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プロ農家施設栽培(ハウス栽培)

イチゴ栽培をハウスで!イチゴの施設栽培について

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イチゴの高設栽培(施設栽培) プロ農家

苺(いちご)は、ビタミンCが豊富で、甘くて美味しいものも増えてきたことから、ご家庭の食卓にもよく並ぶようになった人気のフルーツです。また、生産者の目線で考えると、市場単価が他の作物と比較して高く、ブランド化もしやすい作物です。最近では、高設栽培や隔離栽培などが普及し、イチゴ栽培の取り組みを新たに始める農家も多くなってきています。

イチゴ栽培は、もちろん露地栽培でも可能ですが、環境制御ができないため、気候に合わせてスケジュールを組む必要があります。また、外部環境(天気、気温など)によって生育が不良になったり、病害虫による被害が及びやすくなったります。

露地栽培では上記の通り、さまざまなリスクがあることから、近年では、ハウスを用いた施設栽培が主流です。そこで本記事では、ハウスを用いたイチゴの施設栽培について、栽培方法の種類や栽培システム、イチゴ栽培に適したハウスの概要など、幅広く網羅的にご紹介します。目次を活用して、必要な部分から読み進めてください。

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イチゴの施設栽培について

イチゴは、温暖地の普通栽培(露地栽培)の場合、10月頃に子株の植え付けを行い生長期間を経て、5月〜6月頃に収穫を迎えます。

しかし、イチゴを主軸として営農する場合には、市場価格の優位性に合わせて収穫時期をコントロールしたり、収量・品質を上げる必要があったりするため、ビニールハウスなどの施設を活用します。

施設栽培における、主な栽培スケジュール(作型)を紹介します。もちろん、地域や品種、栽培方法によって、同じ作型でも栽培時期や収穫時期が異なりますが参考にしてください。また、植物工場(太陽光型植物工場、人工光型植物工場)においては、気温、培地温度(地温)、日照量などをコントロールすることで独自の作型に取り組んでいる場合もあります(それも促成栽培と呼んだりします)。

作型促成栽培半促成栽培株冷蔵抑制栽培夏イチゴ栽培(夏秋どり栽培)
使用する品種郡(例)一季なり性イチゴ一季なり性イチゴ一季なり性イチゴ四季なり性イチゴ
具体的な品種名(例)とちおとめ、女峰、スカイベリー、紅ほっぺ、章姫、とよのか、宝交早生など宝交早生、おとめ心などとちおとめ、女峰、スカイベリー、紅ほっぺ、章姫、とよのか、宝交早生などペチカシリーズ、すずあかね、ペチカほのか・夏瑞(なつみずき)など
定植時期(植え付け)9月〜10月頃9月〜10月頃9月頃(二期獲りの場合)4月頃
収穫時期11月〜5月頃4月〜6月頃10月〜12月頃と4月頃〜5月頃(二期獲りの場合)6月〜10月頃

促成栽培

促成栽培とは、普通栽培(露地栽培)よりも収穫時期を早める栽培方法です。低温、短日、窒素吸収の抑制などの育苗管理によって花芽分化を促進させます。その後、9月〜10月頃に定植して、保温や加温で花芽を発育させて、11月~5月頃に収穫します。

基本的には、休眠の浅い品種を選びます。休眠の深い品種は、電照等によって休眠に入らないようにしましょう。

半促成栽培

半促成栽培とは、普通栽培(露地栽培)よりも収穫時期を少し早める栽培方法です。イチゴの株が低温にあたる時間をコントロールして、半休眠状態を維持して花芽分化の時期をずらします。

9月〜10月頃に定植して、その後11月〜1月下旬頃まで、イチゴの株が低温(5℃程度以下)にあたる時間をトンネルやカーテンによって制御します。その後、加温や保温で花芽を発育させて、4月〜6月頃に収穫します。

株冷蔵抑制栽培

株冷蔵抑制栽培とは、十分低音にさらされ花芽が分化した株を冷蔵庫や屋外で一度保管し、開花・収穫時期に合わせて取り出し、栽培を開始する栽培方法です。二回収穫時期を迎える二期獲りの栽培方法もあります。

夏イチゴ栽培(夏秋どり栽培)

最近では、夏にイチゴが収穫できる作型もあります。施設栽培における夏秋どりの作型は、4月頃に株を定植し、6月〜10月頃まで収穫します。

品種は、低温短日条件でなく比較的気温が高くても花芽分化する四季なり性の品種を使います。

作型はどれを選べばいいのか?

