちろん、野菜や穀物などの作物が塩害で一切育たたくなってしまうのです。また、土壌はつながっています。雨が降り、土壌の塩が流れ出て塩水となり、隣の土壌にも多大な塩害をもたらす危険性があります。
また、海水が流れ込んで周辺の鉄筋コンクリート構造物に影響が出るのと同様、鉄筋コンクリートに塩化ナトリウムの影響で剥離したり、劣化したりと塩害による被害が起こります。建物だけでなく、下水道などの地中の水道管などの配管、電信柱など、様々なインフラにも当然悪影響を及ぼします。
よく、墓地用に、清める意味も込めて、「除草塩」という商品があります。しかしながら墓地の近くには、農耕地があることも多いでしょう。塩を使うことで、降雨で隣の農家の方に被害をもたらしてしまうことがあるのです。また、お墓以外の庭や空き地でも同様です。近くの農耕地や水田、菜園、隣の庭の植物に塩害をもたらしてしまいます。このため、除草に食塩、天日塩、岩塩など、塩を使うことはくれぐれも避けてください。
雑草対策、除草にお湯は有効?
熱湯をかけると、植物全般を枯らすのに効果があると言われますが、それは事実です。やり方は単純で、枯らしたい植物に熱いお湯、熱湯を根元や茎に直接かければいいのです。
確かに、熱湯を浴びた植物はその箇所が焼け、その後枯れます。しかしながら、地下茎や根までは浸透しないため、地上部の雑草にしか効果が出ません。また、非常に重要なのは、土壌はたくさんの生きている微生物によって成り立っているということです。土壌に熱湯をかけることで、地中の細菌、微生物に深刻な悪影響が出てしまいます。土壌内の環境が壊れてしまうのです。ですので、特に耕す予定の農耕地にお湯をかけるのは危険です。また物理的にも熱湯を雑草にたくさんかけることは難しく、お湯を沸かして重いやかんを持ってかけるという行動は、手間がかかり費用対効果も合わないかと思います。
このため、雑草対策、除草のために、雑草に熱湯をかけることはお勧めできません。
最近ではこれを解消するため、高圧ノズルで湯を噴射して隙間などを除草する高圧スチーム除草もあります。