農薬の使用方法

天敵を使った防除 天敵製剤に影響の少ない農薬は?

農薬を散布する人 農薬の使用方法

害虫の天敵を製剤化させた天敵製剤は、化学農薬の散布を減らすのに有効ですが、化学農薬を使う際には、天敵を間違って殺してしまわないようにしなければなりません。ここでは天敵製剤と一緒に使える、天敵に影響の少ない農薬について説明します。

この記事の執筆者・監修者
農家web編集部
法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。詳細
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天敵製剤の使い方

それぞれの天敵製剤によって、生育温度や効果的な使い方が異なりますので、必ずその製剤の使い方を読んでから使いましょう。共通する使い方について説明します。

  • 天敵製剤の成虫は、長く生きられません。散布計画をしっかりとたて、取得したその日にすべて放飼します。
  • 害虫が多くいると、天敵製剤の効果は薄れます。多発している場合は、事前に化学農薬を散布し害虫をできるだけ減らしてから散布します。
  • 化学農薬を散布する場合には、天敵に影響のない薬剤を選んで散布します
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天敵に影響の少ない農薬とは

天敵製剤を使う前には、すでに対象の害虫が多発している場合には天敵の放飼の前に、対象の害虫を化学農薬等で数をできるだけ減らしておくことが大切です。

そのため、天敵放飼の直前に化学農薬を散布するため、散布した農薬の残効なども考慮し、天敵に影響のない農薬を使う必要があります。

また天敵を使っていても害虫が増えたり、他の害虫や病害虫の防除に化学農薬を使う場合も、天敵には影響のない農薬を選ぶ必要があります。

土着天敵や天敵製剤を活用するためには、合成ピレスロイド剤、有機リン剤、カーバメート剤などの幅広い種類の害虫に効果があるタイプの農薬は避け、選択制の農薬を選びましょう。

天敵を販売している農薬会社では、主な農薬について天敵農薬影響表が公表されているので、実際の散布ではそちらを参考にして使うとよいでしょう。

カブリダニ類に影響のない農薬

天敵製剤としてよく使われるカブリダニにはスワルスキーカブリダニ、チリカブリダニ、ミヤコカブリダニ、ククメリスカブリダニなどがいます。野菜類のアザミウマ類、コナジラミ類、チャノホコリダニや果樹のミカンハダニなどを捕食するため、広く使われている天敵製剤です。

放飼の前の害虫を減らすための農薬の散布は、放飼の10日前ごろに散布します。

アザミウマ類の防除に併用できる農薬

農薬名IRACコード概要
ファインセーブフロアブル34アザミウマ類に特効性を持つ殺虫剤
多くの作物に使えます。
ベネビアOD28野菜・畑作向けの散布専用殺虫剤
速効性、残効性にすぐれた薬剤で、
幅広い殺虫スペクトラムがあります。
ベリマークSC28長い残効性を持つ野菜灌注処理用殺虫剤
ウララDF29浸透移行性、耐雨性、残効性を持った薬剤。
アブラムシ類に対しても高い効果が期待できます

ハダニ類に併用できる農薬

農薬名IRACコード概要
ダニオーテフロアブル33新規の作用機構を持つ殺ダニ剤
抵抗性を持ったハダニにも効果的
スターマイトフロアブル25A抵抗性ハダニにも効果がある殺ダニ剤
ククメリスカブリダニへの影響は不明なため
実際に使う際には製薬会社等に確認してください
ニッソラン水和剤10A野菜、果樹、花きに適用のある殺ダニ剤
殺卵力が強く、残効性に優れた薬剤です

コナジラミ類に併用できる農薬

農薬名IRACコード概要
チェス顆粒水和剤9Bブラムシ類,コナジラミ類,ウンカ・ヨコバイなどの
半翅目害虫に特異的に優れた防除効果があります。
浸透移行性があり長期間害虫を防除します
ベネビアOD28野菜・畑作向けの散布専用殺虫剤
速効性、残効性にすぐれた薬剤で、
幅広い殺虫スペクトラムがあります。
ベリマークSC28長い残効性を持つ野菜灌注処理用殺虫剤
ウララDF29浸透移行性、耐雨性、残効性を持った薬剤。
アブラムシ類に対しても高い効果が期待できます