ここまで説明してきたとおり、イチゴ栽培においてはさまざまな作型があります。作型の選び方はさまざまですが、根本的に大事なことは「高品質・高収量・低コストの栽培が可能」で「できる限り高く売れる時期」を選んで栽培することだと個人的には思います。

「高品質・高収量・低コストの栽培が可能」の観点では、やはり気候が一番の主要因となってくるでしょう。イチゴは、比較的低温を好む植物ですので、冬の栽培のほうが環境制御がしやすいでしょう。逆に夏の栽培では、地温や気温を下げるための何らかのシステムが必要になってきます(寒冷地除く)。

「できる限り高く売れる時期」の観点では、イチゴは冬の出荷量が多く、夏の出荷量が極端に少ないです。そのため、夏場とクリスマス商戦の12月のいちごは平均単価が高く、その他の期間は平均単価が低い傾向になります。下記に平成元年の東京中央卸売市場のいちご取扱実績のグラフを掲載しておきますので、参考にしてください。

上記のことを加味して、栽培地域や作型、栽培方式を選んでいく必要があります。

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イチゴのハウス栽培 栽培方法は?

新設されたハウスです。フィルムの巻き上げなど一般的な設備が整っています。

イチゴの施設栽培における栽培方法は、複数あります。それぞれ、コストや作業のしやすさなどが異なりますので、作型と合わせて検討する必要があります。下記にそれぞれの栽培方法を紹介します。

施設栽培における普通土耕栽培と液肥栽培

まず、栽培方法は大きく2つに分けることができます。

普通土耕栽培とは、普通一般に行われている、土を使って栽培する方法です。あまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ここでは液肥栽培との区別をはっきりとさせるため、普通土耕栽培と呼ぶことにします。

液肥栽培とは、施肥に液肥(液体肥料)を用いて栽培する方法です。こちらもあまり馴染みのない言葉かもしれませんが、ここでは普通土耕栽培と区別するため、液肥栽培と呼ぶことにします。

養液土耕栽培と養液栽培の種類

イチゴのハウス栽培の様子です。

養液栽培とは、液肥栽培の一種で、植物の生長に必要な養水分を液体肥料(液肥)として与える栽培方法です。養液栽培は、培地の有無や培養液の供給方法などによって、複数の種類に分けることができます。

養液土耕栽培とは、普通土耕栽培と同様に土を使用して栽培をしますが、植物に生長に必要な養水分を液体肥料(液肥)として与える栽培方法です。養液栽培には含めず、液肥栽培の一種として考えられることが多いです。

液体肥料による施肥は、潅水(水やり)と同時に施肥することが多く(潅水同時施肥技術)、液肥が混入された水を培養液と呼びます。

「養液土耕栽培」と「養液栽培」は、全くの別物となります。

  • 養液土耕栽培:土耕栽培を基本として、潅水と施肥の全部、もしくは一部を培養液の供給で代替する栽培方法
  • 養液栽培:培地を用いない、もしくは培地として土を用いない栽培方法

養液栽培は、培地を用いない水耕栽培、噴霧耕、培地を用いた固形培地耕があります。

  • 水耕栽培
    • 流動法
      • DFT:湛液水耕方式
      • NFT:薄膜水耕方式
    • 静置法
      • 保水シート耕(毛管水耕方式の一種)
      • パッシブ水耕(毛管水耕方式の一種)
    • 噴霧耕
  • 固形培地耕
    • ロックウール耕
    • ヤシ殻(ヤシガラ)耕
    • 砂耕
    • れき耕
    • ピートモス、バーグ など

