個人事業主の農家は、従業員が5名以内であれば労働保険に入る義務はありませんが、他の事業よりケガなどのリスクが多いので労災保険は任意での加入が推進されています。ここでは労働保険に加入した場合確定申告ではどのような処理が必要なのか、解説します。
労働保険とは
労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険の総称です。
労災保険とは労働者が業務中や通勤中に負傷・疾病・障害又は死亡した場合に、労働者やその遺族のために保険が支払われる制度で、雇用保険は労働者が失業や休業した場合に、労働者の生活を守るために給付金が支給される制度です。
労働保険は基本的には従業員のための保険で、事業主(雇い主)や専従者(事業主と生計を一としている親族)は加入することができません。しかし労災保険については、農業者は作業中のケガや事故などのリスクが高いため特別加入制度があり、それを使えば事業者や専従者も加入が認められています。
労災保険の制度について下記の記事で詳しく説明していますので、こちらも参考にしてください。
労働保険の保険料は事業の経費になる?
従業員のために加入した労働保険の保険料は経費として認められています。しかし特別加入制度で入った事業主本人とその家族の分に関しては、農業の経費としては認められませんが社会保険控除として控除することができます。
労災保険は全額事業者(雇い主)負担ですが、雇用保険は事業者(雇い主)と労働者の両方で負担します(雇用保険料率は毎年改定されます)
従業員の事業者負担の分は、確定申告で経費として認められるので「雇人費」に忘れず計上しましょう。
労働保険料を支払った場合の確定申告の処理・仕訳
加入制度によって処理方法や仕訳がかわります。
事業主やその家族の労災保険
事業主や専従者などの生計を一とする配偶者や親族の場合、雇用保険には加入できないため労災保険の特別加入制度に加入した場合について説明します。
事業主のみもしくは事業主とその家族のみが労災保険加入している特別加入制度に加入している保険料は、事業の経費として認めれないため、国民絵健康保険料と同様に、確定申告時の社会保険料の控除の欄に支払った総額を入力します。
従業員の労働保険料
従業員が5名以上いる、事業主とその家族が特別加入制度に加入している場合は従業員の労働保険は強制加入です。任意でも加入することができる場合もあります。
従業員を労働保険に加入させた場合の保険料は、全額が農業の経費として認められます。
白色申告の場合は、全額を雇人費として経費にいれます。青色申告の場合は下記のような仕訳を計上します。(雇用保険の従業員個人負担分を雇人費のマイナスとして計上している場合)
借方 | 貸方 |
---|---|
雇人費 50,000 | 現預金 50,000 |
従業員の個人負担分を預り金として計上する場合は仕訳はことなります。
雇用保険料の個人負担分の処理・仕訳
雇用保険に加入した場合は、従業員の個人負担分を給与から天引き(控除)して給与を支払います。いくら控除したらいいかわからない場合は、社労士や雇用保険に加入した時に労働局で計算方法等を確認してください。その後は給与ソフトなどを活用するとよいでしょう。無料のソフトも多くあります。
白色申告の場合
給与から計算した雇用保険料を控除して支払します。預かったお金は「雇人費」のマイナス分として処理します。
給与が100,000円 雇用保険料個人負担分 650円 支払額 99,350円の場合
雇人費 100,000(給与) 雇人費 -650円(個人負担分)となり、99,350円が雇人費として経費になります。
青色申告の場合
給与から計算した雇用保険料を控除して支払します。預かったお金は「雇人費」のマイナス分として処理します。
給与が100,000円 雇用保険料個人負担分 650円 支払額 99,350円の場合の仕訳は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | 備考 |
---|---|---|
雇人費 100,000 | 給与 | |
雇人費 650 | 個人負担雇用保険料 | |
現預金 99,350 | 給与支払額 |
まとめ
労働保険料は個人事業主の農家の方は確定申告時に、従業員の保険料は農業の経費に、自分や家族の保険料は社会保険料として所得から控除できることがわかりました。
働く人の安全を守ることが一番大切ですが、もしものための保険があると安心して作業が行えます。支払った経費は所得や収入から控除できるので確定申告で忘れずに申告をしましょう。
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