タバコカスミカメに影響のない農薬

トマト栽培では、カブリダニ類は定着が難しいためアザミウマ類やコナジラミ類の防除には、タバコカスミカメが天敵として使われます。

アザミウマ類の防除に併用できる農薬

農薬名IRACコード概要
ブレオフロアブルUN野菜・豆・花き類などに使える薬剤で、チョウ目や
アザミウマ目に高い活性があります。
ベネビアOD28野菜・畑作向けの散布専用殺虫剤
速効性、残効性にすぐれた薬剤で、
幅広い殺虫スペクトラムがあります。
モベントフロアブル23優れた浸透移行性があり、無人航空機による散布や
灌注処理にも使える殺ダニ剤
アブラムシ類、タバココナジラミにも有効です。
ウララDF29浸透移行性、耐雨性、残効性を持った薬剤。
アブラムシ類に対しても高い効果が期待できます

コナジラミ類に併用できる農薬

農薬名IRACコード概要
クリアザールフロアブル23トマト・ミニトマトに使えるコナジラミ類に優れた効果
がある殺虫剤
成虫には効果がないため、発生初期に有効な薬剤です。
モベントフロアブル23優れた浸透移行性があり、無人航空機による散布や
灌注処理にも使える殺ダニ剤
アブラムシ類、ミナミキイロアザミウマにも有効です。
ベネビアOD28野菜・畑作向けの散布専用殺虫剤
速効性、残効性にすぐれた薬剤で、
幅広い殺虫スペクトラムがあります。
ヨーバルフロアブル28
ウララDF29浸透移行性、耐雨性、残効性を持った薬剤。
アブラムシ類に対しても高い効果が期待できます

天敵を使ったIPM防除

化学農薬は同じ系統の農薬を使い続けると、薬剤に抵抗性をもった害虫が発生します。すでにアブラムシやアザミウマ、コナジラミなどには抵抗性害虫が発生しています。

抵抗性害虫を発生させないためには、農薬は異なる系統の農薬をローテーション散布する他、化学農薬だけに頼らず天敵薬剤をつかった生物的防除や、物理的防除などを組み合わせたIPM防除を心がけましょう

IPM(総合的害虫管理)とは?

農地を取り巻く環境や病害虫の対象種の個体群動態を考慮しつつ、「生物的防除」「化学的防除」「耕種的防除」「物理的防除」を組み合わせることで、病害虫の発生を経済被害を生じるレベル以下に抑えることをいいます。

  • 「生物的防除」 病害虫の天敵を導入し、病害虫密度を下げる防除法
  • 「化学的防除」 化学薬剤を使用して行う防除法
  • 「耕種的防除」 栽培法,品種、圃場の環境条件等を整え、病害虫の発生を減らす防除法
  • 「物理的防除」 防虫ネット、粘着トラップ、光熱等を利用して病害虫を制御する防除法

(IPM・・・Integrated Pest Management)

農家webの「かんたん栽培記録」は、各地域の防除暦が確認できるほか、おすすめの農薬や農薬以外の防除方法も、その作物に発生しやすい害虫ごとに表示。

希釈倍率や希釈回数を自動計算、農薬検索データベースと連携しており、病害虫におすすめの農薬を表示する他、農薬情報を検索したり、持っている農薬の混用情報も調べることができます。もちろんすべての農薬のRACコードを情報を記載しているので、ローテーション散布の記録としても便利です。

ダウンロードも不要でスマホさえあれば、メールアドレスを登録するだけですべての機能が無料で使えます。

執筆者・監修者情報
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農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

農薬販売届 受付番号:210-0099

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