除草剤を霧吹き(スプレー)やジョウロで散布したり撒いたりできる広さには限界があります。噴霧器を使うと、広範囲に楽に散布することができるのはもちろん、均一に散布できるというメリットもあります。
噴霧器には様々なタイプがありますが、ここでは、家庭菜園や市民農園、また小さな公園など、比較的小規模な場所にぴったりの手動噴霧器をご紹介します。
そもそも噴霧器とは?
噴霧器とは「水や薬液を霧のように高圧噴射するための器具」で、スプレイヤーとも呼ばれます。
大まかなタイプとしては、ガソリンや電気を使わず、手動で行う「手動式噴霧器」、電池や充電式バッテリー、コンセントからの電気で動く「電動式噴霧器」、そしてガソリンで動く「ガソリン式噴霧器」があります。
そして農業界では、手動ではない「電動式噴霧器」「ガソリン式噴霧器」を「動力噴霧器(通称:動噴(どうふん))」と呼んでいます。特に「ガソリン式噴霧器」を動噴と呼んでいるケースが多いです。
手動噴霧器とは?
手動噴霧器とは、片方の手でハンドルやレバーを上下に動かし加圧しながら、もう片方の手でノズルをもって噴霧することができる器具で、主に背負式のものと、肩掛けのものがあります。
手動噴霧器のメリット、デメリット
手動噴霧器のメリットは、
- 電池やガソリンを使用しないため、気軽に使えること
- とにかく他の噴霧器に比べて安く、電池やガソリンもいらないので経済的
になります。
逆にデメリットは、
- 噴霧するために都度加圧しなければならず、長時間やり続けるのは疲れる
- 容量が小さいものが多いので、除草範囲が広い所には向かない
と言えるでしょう。除草剤の散布液量の目安としては、ラウンドアップマックスロードで、大体1a(アール 10mx10m)5〜10Lほどになります。
おすすめの手動噴霧器
背負式手動噴霧器 グランドマスター RW-15DX(RW-15DX-AAA-0)
エンジンポンプ部門で世界1位を誇る、京都に本社を置く非常に優れたメーカー、工進(コーシン(koshin))の、手動式噴霧器です。
片手で加圧と噴霧が簡単に行える仕様になっていて、背当てパッドなどの工夫で長時間背負いやすくなっています。
機種 | RW-15DX |
---|---|
タンク容量 | 15L |
ポンプ形式 | ダイヤフラムポンプ |
最高圧力 | 締め切り時:0.4MPa(4kgf/cm2) |
噴口 | 縦型二頭口噴口 |
噴霧量 | 縦型二頭口噴口:0.7リットル/分 |
寸法 (幅×奥行×高さ) | 366×247×537mm |
本体重量 | 3.7kg |
市場価格目安 | 約12,000円 |
(株)フルプラ(FURUPLA)ダイヤスプレープレッシャー式単頭式
また家庭菜園や、ベランダ、庭のガーデニング用で、10Lの容量もいらない方には、(株)フルプラ(FURUPLA)の「ダイヤスプレー プレッシャー式 単頭式」は、4Lと小型なものもあるので、おすすめです。小型のためポータブル性が高く、器用に取り回せます。
また同じ小型のもので、トラスコ中山(TRUSCO)の、「TRUSCO 蓄圧式噴霧器 4L」もあります。こちらは過剰な圧力を外部に自動的に放出する安全弁装置付、レバーをロックすれば連続噴射が可能な肩掛け式の噴霧器です。
その他、ダリヤ、丸山製作所(bigm)、アイリスオーヤマ、共立などの商品、軽量のハンディタイプのものもあります。
どのサイズを選べばいいのか
除草剤の散布液量の目安としては、大体1a(アール 10mx10m)5〜10Lほどになります。除草剤を散布したい場所の面積と使用する方の体力を考慮して、大きさを選ぶのがよいでしょう。
散布場所がそもそも1aにも満たない場所ならば、小型のもので大丈夫ですし、2a以上で15Lほどを背負うのが苦にならない方は15L以上のサイズのものを選ぶのがいいかと思います。
噴霧器 ノズル(噴口)について
手動の噴霧器には、単頭のノズルが付属していますが、除草用の別売部品のノズルを使用することで、散布ムラをなくし、より少量の薬剤で効果を出すことができるようになります。
ノズル(噴口)は本当に多くの種類がありますが、除草剤の散布使用に適しているのは、一般的な「単頭ノズル」、または広範囲での散布には「2頭などの複数口のノズル」になります。水圧が強い「鉄砲型」と呼ばれるノズルは除草剤の散布には適さないケースが多いです。
除草剤の散布におすすめのノズルは、単頭ノズルだと、下記のような「セフティー3 SJN-1 噴霧器用除草剤ノズル」のようなシンプルなものから、「セフティ3 動噴用噴口 キリナシ1頭口」のような除草剤専用ノズルで薬液を泡状にして散布するノズルや扇状に散水するもの、伸縮の仕組みが異なる様々なものがあります。
また、ラウンドアップを販売している日産化学株式会社から、従来よりも少量の除草剤で効果を維持して散布できる「ラウンドノズルULV5」というノズルや同様の形状の「セフティ3 除草用 ラウンドノズル25」が開発されました。