イチゴの栽培方法の違い まとめ

イチゴの高設栽培を実施している様子です。循環扇やカーテン、細霧冷房などが備わっています。
項目普通土耕栽培(慣行栽培)養液土耕栽培養液栽培
平地栽培/高設栽培平地栽培平地栽培高設栽培
初期費用水耕栽培より安く、普通土耕栽培より高い高い
運営費用普通土耕栽培と同じくらい。場合によっては減肥などができる。高い
労力土作りや施肥作業が必要である追肥として培養液を供給するので、労力を減らせる土作りや追肥という概念がなく、栽培期間中に培養液を切らさないようにしておけば良いため、労力を減らせる
長所・初期費用を抑えることができる・培養液の精密な制御により、収量と品質を向上させることができる
・培養液による栽培管理が可能となるため、普通土耕栽培に比べて栽培の再現性が高い
・潅水、施肥に費やしていた時間、労力を削減でき、管理作業など他の作業が充実する
・土壌を使用することで、根に対する緩衝能が高まり、培養液濃度が植物への影響が出にくい
・植物の根圏に対して、局所的に施肥ができるため、普通土耕栽培よりも肥料の無駄遣い(溶脱)が少ない。環境にも良い
・平地栽培となるため、地面に近いところでの作業となり、作業性が悪い
・培養液の精密な制御により、収量と品質を向上させることができる
・土壌微生物や有機物などの影響が少なく、普通土耕栽培に比べて栽培の再現性が高い
・水耕栽培の場合、土壌を使用しないため、根圏の環境を制御しやすい
・土壌伝染病や連作障害の発生など土耕特有の問題が起こりにくい(固形培地耕の場合、土壌消毒は必要)
・土壌がない場所や農業に適さない場所においても栽培が可能である
・太陽光型の施設栽培だけではなく、人工光型の施設栽培(ビルの一室など)も可能である
・高設栽培を実現でき、人間の腰から胸くらいの高さで作業ができるため、作業性が上がる
短所・養液栽培や養液土耕栽培のように潅水同時施肥ができないので、施肥や潅水作業が必要となり労力がかかる・培養液の供給装置などの導入による初期費用が発生する
・培養液の供給装置などのランニングコストが発生する
・水によく溶ける肥料や液体肥料を使用する必要があるが、これらは普通の肥料と比較して高い
・培養液の供給装置や培地システム(ベッド)などの導入による初期費用が発生する
・固形培地耕の場合、一作ごとなど定期的に培地を交換する必要がある
・培養液の供給装置などのランニングコストが発生する
・水によく溶ける肥料や液体肥料を使用する必要があるが、これらは普通の肥料と比較して高い
・綺麗な原水が必要である
・根に対する緩衝能が土耕栽培よりも低く、培養液濃度の管理が重要であり、少しでもミスをすると植物に多大な影響を与えてしまう
・培地や培養液に病原菌が含まれていると最悪の場合、圃場全体に影響が及んでしまう
・培養液が供給されなくなった場合、植物の枯死に繋がる
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イチゴのハウス栽培 どのような設備が必要なの?

イチゴのハウス栽培の様子です。炭酸ガス(CO2)発生器も備えています。

ハウス栽培をするにあたっては、さまざまな設備を用意する必要があります。

  • ハウス
    • パイプハウス
    • 大型の軽量鉄骨ハウス
    • ガラス温室
      など
  • ハウス内設備
    • ベンチ/ガター
    • 遮光ネット/遮光カーテン
    • 保温カーテン(内張りカーテン)
    • 換気窓(天窓、側窓、妻面)
    • 循環扇
    • 給液装置/潅水装置
      • 送水用ポンプ
      • 貯水タンク
      • 給液・排液用配管
      • 点滴チューブ/灌水チューブ
      • 排液リサイクル装置
    • 暖房設備
    • ウォーターカーテン設備
    • 温湯配管/電熱線
    • 炭酸ガス発生装置
    • 地上部環境制御装置
  • 育苗棚(育苗ハウス)

もちろん、上記はすべて必要ということではありません。栽培方法や栽培規模、設備にかけられる費用に合わせた設計が必要です。それぞれの設備の説明と栽培方式毎に必須かそうではない設備かをまとめましたので、参考にしてください(あくまで、私見となります。逆にここに紹介されていないものでも、農業を営む上ではいろいろな道具や設備が必要です)。「◎」は必須、「○」は条件によって導入したほうが良いもの、「×」は不要なものを指します。

