リンゴやナシなどの果実や樹木に被害を及ぼすナシマルカイガラムシの防除はどのようにしたらよいのでしょうか。ここではナシマルカイガラムシに適用のある農薬の使い方やその他の防除方法について説明します。
ナシマルカイガラムシの特徴と被害
ナシマルカイガラムシは、カメムシ目マルカイガラムシ科に属する虫で、枝または幹に寄生して樹液を吸収して樹勢を低下させたり、果実に寄生すると斑点や陥没などの奇形を及ぼし商品価値を下げます。
年に3回、5月中旬~9月中旬ごろまで繰り返し幼虫が発生して被害をもたらします。天敵害虫にはヒメアカホシテントウ,ハネケナガツヤコバチなどがいます。天敵だけで防除はできませんが、天敵害虫が発生する6月~8月はこれらの天敵に影響の少ない農薬を散布するとよいでしょう。


ナシマルカイガラムシの防除方法
ナシマルカイガラムシの寄生が見られたら農薬散布での防除が基本です。他のカイガラムシと異なり樹幹や枝に寄生することが多いので農薬散布時には、その部分にもかかるように散布しましょう。
前年に発生している地域の予防には、発芽前のマシン油乳剤が効果的です。それでも発生がみられる場合には、生育ステージがそろう第1世代幼虫最多発生期(6月頃)に作用が異なる農薬を1週間間隔で2回散布、それでも発生がみられる場合には、第2世代幼虫発生期(7月下旬~8月頃)に散布します。
ナシマルカイガラムシの化学農薬以外の防除はは、剪定時に寄生の多い木は切る、周辺の寄生樹の伐採などの物理的防除の他、天敵を活用するために天敵に影響のない農薬を使うなどの生理的防除も同時に行いましょう。
ナシマルカイガラムシ(カイガラムシ類)に適用のある農薬
それぞれの育てている作物に適用のある農薬を使いましょう。薬剤抵抗性を出さないためには、RACコードを参考にして作用が異なる農薬をローテーション散布することが大切です。
天敵の発生期(6月~8月)には合成ピレスロイド剤やカーバメート剤などは天敵に悪影響がでやすいので、なるべく影響の少ない薬剤を使いましょう。
散布時期 | 農薬名 | 作物 | 希釈倍率 | 使用液量 | 使用期間 | 使用回数 | 使用方法 | IRACコード | 備考 |
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発芽前 | キング95マシン | 落葉果樹(ぶどうを除く) 落葉果樹(なし、りんご、かき) | 12〜14倍 16〜24倍 | – | – | – | 散布 | – | マシン油剤 果樹につくカイガラムシ、ハダニをマシン油の膜で物理的に覆って退治する殺虫剤です。 |
第1・2世代幼虫最多発生期 | モスピラン顆粒水溶剤 | りんご なし 他多数 | 4000倍 2000〜4000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫前日まで | 3回以内 | 散布 | 4A | 有効成分がアセタミプリドのネオニコチノイド系殺虫剤 速効性と浸透移行性があります。 なしに使用する場合、品種により葉に黒変の薬害を生じることがあるので注意です。 |
第1・2世代幼虫最多発生期 | アプロード水和剤 | みかん なし かんきつ(みかん、すだちを除く) 他 | 1000〜1500倍 1000倍 1000〜1500倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫14日前まで 収穫30日前まで 収穫45日前まで | 3回以内 2回以内 3回以内 | 散布 | 16 | 幼虫の脱皮を阻害して、齢末期から脱皮時に死亡させる昆虫成長抑制剤(IGR)です。 速効性はありませんが残効性は高く、天敵に影響の少ない薬剤です。 |
第1・2世代幼虫最多発生期 | モベントフロアブル | りんご もも ぶどう なし かんきつ 他 | 2000倍 | 200〜700㍑/10a | 収穫14日前まで 収穫7日前まで 収穫7日前まで 収穫7日前まで 収穫14日前まで 収穫7日前まで | 3回以内 | 散布 | 23 | 環状ケトエノール系で、脂質の生合成を阻害するタイプの殺虫殺ダニ剤です。 優れた浸透移行性を持ち、土壌天敵類への影響が少ない薬剤ですが、 カブリダニ類には影響があるので注意しましょう。 |
農薬以外の防除方法
物理的防除
樹勢の弱い木に寄生することが多いナシマルカイガラムシは、剪定時に寄生の多い木は切りましょう。また薬剤が浸透しやすい樹形にすることも大切です。
ナシマルカイガラムシはリンゴ、モモ、スモモ、オウトウ、ビワなどのバラ科,ナシ科の果樹などのさまざまな果樹に寄生するため、周辺との協力し、寄生樹の伐採も検討しましょう。
生物的防除
テントウムシ類や寄生蜂などの土着天敵を活用するために、農薬は天敵に影響のない薬剤を使用するようにしましょう。ヒメアカホシテントウの発生が多い地域は、被害が少ないという報告もあります。
農業アプリを活用しましょう
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