こちらはわずか5Lの水量で10a散布することができるノズルで、圧倒的な小水量で散布を行うことができ、少ない散布量で済むため、作業時間の大幅な短縮になる優れものです。
こちらの商品は使用したい噴霧機に合うものを選ぶ必要があります。詳しくは下記を参考にしてください。
ラウンドノズルULV5 バッテリー・人力用 噴霧機メーカー別 推奨機種一覧表
まとめ
除草剤の散布におすすめの手動噴霧器(散布機)について、ノズルも合わせて紹介しました。今回は除草に特化しておすすめ商品をご紹介しましたが、噴霧器は、農作業においては、庭木や畑地での害虫の殺虫のための農薬の散布や消毒、殺菌にも使え、散水など、ノズルやホースを変えることで、洗車などさまざまな用途に使うことができます。
手動式噴霧器はお近くのプラスワイズやコーナン等のホームセンターのガーデニング・園芸、資材コーナーでもよく置かれているので、サイズ感や、背負、肩掛がどのようなものなのか気になる方は現物を確認してみてください。ノズルや工具も置いてあります。
初めての噴霧器選びの参考になれば幸いです。
またマキタやリョービ、ハイガー産業(hg)などの電動噴霧器や動噴については下記をご参考ください。
(補足)除草剤あれこれ
農耕地で使用できるものとできないものがあります
ラウンドアップやサンフーロン、バスタは、畑作や果樹園などの田畑、農耕地で使用することができますが、グリホエースなど、グリホサート系除草剤でも農耕地で使用できないものもあるので、使用の際は必ず確認するようにしましょう。
具体的には、農薬取締法に基づき国に農薬登録をされている除草剤(農薬として登録された除草剤のパッケージには[農林水産省登録第○○号]と表記されています)しか、畑や田んぼ、菜園、植物を植えた庭などの所謂「農耕地」に散布することはできません。
下記に詳しく書いているので、興味ある方は読んでみてください。
尿素を混ぜると(尿素混用)除草剤の効果が高まります
尿素は代表的なチッソ肥料ですが、農薬に少量を混ぜ込ませると、農薬の効果を高めると言われています。理由は、尿素が植物の葉の表面のワックス層やクチクラ層の細胞をゆるめ、農薬を浸達しやすくするためと言われています。混ぜ込ませる量は、希釈した除草剤20Lに一掴み程度の少量が目安です。
尿素を入れることで、除草剤に速効性が出て枯れ始めが迅速になり、また希釈濃度を薄くしてもしっかり効果が出るので、効果にムラが出にくくなります。結果、使用する除草剤の原液量が減るため減農薬となり、コストも少なくなります。大量の除草剤を撒く必要がある農家の方には、おすすめの方法と言えます。また、展着剤を使って効果を上げる方法もあります。
除草剤の希釈方法について
液体の原液の除草剤や液肥、薬剤は、水で希釈して薄めて使用する必要があります。下記では、展着剤、乳剤、水和剤などの希釈方法や、面倒な希釈倍率、水量、液量の計算を楽にする方法を説明しています。
除草剤の種類あれこれ
発芽抑制する「土壌処理剤」か、茎葉処理する「茎葉処理剤」か
除草剤の大きなタイプ分けとして、土表面に散布して雑草の発芽、生育を抑制したり、発芽直後に枯死させる「土壌処理剤」と、すでに伸びている雑草の葉や茎に直接かけて枯らしてしまう「茎葉処理剤」の2パターンがあります。
また、この両方の効果を持つタイプもあって、「茎葉兼土壌処理剤」と呼ばれるものもあります。
「土壌処理剤」は、土壌に成分が残り、雑草の発芽成長を妨げる発芽抑制効果があるなど、茎葉処理のものより多くの植物を除去することができます。
しかしながら、草丈20〜30cm以上草が生長している場合は、効き目が弱く、効果を出すためには、草刈りした後での散布が必要になってきます。「茎葉処理剤」は、散布された薬液に接触、吸着した部分の植物組織だけを枯らします。このタイプの薬剤は種類を限定して効果を発揮することができる選択的除草剤が多くあります。
非選択性か選択性か
次に、除草剤は接触した全ての植物を枯らす「非選択性除草剤」か、対象とする植物種を枯らす「選択性除草剤」かに分けられます。除草剤の研究により、枯らす対象となる植物を絞り込む「選択性除草剤」が多く開発されています。枯らす仕組みは主に、光合成を阻害して枯らすもの、植物ホルモンを撹乱させて生長を阻害するもの、植物固有のアミノ酸の生合成を阻害して枯らすものがあります。
また、除草のための農機具、農具、草刈機(刈払機)、資材については、こちらをご参考ください。
除草剤を使用するとき、草刈りするとき、どんな服装をする必要があるのか、まとめたのは下記になります。
雑草の様々な防除、駆除方法は下の記事がおすすめです。
また、特に防草シート(除草シート)での防除に興味ある方は下の記事をご参考ください。
除草剤の安全性について
除草剤については、様々なイメージ、情報が飛び交っています。下記では、そもそも除草剤は安全なのか、また除草剤を使用するときに気を付けたいポイント、また個別の除草剤の安全性について徹底解説しています。