自然災害にそなえるため農業共済に加入している場合、掛金は経費となり、共済金が支払われた時には収入として確定申告をしなければなりません。ここでは農業共済の支払いや入金時の確定申告の処理について説明します。
共済掛金を支払った時
掛金は全額経費として認められる?
農業共済は、国が掛金を補助している「農作物共済」、「家畜共済」、「果樹共済」、「畑作物共済」、「園芸施設共済」の他、建物、農機具、保管中農産物を対象とした「任意保険」があります。
共済掛金は任意保険の積立分以外はすべて必要経費として認められるため、確定申告では「農業共済掛金」の勘定科目(費目)を使って経費として申告します。
例)共済金の掛け金を35,000を支払った場合の仕訳
借 方 | 貸 方 |
---|---|
農業共済掛金 35,000 | 現預金 35,000 |
果樹共済の掛け金は支払った年の経費にできない?
収穫を補償する共済は、収穫する日の年の必要経費とされています。果樹共済の場合、花芽の形成期から果実の収穫をするに至るまでの期間が長いため、共済の掛け金を払った日の年と収穫の年が違うことがあります。
その場合は、収穫期の年の経費とするのが基本ですが、継続記録をしている者(継続して加入している者)には支払った年の経費としてよいとされています。
つまり毎年共済金を払っている場合には、支払った年の必要経費として認められます。
任意保険の積立金の処理
任意保険の建物更生共済・農機具更新共済等は全額掛け捨ての部分と、積立部分がある場合があります。将来満期になった場合に返金される保険にはこの積立部分があります。
毎年支払う共済掛金のうち、積立部分は何年後かに返ってくるお金なので、経費として認められないため、積立金部分を除いた部分を「農業共済掛金」として経費に計上します。
共済金の支払の明細には、必ず別で記載されているので明細書をよくみて間違えないようにしましょう(JAの建更の証明書には「必要経費・損金対象額」に記載されてる金額が経費として認められる金額です)
例)農業共済掛金50,000円(35,000円が必要経費分、15,000円が積立金の場合)を支払った場合
借 方 | 貸 方 | 概要 |
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農業共済掛金 35,000 | 現預金 35,000 | 共済金掛金 |
事業主貸 15,000 OR 保険積立金(投資その他の資産) | 現預金 15,000 | 共済金掛金積立分 |
共済金を受け取った時
損害が生じて共済金を受け取る場合には、共済金の種類によって処理が変わります。
農業所得になるもの
農業共済の中には、販売収入を補填する共済と、資産の損害を補填する共済があります。
農業所得(事業所得)になるのは、販売収入を補填するための共済金が支払われた場合です。例えば農作物共済や畑作共済、果樹共済は収穫共済の部分は農業所得になりますが、樹体共済の部分は資産の補てんとなるため農業所得にはなりません。
販売収入を補填するために支払われた共済金を受け取った時には、農業所得の「雑収入」に計上します。
借 方 | 貸 方 |
---|---|
現預金 200,000 | 雑収入 200,000 |
所得にならないもの
所得として申告する必要のない共済金もあります。それは資産を補填する共済金です。
たとえば樹体共済では、自然災害等で果樹が枯死したり、損傷した場合に支払われる保険なので、樹木という資産に対して支払われる共済金となります。
この場合に支払われる共済金は所得にはならないため、確定申告の処理は不要です。ただし、対象の減価償却資産を除却する場合にでる損金はその年の経費となりますが、共済金で補充した分に関しては経費とはならないので注意しましょう。
一時所得になるもの
一時所得とは、営利目的以外の一時的な所得のことで、農業の収入ではないので収支内訳書や決算書にはいれません。確定申告書の作成時に、事業所得(農業所得)とは別に記載が必要な所得です。
一時所得になるのは、任意保険の建物更生共済や農機具更新共済等の満期共済金を受け取った時です。受け取った全額が一時所得になるわけではありません。積立金として支払した部分を除いた金額が一時所得となります。
この金額は、満期共済金の内訳等に記載があるので明細書をよくみて入力しましょう。農業所得とは関係のない金額ですので、収支内訳書や決算書には影響がありません。(共済金の支払い時に、積立分を保険積立金等の科目で仕訳を計上している場合は、積立した金額は取り崩す必要があります)
入金と確定申告の時期は一緒?
共済金を雑収入に計上する時期は、対象の収穫時期を含む年に確定申告するのが原則ですが、農作物の被害を申告し、共済金を受け取るまでには時間がかかります。
確定申告までに概算金額が見積れない場合は、受け取った日が属する年に雑収入に計上しましょう。受け取る共済金によっても取り扱いが異なりますので、被害があった場合にはすぐに申告をし、年をまたがるようであれば、今年の確定申告で申告が必要か農業共済組合(NOSAI)等に確認するとよいでしょう。
入金額が確定するまえに、概算で確定申告をした場合、翌年に実際の入金額が多ければ雑収入に、少ない場合は雑費等で調整します。
消費税の取り扱いについて
消費税申告者は、消費税の取り扱いにも注意が必要です。
共済金は掛金を支払った場合も、共済金を受け取った場合もすべて消費税の対象外です。
農業用確定申告ソフトを活用しましょう
1年の収支を一度に入力するのは手間がかかります。できれば毎月、できれば3か月に一度は領収書などをまとめて売上や費用を計算しておくのが理想です。わかっているけど、それができないという人は農業用の確定申告アプリをつかってみませんか。
かんたん農業確定申告は、パソコンがなくともスマホやタブレットを使って家計簿感覚で売上や費用を入れていくだけで白色申告に必要な収支内訳書の作成ができるアプリ。
面倒な減価償却費の計算や、中古資産の耐用年数の計算、専従者給与の計算など手順にそって入力するだけで、すべてソフトが自動計算してくれます。ダウンロード不要でメールアドレスだけで誰でも無料で使えるアプリです。



本サイトの内容は、国税庁の決算のしかた(農業所得編)、令和6年分収支内訳書(農業所得用)の書き方、法令解釈等を参考に記載していますが、共済によって取り扱いが異なることもあり、税務アドバイスを目的としたものではありません。
共済金の受け取り時は特に、経費計上のタイミングや計上金額などが難しいため、実際の申告では、税務署や税理士、加入先に確認の上、ご自分の判断で申告を行ってください。