概要/栽培方法ベンチ/ガター遮光ネット/遮光カーテン保温カーテン(内張りカーテン)換気窓(天窓、側窓、妻面)循環扇給液装置/潅水装置暖房設備ウォーターカーテン設備温湯配管/電熱線炭酸ガス発生装置地上部環境制御装置育苗棚
概要栽培に使用する固形培地を容れるためのベンチです。主に人の腰〜胸くらいの位置にベンチを設置して、ピートモスやバーグなどの培地を使います。
ロックウールやココバッグなどの隔離培地の場合は、培地を載せるためのガターを設置します。
春〜夏にかけて強い太陽光にさらされ、植物の実や葉が焼ける(過熱)ことを防ぎます。冬場のハウス内の温度を保ちます。暖房効率と炭酸ガス(CO2)の施用効果を高めます。遮光カーテンとしての役割も担う場合があります。外気を取り込んでハウス内の温度を制御できるようにします。換気が効率的に行えるようにするとともに、ハウス内のムラ(温度・湿度・炭酸ガス濃度)や植物の光合成促進のために使われます。植物に水、もしくは培養液を供給するために使用します。培養液の場合、施肥も同時にできるため労働時間の短縮、栽培技術の向上が見込めます(潅水同時施肥技術)。冬場の栽培時期に、ハウス内を加温し、植物の生育を保つために使用します。暖房設備(ハウスカオンキなど)によっては、炭酸ガス(CO2)も同時に施用できます。ハウスの外張りと内張りの間の空間に地下水などを流すことで、夜間のハウス内温度を保ちます。燃料代の節約に繋がります。温湯配管を培地の地中に入れて、循環させることで冬の時期の夜間の地温を適切に管理することができます。お湯を作り出すためのボイラーが必要となります。
電熱線の場合は、電気代がかかりますが、燃料代を節約できます。
光合成を促進させるため、炭酸ガスを意図的に発生させる装置です。暖房機によっては炭酸ガスを同時施用できるものもありますが、炭酸ガス発生装置を個別で導入することで、炭酸ガスの施用効率の向上、温度管理と炭酸ガス濃度の管理の区別が可能となります。地上部の環境(気温、湿度、炭酸ガス濃度(CO2濃度)など)を計測し、植物の生長に最適な環境に制御する装置です。設定値を入力することで、その設定値に近づけるように換気窓や各種装置の制御を行います。本圃に植え付ける苗を育苗する棚です。
普通土耕栽培(慣行栽培)×◎(少なくとも妻面と側窓)×○(露地での育苗などしない限り必要)
養液土耕栽培×◎(少なくとも妻面と側窓)×○(露地での育苗などしない限り必要)
養液栽培◎(少なくとも妻面と側窓)◎(培養液供給となるため必須)◎(培地量が少なく、周囲の環境変化を受けやすいため必須)○(露地での育苗などしない限り必要)

どのようなハウスが良いのか?

イチゴ栽培をする上で、ハウスを建設する場合、どのようなハウスが良いのでしょうか?正直なところ、ハウスの建設コストはピンキリで、費用をかければかけるほど良いハウスが建設できますし、安く抑えようとすればするほど設備が質素になります。また、栽培方法(平地栽培なのか、高設栽培なのか)によっても変わってきます。

まずは、営農している地域のハウスメーカーやハウス施工会社に問い合わせをしてみるのが良いと思います。

執筆者・監修者情報
執筆者・監修者

農家web編集部のメンバーが「農業者による農業者のための情報サイト」をコンセプトに、農業に関するあらゆる情報を丁寧にまとめてお届けしていきます。
編集部のメンバーは皆、実際に農業に携わりながら情報をまとめています。農学を極め樹木医の資格を持つ者、法人の経営・財務管理に長けている者、大規模農場の営農経験者などバラエティに富んだメンバーで構成されています。他にも農機具やスマート農業機器、ITなどのスキルも兼ね備えています。

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